論」11月号で「日台関係基本法」制定に言及し、「私の中学以来の同級生でもある」浅野
和生(あさの・かずお)平成国際大学教授が提案する「日本版・台湾関係法」(日台関係
基本法)を取り上げ、「必要な法整備に取り組まなくてはならない」という思いをつづっ
ていることを紹介した。
浅野教授は今期から本会理事に就任している。本会機関誌「日台共栄」10月号の巻頭言
で「現政権下で日台関係基本法の実現を」と題し、なぜ日台関係基本法されなければなら
ないのか、なぜ制定は急務なのかについて執筆いただいた。下記に全文を紹介したい。
なお、岸信夫議員は9月30日、内閣改造人事により安倍総理から外務副大臣に任命されて
いる。今年1月末、日本の外務大臣として初めて「台湾は重要なパートナー」と一歩踏み込
んで表明した岸田文雄外務大臣ともども、日台関係のさらなる深化に向けた活躍を期待し
たい。
現政権下で日台関係基本法の実現を
【機関誌「日台共栄」10月号「巻頭言」】
平成国際大学教授・本会理事 浅野 和生
日台双方において「相手方に在留する自国民の身体、生命及び財産(中略)が侵害され
ることなく十分な保護を与えられる」ことは、どこに定められているか。日本の財団法人
交流協会、台湾の亜東関係協会という「民間団体」が1972年12月、「在外事務所相互設置
に関する取り決め」において「関係当局との折衝その他一切の必要な便宜をはかること」
を規定しているだけである。
つまり、民間団体が、政府当局に折衝すること、必要な便宜をはかることで合意してい
るに過ぎない。
本誌8月号に掲載された李登輝元総統からのメッセージに「私の悲願でもあった台日漁業
協定の締結」とある。これは尖閣諸島海域での台湾漁船の操業を認めた、本年4月合意の
「日台民間漁業取決め」を指している。このほか、日台間では、2011年9月に結ばれた「日
台民間投資取り決め」など、ここ数年に実務的取決めが数多く結ばれている。両国関係改
善は喜ばしいが、これらすべては、日台双方の民間団体の合意に過ぎない。
それでも日台の関係は、日本と正式の国交があり、両国友好を声高に叫びながら、領海
侵犯が常態化し、日本政府と国民を罵る某国との関係よりはるかに良好である。外交関係
がなくとも日台間に信頼関係が確立していることは悪いとは言えないが、これによって法
治国家の異常事態が希釈されるわけではない。
ところで、1952年の日華平和条約締結の手続きは両国の全権大使による署名、衆参両院
での承認と、その後の批准書交換、発効という正式のものだった。一方、日華断交は、19
72年9月29日、日中共同声明発表後の記者会見で、大平外相が「日華平和条約は存続の意義
を失い、終了した」と発表しただけである。
日本国憲法第98条第2項は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠
実に遵守することを必要とする」と規定している。田中首相、大平外相による憲法軽視が、
日台間の無法状態の出発点にある。
日本は法治国家である。日本にとって最も重要で、最も親しみある台湾との関係を、40
年以上も無法状態のまま放置してきたことは、日本の恥である。日台間の既存の取決めに、
法治国家にふさわしい基礎を定めるためにも、日台関係基本法の制定は急務である。