米国の連邦議会は、トランプ政権時代から台湾との関係強化をはかり、中国を牽制する国内法を次々と制定してきている。バイデン政権に替わっても、中国の新疆ウイグル自治区での中国による人権侵害が発覚したこともあり、トランプ政権時代よりも先鋭化してきているようだ。
上院で審議している「米国イノベーション・競争法案」では、米政府当局者を台湾へ2年間派遣する制度や北京五輪への外交使節派遣禁止を盛り込んでいるという。
日本経済新聞は「対中政策は超党派で協力する機運があり、夏をめどに法案が成立する公算が大きい」と伝えている。
—————————————————————————————–米、当局者を台湾へ長期派遣 上院で対中法案大詰め【日本経済新聞:2021年5月28日】https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN283OV0Y1A520C2000000/
【ワシントン=中村亮】 米議会上院で中国との覇権競争に備える包括法案の審議が大詰めに入っている。米政府当局者を台湾へ長期派遣する制度を盛り込んでおり、米台間の交流を拡大する。2022年の北京冬季五輪に米国の外交使節を送ることを禁じる条項も入れ、中国への圧力を強める。
上院は29日、対中法案である「米国イノベーション・競争法案」の採決に向けて審議を続けた。6月上旬に審議を再開し、近く採決する見通しだ。下院でも類似の法案を審議し、上下両院が法案の詳細を擦り合わせて大統領が署名すれば成立する。与野党対立が激しくなるなかでも、対中政策は超党派で協力する機運があり、夏をめどに法案が成立する公算が大きい。
上院で審議している法案は1000ページを超え、安全保障や経済面で中国に対抗する方策を幅広く盛り込んでいる。
米政府当局者を台湾へ2年間派遣する制度では、1年は台湾の行政機関や議会で勤務し、もう1年は中国語や台湾政治を学ぶ。米議会関係者によると、これまで台湾への派遣制度の大半は3カ月程度までにとどまっていた。法案が夏に成立すれば、政権・議会は22年に派遣を始める方針だ。
法案は22年の北京五輪について、米政府当局者の参加を目的とした連邦予算の支出を禁じる。事実上、外交使節の派遣を見送る「外交ボイコット」につながる。米政権が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」とみなす新疆ウイグル自治区での中国による人権侵害に抗議する狙いがある。中国は人権侵害を否定している。
下院でも賛同する声が多い。下院で当局者派遣制度の新設を盛った法案を提出している与党・民主党のアミ・ベラ下院議員は日本経済新聞の取材に対して「中国との競争は数十年に及ぶ。台湾での経験が豊かで教育された人材を育てることは米国にとって良いことだ」と指摘した。ベラ氏は下院外交委員会でアジア政策を統括する立場にあり、立法や予算について強い権限を持っている。
五輪をめぐる今後の焦点は2つある。一つは北京五輪での外交ボイコットの条件や対象だ。下院民主党幹部の側近は「全面的な外交ボイコットは強硬すぎる」との認識を示す。
もう一つは企業への対応だ。与野党の下院関係者は「五輪前に中国の人権改善を促す取り組みを米企業に求めるべきだ」との見方を示す。
上院の法案は沖縄県尖閣諸島が米軍の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象になるとも明記した。
中国軍へのけん制も強める。中国による台湾侵攻を抑止するため経済や外交面での対抗措置を同盟国と協議し、あらかじめ公表するよう政権に求めた。中国軍に軍事施設の利用を認めた国に対して資金支援を制限するとした。
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