米国上院に中国制裁権限を大統領に付与する「COVID-19責任法案」が提出

 昨日の本誌でお伝えしたように、5月11日、米連邦議会の上院(定数:100人)が台湾のWHO年次総会への参加支援する法案を全会一致で可決した。

 その翌日の12日には、連邦議会の諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会」が、台湾のWHOからの台湾排除は情報共有に支障を来たと指摘するとともに、台湾排除を主張する中国を非難し、感染拡大を利用して中国が台湾への圧力を強めているとも指摘する報告書を発表した。

 驚いたことに、この12日、今度は中国が武漢肺炎の感染拡大の経緯を全面的かつ完全に説明しなければ、大統領に中国に対する制裁権限を与える法案が上院に提出された。

 この法案は「COVID-19責任法」と呼ばれ「トランプ氏に60日の期間を与え、その間に米国とその同盟国、または世界保健機関(WHO)をはじめとする国連(UN)機関が主導する可能性のある調査に対し、中国が新型コロナウイルス感染症の発生に関する完全な説明を提供したかどうかを検証し、議会に報告させる」(AFP時事)内容だという。

 また「人獣共通感染症にさらされる危険がある生鮮市場の全面閉鎖や、新型コロナ流行の最中に香港で逮捕された民主活動家が全員釈放されているかどうかについても確認を求めた」(産経新聞)内容とも伝えられている。

 提案者は、上院司法委員長のリンゼー・グラム議員(共和党)やジェームズ・インホフ議員などの重鎮を含む8名にのぼるという。

 なんとも矢継ぎ早に米国は畳みかけてくるものだ。米国と中国はいまや戦争モードに突入したと言ってもいいだろう。この法案が成立するかその行方に注目したい。

—————————————————————————————–米共和党上院議員、対中制裁法案を提示 新型コロナ巡り【ロイター通信:2020年5月13日】

[ワシントン 12日 ロイター] – 米共和党のグラム上院議員は12日、中国が新型コロナウイルスの感染が広がった経緯を十分に説明しない場合、同国に広範囲に及ぶ制裁を科す権限を米大統領に与える法案をまとめた。

 グラム議員は、中国共産党の「偽り」がなければ、米国にウイルスが広がる事態にはならなかったと確信していると述べた。同議員はトランプ大統領に近いことで知られる。

 グラム議員はまた、中国は感染がどのように始まったかを巡る調査を拒んでいるとし、「強制されない限り、中国が本格的な調査に協力することはないと私は確信している」と述べた。

 同議員が起草した「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)責任法」の法案では、米国または同盟国、世界保健機関(WHO)などの国連機関が主導する同感染症調査の内容について、中国が完全な説明を提供したとの認証を米大統領が法成立から60 日以内に行うよう義務付けている。

 また、人間にとって健康上のリスクとなり得る「生鮮市場」を中国がすべて閉鎖したことや、新型コロナ流行後の取り締まりで拘束した香港の民主活動家を全員解放したことも保証するよう義務付けている。

 大統領には、資産凍結や渡航禁止、ビザ(査証)取り消し、米金融機関による中国企業への融資の制限、中国企業による米証券取引所への上場禁止など、一連の制裁を科す権限を与えている。

 法案はこのほか8人の共和党上院議員が共同起草者となっている。

 ワシントンの中国大使館のコメントは現時点で得られていないが、中国政府はこれまで、感染拡大について透明性を保ってきたと主張している。

 民主党のケイン上院議員は、「中国で物事が誤った方向に進んだのは間違いない」としながらも、全体に目を向ける必要があり、トランプ政権の責任回避を許すべきではないと指摘。

 「まずは何が起きたかを明らかにし、それぞれが問題にどのように関与したかを見極めて今後の対応を改善する必要がある。責任を判断するのはそれからだ」と述べた。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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