「台湾の声」
馬英九政権が今年6月の調印を目指してる台湾と中国の自由貿易を推進する「
両岸経済協力枠組協定」(ECFA)締結の是非について、馬英九総統(兼中国国民
党主席)と最大野党の蔡英文・民主進歩党(民進党)主席が4月25日、台湾のテ
レビ討論で直接対決した。
ECFAについて馬総統は賛成側、蔡主席は反対側として2時間半にわたって激し
く討論した。馬総統は、アジアの自由貿易協定から取り残されているのは台湾と
北朝鮮だけだとして台湾が中国とECFAを結ぶことが国際化につながるとして、中
国との関係強化を拒む民進党は「鎖国」だと批判。
これに対し、蔡主席は、民進党と国民党の違うところは、民進党は先に世界に
向かってから中国と向き合うのに対し、国民党は中国を通して世界へ向かうとこ
ろであると指摘。中国とECFAを結ばないと世界に向かえないのか、台湾人にはほ
かに選択肢はないのかと批判し、6月の調印を焦って強引に推し進める馬総統に
、中国との交渉が破局したときに代案はあるのかと迫った。
馬総統が急いで中国とECFAの締結を進める背景には、中国とASEAN(東南アジア
諸国連合)の自由貿易協定が今年1月から発効し、今後は韓国や日本が中国やASEAN
と自由貿易協定を結ぶことが予想され、そうなった場合に台湾の輸出が高い関税
のまま取り残されるという焦りがある。
馬総統は、もたもたしていると対中ビジネスのシェアを逃すと強調したのに対
し、蔡主席はECFAで馬総統が保障する農産物の輸入項目を増加しないなどの口約
束は、10年以内に段階的に開放しなければならない自由貿易協定のルールでの中
で守られる保障がないなど、長期的視点の疑念を呈した。
蔡主席は中国との交渉に関して、台湾が交渉の主導権を手放さない、世界貿易
機関(WTO)の多国的枠組みを活用する、影響を受ける伝統産業を調整するために
じっくり時間をかける、過度に中国傾斜しないよう諸外国とのバランスをとるな
どの守るべき原則を提示し、「ECFAで先にみずから中国に縛られるのは賢明では
ない」と批判し、ECFA締結を盲目的に急ぐことのないよう馬総統に求めた。