群馬県は、台湾の自治体と姉妹都市や友好都市など都市間提携を結ぶ自治体が日本でもっとも多く、10自治体に及んでいる。1989年10月に上野村が苗栗県卓蘭鎮と「姉妹都市」を提携したのを手始めに、2012年12月に群馬県と彰化県が「友好交流協定」を結んでからは、県内のみなかみ町、渋川市、桐生市、片品村など10自治体が次々と台湾の自治体と都市間提携を結んでいる。
群馬県に次ぐ長野県が5自治体、青森県、石川県、静岡県が4自治体だから、いかに群馬県が突出しているかがわかる。(詳しくは本会HP「台湾と都市間提携を結ぶ日本の自治体」参照)
◆台湾と都市間提携を結ぶ日本の自治体[2020年12月5日現在 日本李登輝友の会調べ] http://www.ritouki.jp/index.php/activity/sister-city/
また、「台湾紅茶の父」の新井耕吉郎(沼田市)、「最後の台南市長」の羽鳥又男(前橋市)、「台湾の風土病撲滅の医師」羽鳥重郎(前橋市)など、今でも台湾の人々から敬愛される人物を輩出している。さらに、芝山巌事件で亡くなった「六士先生」の中島長吉(安中市)もおり、群馬と台湾の関係は深い。
このような歴史を反映してのことと推察されるが、毎日新聞が高崎市の東農大二高では「19年度に同高を卒業した24人の生徒が台湾の大学に進学し、9月からキャンパスライフをスタートさせている。その中には日本統治時代の旧帝大の流れをくむ最難関校の台湾大の合格者もいる」と伝えるとともに、県内の私立高4校の事例も取り上げ「群馬県内の高校生の進路として台湾の大学が注目されている」と報じている。
日本の高校の海外修学旅行先でもっとも訪れるところは台湾だ。文部科学省の調査によれば、平成29年(2017年)度は台湾には5万3,603人(332校)が訪れ、アメリカの2万8,335人(208校)、シンガポールの2万7,015人(192校)などを大きく引き離して断トツの1位となっている。
群馬県の高校生の進路先に台湾の大学が視野に入ってきていることと、修学旅行で台湾を訪問する高校生たちが多いことの因果関係は明確ではないものの、けっして無関係ではないだろう。静岡県などは台湾の高校との姉妹校が断トツに多く、おそらく群馬県ばかりでなく全国的な傾向にあると考えるのが自然なのではないだろうか。
日台の絆を担う高校生たちが台湾に注目していることが、修学旅行ばかりでなく、進学先にも及びつつあることを素直に喜びたい。
—————————————————————————————–群馬の高校生、台湾の大学進学広がる 中国語・英語習得可能、学費年40万円【毎日新聞:2020年12月23日】https://mainichi.jp/articles/20201223/k00/00m/040/010000c
群馬県内の高校生の進路として台湾の大学が注目されている。既に進学実績を上げている高校もある。語学が習得でき、学費も安いということに加え、台湾が新型コロナウイルスの封じ込めに比較的成功している点も魅力となっているようだ。【庄司哲也】
「請在下面五個數字加上『+』『−』『×』『÷』四個符號、使結果得出一個最大的整數(下の五つの数字に四つの符号を加え、最大の整数を作ってください)」
東農大二高(高崎市)が台湾の大学進学を目指す生徒のために2019年度から始めた中国語講座。黒板に「繁体字」の中国語で設問が書かれ、台湾人の講師は日本語を使わない。生徒も必死で中国語を話そうとしていた。
同高進路指導部の岡田雄嗣教諭は「担当している私自身、生徒たちの意欲の高さと語学の進歩の速さに驚いている」と語る。講師は、設問を解くことに生徒の意識を向かわせながら、自然に中国語が身につく工夫をしていた。受講する3年の男子生徒は「発音やリスニングは難しいと感じるが、中国語講座は普段の授業よりも面白い」と話した。
19年度に同高を卒業した24人の生徒が台湾の大学に進学し、9月からキャンパスライフをスタートさせている。その中には日本統治時代の旧帝大の流れをくむ最難関校の台湾大の合格者もいる。
県内の私立高4校は10月27日、台湾の5大学とオンラインで結び、連携協定覚書を締結した。協定は県内4校の生徒の入学や奨学金を優先的に認めることなどが主な内容。台湾側は嘉義大や、渋川市に日本の総本山がある台湾の仏教団体「仏光山」系の南華大などの5大学が参加した。
前橋市の共愛学園高もこの協定に加わった。前身の女学校時代から長く校長を務めた周再賜氏が台湾出身という歴史的なつながりがあり、台湾の高校との交流を続けている。同高の天川正副校長は「台湾の大学では中国語はもちろん、英語の授業も行われる。二つの外国語が身につくことは、グローバル社会の中で重要」と考える。
学費の安さも魅力だ。年間約40万円と、日本の私立大の平均的な学費の3分の1ほど。さらに台湾では優秀な学生の学費免除など、経済的な支援策も充実している。
一方、大学卒業後の進路を不安視する保護者が多いのも事実だ。だが、東農大二高の加藤秀隆教頭は「中国語を使いこなせる人材が引く手あまたの現状を説明すると納得してくれる」と語る。実際に大手総合商社「伊藤忠商事」では15年から中国語人材の養成を進め、総合職社員の3分の1に当たる約1000人を育成している。
さらにコロナ禍で留学環境が狭められている中、台湾が感染者を封じ込めていることも利点だ。加藤教頭は強調する。「感染者が少なく、安心して留学に送り出すことができる。国内の大学では、リモートでの授業が続くが、台湾では通常の授業が行われています」
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