もつとめていることから、今年10月に発行した機関誌「日台共栄」の巻頭エッセイ「台湾
と私」で「自虐史観克服と台湾修学旅行」と題して執筆いただいた。
すでに本誌でもご紹介したが、台湾修学旅行をはじめた経緯や新渡戸稲造の胸像寄贈に
も触れているので、改めてご紹介したい。本会ホームページではPDF版でも掲載してい
るので下記からご覧いただきたい。
◆機関誌「日台共栄」10月号(33号)[巻頭エッセイ「台湾と私」]PDF版
http://www.ritouki.jp/magazine/magazine033.html
自虐史観克服と台湾修学旅行
本会理事・森教育学園理事長 森 靖喜
平成14年11月19日、産経新聞に李登輝元総統の「日本人の精神」が掲載された。慶応大
学三田祭で講演を依頼された李登輝閣下に、あろうことか日本外務省はビザを出さず、講
演は幻となった。そのような経緯から、ならばと産経が講演の全文を紙上掲載したのである。
大正9年から10年の歳月をかけて烏山頭ダムを完成させ、台湾では「神さま」と慕われ、
銅像やご夫妻の墓が造られ、台湾で最も愛されている日本人「八田與一」(1886―1942
年)の業績を紹介し、清明・誠実な日本精神のすばらしさを訴えたものであった。ダムと
灌漑用水路(24000km=万里の長城の4倍)により、洪水・干害・塩害・風土病の荒地で
あった嘉南平野(香川県と同じぐらいの面積)が穀倉地帯に変身したのである。戦前の日
本のすばらしい歴史が台湾にある。私には衝撃的な内容であった。
烏山頭ダムだけでなく、台湾には多くの日本人の業績がある。この史実を学園の教育に
取り入れれば、戦後日本を支配している「自虐史観」を克服できる、と確信したのである。
中国の文化大革命の最中、朝日新聞などが「すばらしい革命」が進行していると賞賛す
る中で、真実は毛沢東による劉少奇追放の凄惨な権力闘争だ、と書く産経新聞を中国は昭
和42年に北京から追放。産経以外の日本のマスコミはどこも北京政府に阿り、台湾には記
者を送り込まないばかりか、台湾のことを記事にすることはほとんどなかった。以後、反
米親中の風潮と台湾無視は現在も続いている。従って、李登輝閣下のすばらしさを知る日
本人は残念ながら少数である。
そのような言語空間の中で、産経新聞社の主宰で実施された第1回「李登輝学校」に私も
参加し、以後数回「李登輝学校」に参加、閣下の講義を受け卒業証書もいただいた。本学
園の社会科教師を何回かに分けて「李登輝学校」に参加させ、ようやく平成23年より生徒
の修学旅行としての訪台が実現した。
2回目の今年の3月は、生徒に加えて保護者も参加、日本李登輝友の会事務局のお世話に
より、李登輝先生に講演していただくことができた。「武士道はすばらしい、日本精神を
持つ日本はアジアのリーダーになるべきだ」という講演に生徒は感激し、保護者もすっか
り李登輝ファンに。大成功でした。
李登輝閣下のご講演とともに、「日経アジア賞」を受賞された、奇美実業創業者の許文
龍会長の講演と、氏が社員研修用に書かれた『台湾の歴史』も衝撃的であった。「日本人
は台湾を侵略したと悪く言うが、日本の統治を受けた台湾人が、日本の統治はすばらしい
と言っているのに、なぜ日本を貶めるのか」「台湾も朝鮮も近代化の基礎は日本が造っ
た」、 故に日本人はもっと胸を脹れと、自虐史観に覆われ自信喪失した日本人に警鐘を鳴
らしておられる。
このたび、奇美の許瑤華・東京事務所代表のご尽力により、台湾の近代化に大きな功績
を残した新渡戸稲造博士の胸像を寄贈してくださることになった。学園の玄関前に設置す
る予定である。訪台のたびに歓待してくださる蔡焜燦氏とともに、心より御礼を申し上げ
たい。
終わりに、高雄市の隣、屏東市の私立屏栄高級中学(高校に相当)と姉妹縁組を結び、
相互交流が始まった。昨年は本学園が訪問し、この五月は屏栄の校長以下30数名が来校、
交流を深めている。日台は運命共同体であり、「侵略国家日本」を覆す歴史が、欧米の植
民地政策とは異なる歴史が台湾にはたくさんあることを知ってほしいものである。今後も
両国の絆をしっかり築いていく覚悟です。