【感想】【汝、ふたつの故国に殉ず】を読んで

【感想】【汝、ふたつの故国に殉ず】を読んで

                  佐藤千枝

汝、ふたつの故国に殉ず】を読みました。
 
当時の台湾の状況が客観的に描かれています。
日本が台湾の近代化を進めたことが描かれていますが、
同時に日本人による差別や圧政の怒りや悲しみの台湾も描かれてます。

西来庵事件は866人に死刑判決が出て95名の死刑執行後、恩赦で無期刑に減刑されたとしか知りませんでしたが、
証拠も取り調べも無くまとめて捕まえて処刑したと、この本で知りました。
これでは228事件・白色恐怖と変わりません。私は228事件について国民党に怒ってましたが、日本人に怒る資格はありませんね。
国民党に怒っていいのは台湾人だけです。

日治時代の台湾が舞台の小説【茜雲の街】に事件の裁判で日本人被疑者より台湾人被疑者のほうが有罪になるし罪も重くなる
と読んで『小説に書かれてる位だから現実にもよくある事だったのだろうな』と思っていましたが、やはり日本人の犯罪には甘かったんですね。
後年、湯徳章が弁護士として台南に帰ってきたときに台南警察やひき逃げ医師に『ザマアミロ!』と喝采しましたが、当時の台湾人も喜んだでしょうし
誇らしく思ったと思います。

それゆえ、戦後に国民党が台湾に上陸した時から読むのが辛かったです。
拘束され取り調べ処刑されるときにも、毅然とした湯徳章の態度は誰もが尊敬します。でも実行するのはとても難しい事です。誰もができる事ではありません。
また残された遺族に対して支援することは白色テロの時代は、日本人の想像以上に勇気が必要だった思います。地位や力がある人でも勇気のいる状況だったのでしょう。
遺児である湯總模が父親の死に心を閉ざさなければ生きていけないくらい厳しい人生だったのだと思います。

昔、台南に行ったときに湯徳章記念公園に気づき中に入って説明書きを読んだのですが、その時は228事件の犠牲者としか思いませんでしたが
今度行ったときには もっと感慨深く公園の中にいると思います。


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