【國民新聞】台湾民政府の実態【林志昇集団】

「台湾の声」【國民新聞】台湾民政府の実態【林志昇集団】

台湾民政府の実態      在日台湾同郷会理事 多田恵

〔平成26年7月25日づけ國民新聞7、8月夏季合併号より転載〕

 昨年12月、都内で「台湾民政府」主催の講演会があった。告知には、櫻井よしこ、中條高徳、堀江正夫、小名木善行、門脇朝秀各氏の名が並び、主催者に在日台湾人・河村常夫「代表」の名が見える。実際は、櫻井氏は欠席した。台南在住の傳田晴久氏によれば、台湾独立派が歯牙にもかけない団体だ。それでも2万人の規模を称している。実質的な代表は幹事長・林志昇。もう一人の駐日代表で在米台湾人の黄恵瑛曰く「林氏は台湾の有識者からペテン師扱いされ」ている。

 彼らの本質は、彼らから離れた人々が指摘している。昨年4月、総理・蔡吉源、副主席・蔡明法、顧問・ハーゼル、日本語が堪能な陳辰光を含む幹部らが離脱して「米国台湾政府」を設立、日本領土論と一線を画した。「幹事長が権力独占、不明朗な会計、ルール皆無の人事、民政府の目標・主張を絶えず変更し混乱を齎〔もたら〕した」という。また、林が昨年再婚した若い中国人妻・林梓安らのスパイ活動も指摘した。

 09年、陳水扁元総統は一時協力した林志昇に対し、二度と会わないこと、米政府への訴訟資金という名目で(林が)陳氏の名を挙げて募金活動を行うことに同意しないと声明を出している。22万の信徒を擁する台湾基督長老教会も声明を発表して一線を画した。林がかつて台湾独立建国聯盟だと誤解させて募金活動を行ったことも知られる。5年前「法廷弁論で支持者が増え、林志昇を詐欺師と呼んだ人々の方が不利になった」としていた著述家アンディ・チャン氏は今年6月「林志昇の嘘を検証する」という記事を発表した。

 日本人台湾民政府協力会会長だった石戸谷慎吉氏は昨年「さよなら台湾民政府」という声明で、民政府が米国に認められたと称しているが米国務省にその痕跡が無いこと、前年2月に民政府を訪問した日本人から「宣伝に使われた」と苦情があったことを明かした。民政府のウェブサイト担当だった台湾人・桜川武蔵氏は一昨年の初め、林の「台湾民政府は台湾独立建国聯盟と台湾人公共事務会とも闘争しなければならない」との指示に疑問を感じ、疑惑告発の急先鋒に転じた。現在桜川氏の記事は大量に削除された。ネットで批判記事を掲載した「皇民日報」に対し3億台湾ドル(10億円)の名誉毀損訴訟を行うと林が1月に発表したことと関連があるのか。

 昨年2月、台湾各地の警察が「米政府が発行する台湾政府の身分証などが得られると詐欺を行っている集団がある」との注意喚起を行っている。同4月には米国の在台窓口機関が同身分証の有効性を否定したことが報道された。身分証の発行費用は1000元。現地大卒初任給の約20分の1だ。今年5月には各地に郡守を任命し事務所を増やしたが、費用6000〜10000台湾ドルの研修や6000台湾ドルの車両ナンバー交付などを行っており、捜査機関が調査を始めたと報じられた。

 友人の熱意に押されて入会したとの体験談もある。資金源は、米政府への訴訟や台湾、日米での新聞全面広告名目の募金、物品販売、研修費用、そして集団内部で昇進するための寄付などであろう。05年のワシントンポストへの広告費用約1000万円を募金でまかない、主席・曽根憲昭はこれまで4000万円注ぎ込んだとされる。

 林は1950年台湾出身。予備校経営で成功し不動産業に転じたが訴訟リスクに嫌気がさし廃業。91年に上海で学校経営を始め3年後に廃校。その後、成都で学校施設を買収して運営するなどした。02年にトラブルがあり、裁判所命令で一時拘束。台湾に戻りケーブルテレビ局に投資し社長になったが翌年給与未払いが問題となり辞職。05年、国民大会議員に当選も約1ヶ月で辞任。翌年、高雄市長に出馬。1746票の最低得票で落選するが「米国台湾平民政府」名義で当選宣言する。台湾人へのパスポート発行を求めて米国を提訴。07年、台湾平民行動党の建党党首となるも半年もたず財務問題で辞職した。

 翌年「台湾平民政府準備会」を組織し台湾民政府と改名。顧問とされる城仲模氏が08年に台湾李登輝友の会総会長を黄崑虎氏から引き継ぐと幹事長に指名される。翌年2人は訪米。李登輝氏の承諾なく同会の肩書きで「台湾は米国の未編入の領土」という運動を推進。すでに日本李登輝友の会があるのに日本に直轄支部をという動きを見せ、会を追われ、「フォルモサ法理建国会」を組織し政党を届出た。台湾李友会は蔡焜燦氏のもと李登輝民主協会として再出発を強いられた。

 秋に米政府への訴訟が棄却される。今後は台湾は日本の領土だと主張し、日本の保守派と協力するだろうという見方が報じられた。10年に民政府第1回大会で城氏が主席に就任。翌年在日台湾人の曽根憲昭氏が主席に。年末には靖国神社を訪れ「39100柱」の台湾英霊慰霊祭を挙行。石戸谷氏が離れた原因の一つは27864柱であるところを林が「38000柱」と流布したことだ。以来、毎年、皇居一般参賀に自分たちの旗を持って参加し、天皇陛下に認められたと宣伝。永山英樹氏も「保守派は注意を」と呼びかけた。

 日本の保守派のなかには疑惑よりも台湾地位未定論を評価して、台独派に林らと協力せよと求める声もあるが、未定論は早くから日米政府や台独派の見解であり、林の発見ではない。林の目的は金銭のみかもしれないが、棄却された訴訟を勝利と宣伝し、曲解した法律論で人をたぶらかす彼らに振り回され、自決権や獲得した民主制度を否定するのは先人の努力と文明への冒涜ではないか。

転載にあたって:

 門脇朝秀氏主宰の「あけぼの会」会報では、6月号および7月号で「台湾民政府」一行が終戦の日にあわせ日本へ来ること、8月14日には仙台で慰霊のために植樹することを伝え、会員に対して、空港への送迎・行事への参加を呼びかけた。門脇氏が「林志昇劇場」を盛り上げるのに利用されてしまうのは残念なことである。なお夏場は植樹には適さないが、無理やり植樹するというのだろうか。

 一方、黄恵瑛は8月2日に「黄恵瑛的声明(黄恵瑛の声明)」と題するメールを送りつけてきた。「TCG〔台湾民政府〕が勝手に本人〔黄恵瑛〕の文章を盗み取ってTCGの所有とするのは、犯罪行為である。 依って、黄恵瑛は茲にTCGの悪劣な盗取に対し、強烈抗議を声明する。」という。あたかも自分がメンバーではないかのような言いぶりである。これに対し、本誌編集部は3日、「駐日代表」に任命されたあと、いつメンバーをやめたのか、問い合わせのメールを送ったが回答は得られていない。黄恵瑛が「台湾民政府」の別働隊であるという疑いは晴れないままだ。

転載者:『台湾の声』http://www.emaga.com/info/3407.html

2014.8.11 09:00