防衛省が台湾に今春から現役職員を常駐

 昨年6月4日付の産経新聞は「台湾に現役防衛省職員派遣へ 今夏にも常駐」との見出しの下、「政府が対台湾窓口機関の台北事務所に防衛省の『現役』職員を派遣する方針を固めたことが3日、分かった。中国が台湾周辺での軍事行動を活発化させ、台湾海峡情勢の緊迫度が増していることを受けた措置で、今夏にも派遣する」と報じた。

 ところが、このスクープで政府は派遣を延期したという。なぜ延期なのか、理由は不明だが、どうも防衛省の現役職員の派遣は中国を刺激するからということだったようだ。

 しかし、台湾と国交がなく、日本と同じような立場にある米国は、米国在台湾協会台北事務所に2005年8月から現役の陸軍大佐が派遣されていることが明らかになっているし、米国在台湾協会が2019年4月に「事務所には陸・海・空の軍人が2005年から駐在している」と表明もしている。2008年からは海兵隊員が駐在していることも判明していた。

 日本は何を恐れているのか、米国を見習えと言いたかった。機微に触れる事柄とは言え、「重要なパートナーであり、大切な友人」と位置付ける台湾に、なぜ防衛担当者を派遣できないのか、新聞記事を理由に延期したのは理解に苦しむ措置だった。

 本会はすでに2017年3月に発表した政策提言「台湾駐在の防衛担当主任を増員せよ」で、初めて「日本台湾交流協会に勤務する防衛担当の主任を、現在の1名から陸・海・空退職自衛官による3名に増員することを提案」していた。

 2021年の政策提言ではさらに一歩踏み込み、退職自衛官ではなく現役自衛官を派遣せよとし「日本台湾交流協会に勤務する防衛担当の主任を現在の1名から、陸・海・空の現役自衛官による防衛調整担当主任3名に増員することを提案」している。

 防衛大臣に就く前の岸信夫・衆議院議員はじめ、防衛や日台関係に関心の深い国会議員にも好評だった。

 本会の提言にはほど遠いが、日本台湾交流協会台北事務所に文官の「背広組」とは言え、現役職員を常駐させ、2人体制とした労と勇を多としたい。

 防衛駐在官の主要な任務は、情報収集、連絡・調整、自衛隊を代表する業務等で、業務の遂行に当たっては各自衛隊の戦略・戦術、部隊運用、装備品等に関する幅広い識見と豊かな経験が求められる。

 本会の今年の政策提言では、改めて「防衛省の『背広組』と呼ばれる文官職員ではなく、現職自衛官の出向に改め、陸海空の佐官クラスの自衛官各1名、即ち防衛担当主任3名体制として、その強化を図るべきである」と提案している。

 その早期実現を図るべく、本会は関係する国会議員などに働きかけてゆく所存だ。

—————————————————————————————–防衛省、台湾に現役職員を常駐 意思疎通や情報収集強化=関係者【ロイター:2023年9月12日】

[東京 12日 ロイター] 日本の防衛省が、台湾との窓口機関「日本台湾交流協会」の台北事務所に「背広組」の現役職員を常駐させたことが分かった。中台の緊張が高まる中、日本は台湾との距離を徐々に縮めており、軍事を含めた情報収集や当局との意思疎通を強化する。事情を知る関係者4人が明らかにした。

 日台間には国交がなく、台北事務所が査証発給など実務業務を担う日本の在外公館として事実上機能している。同関係者らによると、防衛省はこの職員を出向の形で派遣。以前から駐在する退役自衛官と2人体制にした。

 「台湾当局とのコミュニケーションが良くなった」と、関係者の1人は説明する。

 経済産業省や外務省など他の政府機関が台北事務所に現役職員を出向させる一方で、防衛省は中国が反発することを考慮し退役自衛官を常駐させるにとどめてきた。関係者らによると、現役の自衛官を派遣すべきとの声も今回あったが、背広組の防衛官僚を送ることにした。

 現役の防衛省職員を台北事務所に派遣する計画は、日本の一部メディアが昨年報じていた。関係者らによると、報道を受けて派遣は延期された。

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