仏外相が「台湾海峡の安定は重要」と強調し「行動する用意がある」と明言

 本誌では、チェコやリトアニアなどのみならずヨーロッパ連合(EU)の欧州議会や欧州委員会が中国と距離を置くようになり、同時に台湾との関係を強化するようになった動きについてできるだけお伝えしてきている。

 原因ははっきりしている。中国によるウイグル族への人権弾圧や強権によって香港の一国二制度を形骸化させたことなどだ。急速な軍備拡張や新型コロナウイルス情報の隠蔽も中国への不信感を募らせ、中国への批判にすぐ声高に反駁する「戦狼外交」と呼ばれる強気の外交姿勢もまた反発を招いている。

 EUやNATO(北大西洋条約機構)の中心国であるフランスも、インド太平洋に海外領土を有することから、2018年に国防戦略『フランスとインド太平洋における安全保障』において「インド太平洋地域の安定化」を打ち出し、日米が唱道する「自由で開かれたインド太平洋」の安全保障に同調、日仏や日米仏の共同訓練を実施するようになっている。

 昨年5月1日にはインド洋の北西側にあるアデン湾において、海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」、仏海軍の空母打撃群「シャルル・ド・ゴール」、米海軍の駆逐艦と日米仏共同訓練、また5月4日には沖縄周辺の海域において海自の補給艦「ましゅう」と仏海軍フリゲート「シュルクーフ」と日仏共同訓練、9月17日にはニューカレドニア周辺海域において護衛艦「しらぬい」と仏海軍航空機と日仏共同訓練を実施している。

 日本経済新聞は、フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン欧州・外務相が書面インタビューに応じ、台湾海峡の安定に向け「現状を変更しようとする全ての試みを批判する。我々は衝突を防ぐために行動する用意がある」と述べ、また「台湾海峡の安定は、(周辺)地域全体の安定のために重要だ」などと述べたことを伝えている。下記にその記事をご紹介したい。

 フランスの元老院(上院に相当)は昨年5月6日、台湾の世界保健機関総会(WHA)や国際民間航空機関、国際刑事警察機構、国連気候変動枠組条約)への参加支持決議を圧倒的多数で可決。これは元老院として初の台湾支持決議だった。また、11月29日には国民議会(下院に相当)もWHOなど国際機関への台湾の参加を支持する決議を圧倒的多数で可決している。

 この間の10月6日には、元老院の台湾支持決議を働きかけたアラン・リシャール元国防省率いる上院議員団4人が訪台し、蔡英文総統など政府要人らとコロナ後の経済回復や地域の安全保障、継続的な相互交流・協力など幅広い議題について意見を交換していた。

—————————————————————————————–台湾海峡安定へ「行動する用意」 仏外相が書面で回答【日本経済新聞:2021年2月20日】https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR180RC0Y2A210C2000000/?unlock=1

【パリ=白石透冴】フランスのルドリアン外相は日本経済新聞の書面インタビューに応じ、台湾海峡の安定に向け「行動する用意がある」と述べた。中国を念頭に仏軍の周辺海域航行などでけん制する考えを示唆した。欧州連合(EU)と台湾との貿易協定の締結にも前向きな姿勢をみせた。

 パリで22日、EU・インド太平洋の外相50人以上がオンライン・対面で議論する会合が開かれるのを前に取材に応じた。中国の軍事的脅威が高まる台湾海峡について「現状を変更しようとする全ての試みを批判する。我々は衝突を防ぐために行動する用意がある」などと述べた。

 フランスは太平洋の仏領ニューカレドニアなどに仏軍基地を持っており「台湾海峡の安定は、(周辺)地域全体の安定のために重要だ」と強調した。名指しは避けたが中国の強引な海洋進出に懸念を示した。仏政府は2021年、南シナ海で原子力潜水艦を航行させたと明らかにするなど、周辺海域での抑止力強化に積極的だ。

 台湾との関係強化のため、EU・台湾の自由貿易協定(FTA)や投資協定の締結にも意欲をみせた。「台湾との貿易関係を前進させ、市場の開放や非関税障壁の撤廃につながるあらゆる計画を支持する」と応じた。

 EUは15年に台湾との投資協定の可能性を探ると発表したが、中国への配慮などから交渉は始まらず、欧州議会が21年10月に協定の検討をEUに求めた。ただ最近は急速に中国と距離を置き、台湾に接近する動きが欧州で出ている。フランスは1〜6月にEU議長国を務めており、対台湾貿易を巡るEU全体の議論にも影響を与える可能性がある。

 22日の会合の目的は「覇権主義的な態度を隠さない国がある。共同で行動することが、結束を強めるために最良の方法だ」と表明した。安全保障、デジタル、気候変動などでEU・インド太平洋各国の協力を強化する。

 米国・英国・オーストラリアが中国抑止を念頭に21年に立ち上げた新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」との連携は「対話にふさわしい設立の経緯だったとは言えない」と消極的な姿勢を示した。オーストラリアが設立に合わせ、次世代潜水艦開発の協力国を突如フランスから米英に切り替えたことが不満の背景だ。

 ただ「インド太平洋を巡る我々の考えに不一致があるわけではない。米国とはすぐに対話を再開した」として、足並みの乱れを否定した。「日仏の同海域での安全保障は、自由な航行を支持するという一致した考えに根ざしている」として日本との関係強化にも意欲をみせた。仏軍は21年初めて日本国内の訓練に参加し、日米仏による離島防衛訓練を実施した。

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