米国下院が台湾の外交的孤立を防ぐ「台北法」案を全会一致で可決

 米国連邦議会の下院は3月4日、台湾に不利となる行動をとった国に対し、外交関係のレベルの引き下げや、軍事的融資などの支援の一時停止または変更など、台湾の外交的孤立を防ぐことを定める「台北法」(TAIPEI Act)案を賛成415、反対0の全会一致で可決したという。

 この法案の正式な名称は「台湾同盟国際セーフガードおよび強化イニシアチブ2019年法」(TAIPEI Act:Taiwan Allies International Protection and Enhancement Initiative Act)と言い、2年前の2018年9月4日、共和党のコリー・ガードナーとマルコ・ルビオ、民主党のエド・マーキーとボブ・メネンデスの各上院議員が超党派で上院に提出していた。

 この背景には、台湾の国交国が中国の金銭的外交圧力により次々と断交する事態があった。

 2017年6月13日に中米のパナマ共和国、2018年4月30日にカリブ海のドミニカ共和国、同年5月24日には西アフリカのブルキナファソ、同年8月21日には中米のエルサルバドル共和国と、いわば米国の裏庭ともいうべき国々に中国が手を伸ばしてきていることに対し、米国国務省は2018年9月7日、パナマ共和国、ドミニカ共和国、エルサルバドル共和国の3国に駐在の大使(パナマは代理大使)を召還することで、断交も辞さないとする強い抗議の姿勢を明らかにした。

 このような背景のもと、コリー・ガードナー議員らは「台北法」案を上院に提出したのだったが、上院外交委員会の審議スケジュールに間に合わずいったんは廃案となった。

 しかし、コリー・ガードナー議員らは翌年5月23日、廃案となった法案に「台湾の国際組織への参加」と「米台経済関係の強化」の2項目を加え、法案発効後、国務長官は毎年、この主要3項目に関して報告書をまとめて議会に提出するよう定めて再提出。

 その後、上院で可決され、下院でも同様の法案が提出され、下院法案では台湾の国際機関への参加に対する支持や台湾との自由貿易協定の締結なども盛り込まれていて、上院法案とは若干ことなるものの、いずれも全会一致で可決している。

 今後、上院において上院可決法案と調整して大統領府に送られ、トランプ大統領が署名すれば成立する。

 米国では、上院も下院も法案内容が同じで、全会一致で可決している場合、大統領署名がなくても自然成立する。2018年3月16日に成立した「台湾旅行法」(Taiwan Travel Act)や、2018年12月31日に成立した「アジア再保証イニシアチブ(促進)法」(ARIA:Asia Reassurance Initiative Act)は両院の全会一致で可決しているが、トランプ大統領は署名することによって成立させている。おそらくこの「台北法」案も、トランプ大統領は署名することで成立させるだろう。

 法案が成立すれば、中国共産党政権が反発するのは必至だろう。事実、下院での可決を受け「断固として反対する」と表明した。だが、米国との経済戦争でほぼ屈服し、武漢肺炎への対応で大童の現在、国民向けの形だけの反発になるだろう。中国の覇権的野望に歯止めがかかり、台湾との国交国で中国になびく傾向も鎮まるだろう。

 下記に、この法案が提出されて以降の動きを箇条書き的にまとめ、中央通信社の記事を紹介したい。

・2018年9月4日、上院議員のコリー・ガードナー(共和党)とマルコ・ルビオ(共和党)、エド・マーキー (民主党)とボブ・メネンデス(民主党)の4人が超党派で上院に提出するも廃案。・2019年5月23日、コリー・ガードナー議員らが再提出。・2019年9月25日、上院外交委員会が全会一致で可決。・2019年10月29日、上院本会議が全会一致で可決。・2019年10月18日、下院議員のジョン・カーティス(共和党)マイケル・マッコール(共和党)、マリオ・ ディアス・バラート(共和党)、アルビオ・シラズ(民主党)、ビセンテ・ゴンザレス(民主党)の5人が 超党派で下院に提出。・2019年10月30日、下院外交委員会が可決。・2020年3月4日、下院本会議が賛成415、反対0の全会一致で可決。

—————————————————————————————–米下院、台北法案を可決=台湾の外交や国際参加への支援を政府に促す【中央通信社:2020年3月5日】

 (ワシントン中央社)米下院は現地時間4日、台湾の外交的孤立を防ぐことを米政府に促す「台北法案」(TAIPEI Act)を賛成415、反対0で可決した。法案の内容が微調整されたため、上院に再び送られる。上院で可決された後、トランプ大統領が署名すれば成立する。

 同法案は、台湾の外交や国際参加、経済発展に関して、米政府に支援を求める内容。昨年5月に共和党のコリー・ガードナー議員ら超党派の上院議員4人が共同で提出し、上院本会議では同10月に可決された。下院でも同様の法案が提出されていたが、下院の関連委員会が上院の法案番号を採用することを決議し、内容に若干の修正を加えていた。

 法案の主な内容は、米台関係の強化を促す▽台湾が主権国家を参加資格としない国際組織に加盟し、その他の適切な組織でオブザーバーの身分を得られるよう米国が支援する▽台湾との関係を強化させる国との経済、安全保障、外交分野での関与を増やす一方で、台湾の安全保障や繁栄を傷つける深刻または著しい行動を取る国に対しては経済、安全保障、外交分野での接触を改める─など。

 共和党のジョン・カーティス下院議員は中央社に対し、修正版の法案が上院で早期に処理される見通しを示した上で、「法案が(トランプ)大統領のデスクに届けば、すぐに署名されるはずだ」と強調した。

(徐薇テイ/編集:名切千絵)

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