【台湾有情】独立派の再結集
2010.7.9産経新聞
中台自由貿易協定に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)の先月末調印を機に、台湾は秋の5大首長選から2012年の総統選に向けて大型選挙が相次ぐ政治の季節を迎える。
注目されるのは最近の李登輝元総統と蔡英文主席率いる野党・民主進歩党(民進党)の急接近ぶりだ。再結集する独立派陣営とECFAで経済浮揚をめざす馬英九・中国国民党政権の勢力は伯仲し、明日の台湾を左右する一連の選挙戦は目が離せなくなってきた。
「ECFAは台湾の利益に背く馬英九政権の間違った政策だ。断固反対しよう!」。先月26日、民進党主催のECFA反対デモに参加した李元総統は、こう演説して大喝采(かっさい)を浴びた。「棄馬保台(馬総統を棄(す)て台湾を守ろう)」とも呼びかけた。30度を超える炎天下、87歳の老元総統の奮闘ぶりは台湾の本土・独立派陣営を大いに鼓舞した。
李氏は04年の総統選で陳水扁総統(当時)再選に尽力したが、その後の両者の関係悪化で民進党とも疎遠になっていた。ところが李氏が総統時代に抜擢(ばってき)、育成した蔡英文氏が党主席として力をつけるにつれ、様相は一変した。
台北市北部の李氏私邸にはこのところ民進党有力者の訪問がひっきりなしだ。蔡主席をはじめ蘇貞昌・元行政院長や陳菊・高雄市長ら、11月の5大都市首長選候補者の訪問が相次いでいる。李登輝・蔡英文の師弟関係は馬英九政権の大きな脅威となりつつある。(山本勲)