蔡焜霖氏の半生を描いた『台湾の少年』がグラフィック・ノベル賞を受賞

グラフィック・ノベルとはアートファンならともかく、一般にはまだ聞きなれない感があるようで、「絵本ナビスタイル」によれば、「コマ割りの画面で構成された、海外のマンガ形式の書籍やビジュアルブックのこと」を指し、「扱うテーマは多岐にわたりますが、現代の社会問題を描いたジャーナリスティックな作品や、歴史を描いたもの、伝記なども数多く出版」されているそうだ。

本誌でも紹介した、台湾の白色テロの被害者だった蔡焜霖氏の半生を描いた『来自清水的孩子』(邦題『台湾の少年』)も、出版元の岩波書店は「台湾発 傑作歴史グラフィック・ノベル」と謳っている。

『台湾の少年』は、国立台東大学児童文学研究所の所長を務める游珮芸氏と絵本作家の周見信氏による共作で、すでに日本語やフランス語、アラビア語などに翻訳出版されている。

嬉しいことに、本年、フランスのギメ東洋美術館が主催する「エミール・ギメ アジア文学賞」はグラフィック・ノベル部門を新設し、『台湾の少年』が受賞したそうだ。

游珮芸氏は2月29日の授賞式後の中央通信社のインタビューで「台湾の民主主義は30〜40年かけ、相対的に見て平和に成熟したとして『誇りに値する』と強調。

作品に『台湾アイデンティティー』の要素が含まれていることに言及し、読者に台湾と中国の関係や民主化の難しさ、大切さに気付いてもらいたい」と述べたという。

受賞と游氏の発言に、昨年9月3日に身罷られた蔡焜霖さんも嘉されていると思われる。

「Taiwan Today」誌が詳しく報じているので、下記にご紹介したい。


『来自清水的孩子』に「仏エミール・ギメ アジア文学賞」のグラフィック・ノベル賞【Taiwan Today:2024年3月4日】https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=151&post=249338&unitname=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9-%E6%96%87%E5%8C%96%E3%83%BB%E7%A4%BE%E4%BC%9A&postname=%E3%80%8E%E6%9D%A5%E8%87%AA%E6%B8%85%E6%B0%B4%E7%9A%84%E5%AD%A9%E5%AD%90%E3%80%8F%E3%81%AB%E3%80%8C%E4%BB%8F%E3%82%A8%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%A1%E3%80%80%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E6%96%87%E5%AD%A6%E8%B3%9E%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%AB%E8%B3%9E

 フランスのギメ東洋美術館(Musee Guimet)が主催する「エミール・ギメ アジア文学賞(Prix Emile Guimet de litterature asiatique)」の授賞式が2月29日夜に行われ、国立台東大学(台湾南東部・台東市)児童文学研究所の所長を務める游珮芸氏の『来自清水的孩子』(邦題:台湾の少年)が同賞が今年新設したグラフィック・ノベル賞を受賞した。

「エミール・ギメ アジア文学賞」は今年で7回目。

『来自清水的孩子』は游珮芸氏と絵本作家の周見信氏による共作。

台湾で政治的迫害を受けた故・蔡焜霖氏の生涯を描いている。

時代は日本統治時代から国民党政権に至る近現代史。

日本語、フランス語、アラビア語、ドイツ語、韓国語、英語、イタリア語などへの翻訳も進んでいる。

游珮芸氏は授賞式で創作の理由について、「蔡氏が政治的迫害を受けた人物だったからではない。

様々な試練を経て示した姿が若者たちの手本となるに足るものだったからだ。

台湾の若者たちに蔡氏の物語を知ってほしいと考えた」と語った。

游氏は、「現在の台湾の若者たちは生まれた時から自由な時代に生きており、戒厳令がしかれていた時代を知らない。

ある人物の物語を通じて台湾を知ることは最も簡単な理解の方式だ。

もちろん最大の希望は世界に台湾の物語を見てもらうことだ」と述べている。

今年初めて設けられたグラフィックノベル賞には『来自清水的孩子』のほか、韓国の漫画家、馬栄伸氏の『母親たち:清掃員ママと彼女たちの第二の人生』、日本の宮崎駿氏の『シュナの旅』の3作品がノミネートされていた。


※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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