【宮崎正弘】孟宏偉(インターポール総裁)の拘束は「第二の王立軍」を想起

【宮崎正弘】孟宏偉(インターポール総裁)の拘束は「第二の王立軍」を想起

宮崎正弘の国際ニュース・早読みより転載

孟宏偉(インターポール総裁)の拘束は「第二の王立軍」を想起
中国公安部の高層部、すべて入れ換えていた事態が意味するもの
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「孟宏偉の収賄嫌疑は疑わしく、本質は周永康派残党の一掃にある」と香港筋が分析している。
「これは第二の王立軍ではないか」とする観測家によれば、すでに、かつての周永康時代の副部長だった李東生、楊換寧と政治部主任だった夏崇源らが「周永康の余毒だ」として失職している。

とくに李東生の場合は早くも2013年に拘束されている。
汚職の罪状が理由だったが、江沢民派の大幹部だった事由によるとされ、周永康失脚の序曲となった。楊換寧の拘束は2017年5月、また夏崇源は同年10月に「重大な規律違反」として職を解かれた。つまり孟は周りを囲まれていたのだ。

「王立軍事件」とは2012年2月、成都のアメリカ領事館に政治的保護を求めて王立軍が重慶から車を飛ばして駆け込んだことにより露呈した薄煕来夫人の英国人殺人事件の暴露だった。
これによって習近平最大のライバルだった薄護来の失脚に繋がった。王立軍は薄の右腕として、重慶の公安局長に招かれ、マフィア退治で辣腕を振るったが、薄の機密を握ったことで逆恨みされ、身の危険を察知、アメリカへの亡命を希求した。
ところが、オバマ政権は決断が出来ず、中国の反発を怖れて王立軍の身柄を中国当局に引き渡す。

孟宏偉(インターポール総裁)の事件はいくつかの重要な意味を持つ。インターボールは世界的な捜査協力、とくにテロリスト、資金洗浄、國際犯罪組織、麻薬武器密輸の取り締まりが目的であり、中国は海外へ逃亡したおよそ百名の逮捕を目的としていた。

第一にかりにもインターポールは百年の歴史(1923年設立)を持ち、190の国が参加する国際機構である。その長として、中国の名声を確保した「国際的権威」というイメージが中国共産党自らが國際スキャンダルを引き起こし、損傷した。

だが中国側の反論たるや、詭弁に満ちている。
「西側メディアは行方不明とか、連絡が取れないとか、おかしな語彙で騒いでいるが、中国は厳正に法律に基づいた措置をとっているのであって、とやかく言われる筋合いはない。嘗てIMFのストラス・カーン専務理事がホテルのメイドへの性的暴行で逮捕されたとき、いかなる高位の人物であれ、法を犯したので逮捕したように、孟宏偉も、法を犯したから拘束したまでのことだ」(環球時報、10月8日)。

第二に国家の公安部副部長(日本で言えば副大臣。ただし中国の副部長格は五、六人いる)という高位にある人間を拘束するからには、共産党最高幹部の承認があったことを意味する。

つまり孟が周永康派の生き残りであり、周永康はかつて公安系を牛耳り、薄煕来と組んで、クーデターを試みたと噂されたため習近平がもっとも怖れてきた存在だった。
したがって、機密を持ち、党に爆弾となるような行動を取るか、或いはフランスへ亡命するなどとなれば、中国共産党にとって不名誉この上なく、巧妙に北京におびき寄せて拘束師、口を封じたことになる。それが孟が夫人宛の最後のメッセージで身の危険を十分に認識してナイフの写真を送信していたことが歴然と証明している。


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