[読者投稿] 「抗日記念日」制定検討は親日台湾の反日への変身宣言 【鈴木方人】

台湾無視の姿勢をとり続けた日本にも非はある

 本誌前号で、台湾の陳水扁総統の与党・民進党が「台湾人民抗日記念日」制定を検討し
はじめたことを伝える読売新聞を紹介し、「民進党が政党としての生き残り策として掲げ
た『抗日記念日』が吉と出るか凶と出るか、その行く末を見守りたい」と柚原編集長がコ
メントしたところ、愛知県にお住まいの本会会員で台湾李登輝学校研修団二期生の鈴木方
人氏から下記の投稿をいただいた。
 いささか長いものであるが、ここにご紹介したい。台湾の実情をよくよく知るご意見か
と思われる。じっくりお読みいただきたい。               (編集部)


「抗日記念日」検討は親日台湾の反日への変身宣言
                              鈴木 方人(愛知県)

 「台湾民進党が『抗日記念日』検討−日本統治を見直し」との編集長コラムが本日(5月
9日)配信された。

 読売新聞の報道を受けて、そのなかに「ついに来るべき時が来た」との危機感を覚えた
柚原編集長が描いた近未来台湾の構図は、我ら日本人として自らの生命線の危機につなが
るものとして認識せざるを得ない事態ではないか。

 民進党がこの時期に「抗日記念日」の制定を発表した背景には、陳水扁民進党政権が少
数与党の国会構造のなかで明確な政策を打ち出しえず、地方選挙でも相次ぐ敗北で、地す
べり的に民進党勢力が衰退するのを食い止めたいとの意向がある。年末の直轄市長選から
来年の立法委員選挙、そして2008年の総統選に向けて”背水の陣”を敷いた結果が「抗日
」という選択であったことは容易に推測できる。

 そこには、これまで親日ではなくとも反日ではなかった民進党でさえ「抗日」を表明し
なければ選挙に勝てないと判断するに至る台湾の厳しい国内情勢がある。日本国内で”台
湾愛着派”が考える台湾情勢の認識が甘すぎることへの警告でもある。

 台湾から見る日本の政治・日本人像は、おそらく我ら親台派の思いとは裏腹に実に頼り
にならない存在ではなかろうか。いわゆる日本語世代が知る美しい日本人像は戦前の武士
道日本がつくった過去の残像になってしまった。

 戦後の日本が台湾に向け何かを発信したことはあったか。台湾の民主化に手助けをした
か。蒋介石の「以徳報怨」思想をあがめ、彼の行った白色テロに目をつむり、台湾人留学
生の拉致(強制送還)に協力すらしてきた日本。ようやく親日家李登輝前総統によって民
主国家になり、日本へ強烈なラブコールを送ってきた。しかし、その独立建国を手助けす
るどころか日本は中国に阿りブレーキをかけ、今も政府は動こうとしない。マスコミは台
湾に五星紅旗を立て抗議しても平気でやり過ごす。

 中国に組して台湾を無視する姿勢をとり続けた日本。台湾人から見れば戦後日本は、国
家として台湾に手を伸べることは60年もの長きわたって一つもないのだ。親日になろうと
しても、その要素を日本が与えなかったのだ。

 民進党の「抗日記念日」制定発表は、片思いの恋人についに愛想が尽きて待ちきれなく
なったことの表明だ。すでに台湾は蒋介石国民党時代に盧溝橋事件を基点とする歴史観か
ら「7・7抗日記念日」を制定している。今回はこれに加えて、中国人ではない台湾人の
観点から、明治の台湾割譲時における台湾人の反抗を「8・28抗日記念日」にするとい
うものだ。選挙戦略ではあっても国家制定の記念日の意味は重い。親日台湾が反日(抗日
)台湾へと変身する宣言として捉えることができよう。

 しかし台湾が自ら台湾建国を果たせず、日本を責めて「抗日」の旗を掲げるのは、現状
の中台関係を見る限り、自ら独立建国の意志を放棄するに等しくはないか。まさに中国国
民党の統一路線に組み込まれたことを意味する。統一綱領をようやく捨てた民進党陳水扁
政権が、今度は国際政治のなかで自縄自縛に陥るのではないか。

 昨今の陳水扁はダッチロールそのもの。市井の台湾人も拝金・自己中心が顕著になって
きている。日本も同様の気配。みんな”中国化”しているのだ。

 自由と民主の価値観を共有し、知的技能にも優れる台湾人。東シナ海と南シナ海、そし
て太平洋とを分ける重要な地政学的ポイントに位置する台湾は、日本の生命線以上の存在
である。基本に立ち返って日本の立国条件を考えれば、何よりも大事にしなければならな
い国が台湾ではないか。我が日本に「反台湾」の意志はないことだけは伝えねばならない
。日本政府を動かすことも我ら日本人の務めなのだ。



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