NHK「JAPANデビュー」問題は、放送から2ヵ月を過ぎても一向に鎮火する様子
はない。むしろ、燎原の火のごとく広がっている。
6月5日、前日4日の福地茂雄・NHK会長の定例記者会見を受ける形で読売新聞が遂に
記事を掲載した。読売新聞からはこれまで何度か取材を受けていて、担当記者も4月5日放
送の「NHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー・第1回『アジアの一等国』」を
見ていたそうだが、光と影の影ばかり強調した内容だとは思ったものの、当初は問題の重
要性がよくわからなかったという。
ところが、月刊「WiLL」や「正論」、「SAPIO」などのオピニオン誌が連続し
て取り上げ、問題が政界にも波及し、3日にはこの問題だけに焦点を絞った議連「公共放
送の公平性を考える議員の会」の準備会が開かれるに及んで記事化に至ったようだ(下記
に掲載)。
公平・公正性を重んじなければならない公共放送として、放送法やNHK自身が定めた
「新ガイドライン」が持ち出されるような内容の放送をしたことが問題なのだ。
朝日新聞も、「公共放送の公平性を考える議員の会」が発足するに至って、初めて6月5
日付で「NHK番組検証・自民議連発足へ−台湾統治めぐるNスペ」と報道した。
これまで産経新聞やスポーツニッポンなどだけがこの問題を伝えてきたが、読売と朝日
の参戦でいよいよ本格化してきた。
6月20日には渋谷や大阪などでNHK「JAPANデビュー」に抗議する国民大行動の第
3弾が行われ、6月25日にはNHKを告訴し、司法記者クラブでの記者会見も予定されてい
ます。後日、詳しくお伝えします。 (編集部)
「日本の台湾統治」NHK番組 「弾圧の史観」抗議続く
友好団体や地方議員 局側は偏向否定
【6月5日 読売新聞「メディア」】
日本の台湾統治を扱ったNHKの番組を巡り、日台友好団体などから「偏向している」
との批判が相次ぎ、NHKへの抗議活動が活発化している。先月30日には東京・渋谷のN
HK構内に入ったデモの参加者が警察官に制止されるトラブルも。一方、4日の定例記者
会見に臨んだ福地茂雄会長は「一方的な内容ではないと申し上げたことは、今も変わらな
い」と述べ、両者の主張は平行線をたどる。
問題となったのは、4月5日に放送された「シリーズJAPANデビュー」の第1回「ア
ジアの“一等国”」。番組では、日本にとって初の植民地となった台湾統治の実態を、当
時を知る人々の証言や「台湾総督府文書」などで判明した事実から検証していった。
これに対し、日台友好団体「日本李登輝友の会」が同月9日付で、「日本が一方的に台
湾人を弾圧したような史観で制作されている」「台湾人の証言を都合良く操作した」など
とする抗議声明をNHKに提出。これに同調する地方議員の会などが呼びかける形で、先
月16日以降、東京や大阪、名古屋、台北などで抗議活動が行われた。トラブルのあった先
月30日の東京でのデモには約1100人が参加している。
番組を問題視する動きは政界にも波及。自民党の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考
える議員の会」(中山成彬会長)がNHKに質問状を送った。さらに、NHK経営委員会でも、
一部委員から「説明責任が問われている。真摯(しんし)に対応すべきだ」という意見が
出された。
こうした動きに対し、NHKの日向英実放送総局長は、「一つの番組だけの中ですべて
の要素を平等に伝えるとストーリーがなりたたない面があるし、全体像をクリアに伝えら
れない。多角的な見方がされているか否かは、(個々の番組ではなく)放送全体で考える
べきだ」と反論する。抗議団体が訂正・謝罪放送を要求していることについても、事実に
反する内容ではないことを理由に、応じる意思を見せていない。論争は長期化の様相を呈
している。
東京工科大学の碓井広義教授(メディア論)は、「私も番組を見ていたが、日本の統治
下の肯定的な部分に目を向けず、今も台湾で反日感情が強いと受け取られるような作りに
なっていたことに、違和感を覚えた。そういった配慮を欠いたことで、結果的に本来なら
なくてもよい政治家の介入を招くスキを、自ら作ってしまった。その点は残念だ」と話し
ている。