【台湾有情】距離近づける一里ヅカ
2013.4.26産経新聞
台湾北東部・宜蘭県蘇澳の漁港で18日、今年初のクロマグロが水揚げされた。同港沖では、毎年4月に漁期が開幕する。
このため、中国同様に台湾も主権を主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域の扱いが焦点だった日台漁業協議への双方の調整は、「タカラヅカまでに」が“合言葉”だった。
文化交流事業の一つ、宝塚歌劇団初の台湾公演が4月6〜14日に台北で予定されていたためだ。
事実、台湾側に大きく漁場が開かれた「日台民間漁業取り決め」は、同公演に合わせるかのように急進展。10日の調印は台湾メディアも「談判17年 重大突破」と大きく報じた。
もちろん課題は残る。日本側は譲歩の波をかぶった沖縄漁民の不満、馬英九政権は日台連携に「重大な懸念」を示す中国の不満と向き合わねばならない。
それでも、火種が消えた安心感は広がっており、歌劇公演の千秋楽でも、舞台上からは東日本大震災時の台湾の支援に対する感謝表明が、客席からはカーテンコールが繰り返され、日台の距離を一層近づけた。
隣席の、日本人の母を持つ台湾の対日窓口機関、亜東関係協会の廖了以会長からは涙まじりで抱擁を求められ、満座の中で応じたが、のどに刺さった魚の小骨が除かれた思いだった。(吉村剛史)