日本人でさえ、ずいぶん身勝手な言い分だと不快に思っていた人が多いのではないだろうか。
TikTok(ティックトック)やYouTube(ユーチューブ)などの動画で「祖国の完全な統一は、台湾の人々が何を望もうとも必要不可欠だ」など、中国による台湾の武力統一を吹聴していた、台湾人と結婚して台湾で暮らす中国人配偶者のインフルエンサーの発言のことだ。
台湾で保障されている言論の自由を最大限に利用し、中国政府の主張を拡散するのは「中国の認知戦」に加担した行為だ。
一般人を装い、インターネット上のコメント欄や電子掲示板などに中国に有利な書き込みをして金銭を得る、中国人のいわゆる「五毛」の類だろうとも思っていた。
案の定、この中国人インフルエンサーは両岸人民関係条例などに違反しているとして居留許可を取り消され、退去期限の3月25日に台湾から中国へ帰っていった。
この中国人インフルエンサーが中国へ退去させられた翌26日には、内政部移民署が「インターネット上で台湾への武力侵攻を鼓吹する発言をしたとして21日に居留許可を廃止した台湾在住の中国人配偶者の女性2人について、31日までの退去を命じた」(中央通信社)ことが明らかになっている。
またしても中国人配偶者のインフルエンサー、それも2人だ。
台湾の民主主義が保証する言論の自由はどのようにもたらされたのか。
その苦難の道程は、鄭南榕の事績を知るだけですぐわかる。
当時、41歳だった鄭南榕は、主宰しつつ自ら編集長をつとめていた週刊誌「自由時代」に台湾共和国憲法草案を掲載。
高等検察庁は叛乱罪容疑で逮捕しようとしたものの、鄭は自由時代社に籠城し、警官隊が包囲する中の1989年4月7日、「中国国民党の圧制に抗議し、完全な言論の自由を求め『国民党が私を逮捕できるとすれば、私の屍だけだ』と宣言し、自らガソリンをかぶって自決したのだった。
台湾では鄭が焼身自決した4月7日を「言論の自由の日」に定めている。
自由時代社の編集室は自決したままの黒焦げに焼けた状態で残され、1999年に鄭南榕記念館となっている。
中国人配偶者のインフルエンサーたちは、台湾で言論の自由を謳歌しながら中国による台湾の武力統一を吹聴する前に、「自由巷」と名付けられ記念館の前の通りに足を運び、鄭南榕記念館を訪れるべきだった。
中国に「言論の自由」はない。
しかし、台湾にはある。
なぜ中国になく台湾にあるのか、鄭南榕記念館を訪れていればわかったはずだ。
台湾・台中市に住む日台交流コーディネーターの藤見尚子さんも、中国人配偶者のインフルエンサーについて「台湾の言論の自由を利用して、言論の自由が存在しない中国による支配を支持するという態度への違和感」を覚え、「自由と民主主義の国で暮らせていることのありがたさを思えば、その発言がいかに愚かであることか」と嘆いています。
同感です。
藤見さんが「note」につづった「台湾の自由と民主主義を守るために」を下記に紹介し、併せて鄭南榕記念館も紹介します。
◆鄭南榕記念館 台北市松山區民権東路三段106巷3弄11号3階 https://taiwan-shugakuryoko.jp/spot_north/212/
台湾の自由と民主主義を守るために─「言論の自由」の限界をどう考えるか【note:2025年3月31日】https://note.com/naokotaiwan/n/n2f8585dd9ac4?rt=email&sub_rt=daily_report_followee_notes
前回の投稿から時間が空いてしまいましたが、また投稿していきます。
今日は最近の台湾のニュースについて。
少し前、台湾在住の中国人配偶者であるSNSインフルエンサーが、中国による台湾の武力統一を支持する発言を行ったことを受け、居留許可が取り消され、政府から退去を命じられる事態が発生しました。
この件については、台湾の言論の自由が脅かされているという人たちがいて、メディアでも大きな話題となっています。
最初にニュースを目にした際に感じたのは、台湾の言論の自由を利用して、言論の自由が存在しない中国による支配を支持するという態度への違和感です。
また、中国で台湾人が「台湾独立」を公然と支持した場合、退去要請では済まず、強制収容され、帰国を許されず収監されることは避けられないでしょう。
台湾は言論の自由を保障する国ですが、「言論の自由には限界があり、その境界線は国家の存続にある」という台湾政府の決断には、外国人である私にも理解できる現実的な危機感が含まれています。
何よりも、同じ台湾人の配偶者として、この美しい国に住まわせてもらいながら、「武力侵攻」や「武力統一」といった言葉を使うこと自体が忌まわしく感じられます。
この平和な日々、自由と民主主義の国で暮らせていることのありがたさを思えば、その発言がいかに愚かであることか。
武力統一も辞さない中国政府は、あらゆる手段を使って台湾を自分のものにしようとしています。
普段の台湾の平和な生活は、そうした現実を意識せずに過ごせるほど穏やかですが、それは国家を守るために現実的な危機感を持って対応する政府と、それを支持する国民がいるからこそ成り立っています。
台湾が自由と民主主義を維持することは決して容易ではありません。
台湾は、このホットケーキのかけらのように、気を緩めれば隣国に飲み込まれてしまいかねないのです。
(このニュースはまだ続きそうですので、台湾の世論や政府の行動を引き続き見守っていきたいと思います)。
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Naoko/日台交流コーディネーター藤見尚子/在台17年目。
北海道出身。
1997年から仕事で台湾と関わり、これまで東京、台北、台中、札幌で日台交流の仕事に従事。
日台の絆、北海道と台湾の交流、台湾の日常風景や暮らしの気付きなどを綴ります/北海道観光マスター、北海道フードマイスター、旭川観光大使
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※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。