【レポート】天目石要一郎「ウイグル・チベット体験記」─ 東京多摩支部第1回例会

【レポート】天目石要一郎「ウイグル・チベット体験記」─
東京多摩支部第1回例会

                 多田 恵
日本李登輝友の会東京多摩支部事務局

 2月20日、日本李登輝東京多摩支部(支部長:坂口隆裕)は国分寺市内で例会を行い、関東一円から約20人が参加した(スタッフを含む)。天目石要一郎副支部長による講演「ウイグル・チベット体験記」は、平成28年末から令和元年末の期間に数回に分けて訪れたウイグル・チベット地域の状況を伝えるものだった。

 李登輝総統のもとで大きく民主化に転換した台湾は中国の軍事的威嚇やメディア工作の脅威を日々受けているが、中国による虐殺・文化抹殺に苦しんでいる地域の実情を旅行者の視点から紹介していただいた。

 現地を旅行する際の注意事項、移動、食事、トイレ事情、景観など一般的な旅行案内としても十分楽しめる内容であった。とくに新型コロナ蔓延で悶々とする中、プロジェクターでとはいえ広大な景色を目にすることは、顔を上げて視野を広く持とうと思わせるものだ。

 講師の天目石要一郎先生は、武蔵村山市議会議員であり、政治的圧力に屈せず、談合疑惑をはじめとする不正を追及している。海外だけでなく日本各地も旅し、さまざまな宗教についても当事者の話を聞き、書物にもあたっている。たとえば、大谷翔平選手のマンダラチャートは、チベットで修業した多田等観がもちかえったといった解説が入る。問題意識と幅広い知識を持ちながら、直接現地に飛んで対話を重ねてきた講師の洞察力を通じて切り取られたウイグル・チベットの状況が伝わってくる。

 ウイグル地域の鉄道の駅は、利用者が少ないのに、駅前には大きな広場があり、ホームの幅も広く、軍事的展開に備えているかのようだ。警官に脅されるたびに一部写真を削除するなどしたにもかかわらず、現地にいかに多くの監視カメラが設置され、警官が動員されているか、また装甲車列や現地の感覚を写真を通じて示された。また移動には無数の検問所を通過しなければならない。町中に習近平および共産党礼賛の看板ばかり設置されている。資源回収ポストと共に、爆発物を処理するための防爆缶が設置されている。ウルムチ博物館の世界地図には日本が消し去られている(館内撮影禁止のため写真なし)。他方、風力発電や太陽光発電、スクーターの電動化など環境対策が進んでいるようだ。

 チベットは、入境許可が必要でガイド付きのツアーに参加するしかないが、ガイドがついていない時間を利用して移動できる範囲を見て回ることができた。駅で列車に乗るにも、まるで飛行機に搭乗するかのように管理される。

 高地なので酸素が供給されると報道されていた列車を利用したが実際にはその装置は使われておらず、標高5000mを通過する車内は辛かったという。車窓からのうっすら雪化粧を纏った山肌が美しい。ラサ空港は監視カメラがたくさんあり、軍用機も着陸している。中国併合への抵抗が激しく、現在も僧侶の焼身自殺が起きている東チベットは、シャングリラの先は外国人が立ち入りできない。映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』では、すんなり併合されたかのように描かれているが、実は東チベットでは激しい抵抗があったのだ。僧侶の焼身自殺があると停電するのでわかるという。亡命チベット人が中国に帰国するとパスポートの発給がされず、二度と出国できなくなる。チベットへは中国人観光客も多いが、高速道路の大渋滞に中国人は慣れているようで、すぐにバスの外に出て、将棋などをしていて、車が動き出す頃に車に戻っていく。

 質疑応答の時間には、チベットの話から参加した参加者から、中国人の友人から「日本のマスコミはウイグル人虐殺を問題にしているが、そんなことはない」と聞いているという問題提起があった。講師は、学校が要塞のようになっていること、世界のどこでも井戸端会議をしているおばちゃんが見られるが、ここだけはそれを見かけなかったこと、戦闘機の飛行などを指摘した。

 また後日、「講演がおもしろく、ラサに行きたくなった」が、「日本李登輝友の会」(東京多摩支部)がウイグルやチベットをテーマとして扱うことに違和感があるという声が寄せられた。司会を担当していた筆者の説明不足である。

 奇しくも2月22日、産経新聞「一筆多論」に河崎真澄氏の「共産党と国民党は瓜二つ」が掲載された。これは台湾の2・28事件の記念日を前に掲載されたものである。この論説も「ウイグルに限らず、チベットや内モンゴル、香港など共産党政権が繰り広げた弾圧には、既視感もある」として、2・28事件に話を移している。

 中国国民党は自らが自由中国であると宣伝しながら台湾人に対しては虐殺を含む弾圧を行い、それをずっと隠していた。台湾人で自らの保身や利権獲得のために国民党に加入したものも少なくない。中国共産党も虐殺を行いながら、大量のウイグル人を警官に採用し、ウイグル人内部を分裂させ、恐怖によって沈黙を強いている。

 自らのアイデンティティーや思いを否定されたくないのは、普遍的な思いであろう。しかし、それほど多くの警官、それほど多くの監視カメラ、それほど多くの検問所、日常の一部となった防爆缶を設けなければならないのはなぜか、どうして、自由に旅行ができないのか、それらを不問にしてはじめて、中国による東トルキスタン統治、チベット統治、香港支配を肯定することができるのである。ましてや、中国に台湾を統治する正統性などありえない。

 中国において、言論・思想、そして、インターネットを閲覧する自由が保障されているのであれば、中国共産党は自らの統治が信任されているのかどうか、自由な選挙をやっていただきたい。

 なお参加者の一人からは、フェースブックで自分が管理しているグループに今回の講演の案内を転載したところ、自分が管理人であるにもかかわらず「管理人によって削除された」との通知が出たとの報告があった。中国に都合が悪い言論をフェースブックが削除するケースは今に始まったことではないが、我々は何が事実で何が虚偽の宣伝なのか日々判断していきたい。


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