台湾との関係強化をはかる米国は、台湾関係法(1979年1月、制定)と「台湾に対する『6つの保証』」(2016年7月、両院一致決議)を米台関係の基礎としている。それに加えて、「台湾旅行法」(2018年3月16日)や「アジア再保証イニシアチブ法」(2018年12月31日)などの国内法を次々と制定している。
さらに、今年に入って1月22日、米国連邦議会の下院が台湾の世界保健機関(WHO)へのオブザーバー復帰を支持する決議を全会一致で採択した。下院に続いて今度は上院が1月29日、超党派で同様の法案を提出したという。下記に中央通信社の記事をご紹介したい。
ちなみに、下院可決の法案は、台湾のオブザーバー資格回復に向けた戦略を策定するよう米国務長官に求め、台湾が総会に招待されなかった場合に国務長官は報告書を提出するよう求めている。上院の法案もほぼ同じ内容のようだ。
実は、この法案は昨年にも下院で可決されていたが、上院の審議日程が過密だったため同法案の審議が見送られたという経緯があったが、今年は上院で審議されることが期待されている。
下院と上院が同じ法案で、かつ全会一致で可決すれば、大統領が署名しなくても自動的に法案は成立する。「台湾旅行法」も「アジア再保証イニシアチブ法」も上院・下院が全会一致で可決していたが、トランプ大統領は署名することで成立させている。
米国をしのいで世界の覇者になろうとする中国の覇権的動きに、米国は議会も大統領もこれまでにない危機感を抱いており、それが台湾との関係強化をはかる国内法の制定というかたちで現れている。
中国は米国の関税攻勢などで実質22%にも及んでいるという試算もある失業率で、国内に大量失業者問題を抱え、悲鳴を挙げはじめているという。ここに、さらなる楔を打ち込もうという米国議会人の一致した見解のようだ。
————————————————————————————-米上院議員、台湾のWHO復帰支持の法案提出 下院に続き【中央通信社:2019年1月31日】
(ワシントン 31日 中央社)米上院の超党派議員が29日、台湾がオブザーバーとして世界保健機関(WHO)に復帰することを支持する法案を提出した。法案では、台湾のWHO復帰実現に向けて米国務長官が戦略を策定するよう求めている。
共和党のジェームズ・インホフ議員や民主党のロバート・メネンデス議員など与野党の上院議員複数名が連名で提出した。
インホフ氏は報道資料で、台湾のWHO総会参加を中国が3年連続で妨害したことに言及。台湾の総会参加に積極的に協力することは国際機関における中国の拡張的な行動を抑制するのに寄与するとした。メネンデス氏は、台湾を孤立させる中国の種々の行為、特に国際保健に関する行為を無視してはいけないとした上で、台湾が国際社会に立脚できるよう、米国は台湾を支持しなければならないとの考えを示した。
米下院でも22日、同様の趣旨の法案が全会一致で可決された。駐米国台北経済文化代表処(大使館に相当)はWHOへの台湾の有意義な参加を強力に支持する米議会に対し感謝を示した。
(江今葉/編集:荘麗玲)