郭台銘氏が総統選に出馬強行で票の分散は確実 民進党が有利に

 8月28日、台湾の総統選挙候補者に鴻海精密工業創業者の郭台銘氏が名乗りを上げた。大方の感想は「やはり」というところではないだろうか。これまで選挙活動を止めなかったのだから、国民党の侯友宜候補の支持率が上がらないのを見て出馬表明をしたのだろう。

 台湾民意基金会が8月21日に発表した世論調査では、民進党の頼清徳副総統の支持率が43.4%で初めて40%を越し、台湾民衆党・党主席の柯文哲氏は26.6%、国民党の侯友宜氏は7月の17.3%からさらに下がり13.6%だった。

 メディアの見方もおおよそ似たり寄ったりで、下記の読売新聞は「野党候補3人がこのまま立候補すれば、票が分散するのは確実で、与党・民進党が優位に選挙戦を進めることになる」と報じている。

 郭台銘氏は出馬表明で「野党を統合するために出馬する」と述べているが、「自分が一致団結する際の最大公約数になることを期待している」とも述べ、他の2人の候補者に野党統一候補の座を譲れと公言した。

 一本化に向けた調整は困難を極め、民進党の頼清徳候補はさらに有利に選挙戦を運ぶのではないかと見られる。

 ただし、総統選と同時に行われる立法委員選挙では台湾民衆党が現在の5議席からかなり議席を増やし、現在61議席の民進党は過半数の57議席を維持できないかもしれないと言われている。頼清徳候補が総統選に勝ったとしても、少数与党となると政権運営はかなり厳しくなるだろう。

—————————————————————————————–台湾総統選、野党一本化困難か…郭台銘氏が出馬強行で票の分散は確実【読売新聞:2023年8月29日】https://www.yomiuri.co.jp/world/20230829-OYT1T50041/

【台北=園田将嗣】来年1月の台湾総統選に 鴻海精密工業前会長の郭台銘氏が立候補を表明した。野党候補3人がこのまま立候補すれば、票が分散するのは確実で、与党・民進党が優位に選挙戦を進めることになる。野党候補一本化が政権交代に近づく方策となるが、調整は難航必至だ。

◆「50年間平和に」

 郭氏は28日、台北市中心部のビルに詰めかけた報道陣と支援者を前に、「今後50年間、台湾海峡に平和をもたらし、両岸(中台)に最も深い信頼の基礎を築くことを約束する」と述べた。軍事的な緊張が続く中台関係の改善を訴えた。

 郭氏は前回の総統選に続き今回も国民党候補争いに敗れた。党の選任プロセスに不満を抱き、事実上の分裂選挙を覚悟の上で無所属での出馬表明に踏み切ったとみられる。

◆支持分散

 野党候補への支持は分散している。「美麗島電子報」が25日に発表した世論調査では、首位を走る与党・民進党の 頼清徳・副総統の支持率は37.5%で、台湾民衆党の 柯文哲・前台北市長(18.9%)を引き離す。次いで最大野党・国民党の 侯友宜・新北市長が17.9%、郭氏が12.0%と続く。

 郭氏が無所属で正式に立候補するには、11月2日までに有権者の1.5%にあたる約29万人分の署名を集める必要がある。郭氏の支持率なら十分クリアできる水準だ。

 一方、郭氏は「私の立候補は野党統合のためだ。統合こそ勝利への唯一の道だ」とも述べ、侯、柯の両氏に野党候補一本化を呼びかけた。

 政権交代には一本化が欠かせないとの認識から、一定の支持率を得ている郭氏が野党統一候補になる意欲を示唆したものとみられる。対中ビジネスを手がけてきた郭氏は、対中関係の強化を望む親中派有権者から人気がある。台湾師範大学政治学研究所の范世平教授は「自分への支持が上がると自信を持っている」と指摘する。

◆国民党「遺憾」

 郭氏の出馬表明で最も打撃を受ける国民党は強く反発する。

 国民党は郭氏に対し、「遺憾の意を表明する。最終的には国民党と侯氏を支援し、一緒に民進党を下野させると信じている」とコメントし、翻意を促した。親中派有権者の支持を集めきれず、世論調査で第3党の柯氏にも競り負けていたが、野党統一候補の座を郭氏に譲る考えは否定している。

 民衆党も28日、「柯文哲氏は野党の候補者の中では支持率が1位だ。実力がある候補者で、民衆の支持も安定している」とコメントした。

 このままでは「民進党を利するだけ」(台湾メディア関係者)と指摘されるが、一本化に向けた調整は困難が予想される。

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