陳水扁政権時代の2005年に建設が認可され、馬英九政権の2009年から建設に取りかかっていた米国在台湾協会(AIT)台北事務所の新庁舎が6月12日に竣工する。
資材も人員もすべて米国でまかなってきたと言われるこの新庁舎落成の式典には、台湾の蔡英文総統をはじめ日本の沼田幹夫・日本台湾交流協会台北事務所代表など各国関係者もお祝いに駆けつけるそうで、米国が誰を派遣するか注目されている。当初から、台湾の国連加盟や米国と台湾の軍事協力の強化と深化を唱えてきたジョン・ボルトン氏が有力視されてきた。
毎日新聞は「米紙ニューヨーク・タイムズなどは、12日に開かれる米国代表機関、米国在台協会(AIT)台北事務所新庁舎の落成式に、親台湾派で知られるボルトン氏が出席する構想があると報じている」と報じている。
実は、2019年の国防権限法案が下院で可決し、上院の軍事委員会で可決した前日の5月23日、米国国防省は今年のリムパックへの中国招待取り消しを発表した。防衛省などの関係者も、米国のこの決断に驚いたのではないだろうか。
リムパックとは「環太平洋合同演習」(Rim of the Pacific Exercise)のことで、米国海軍主催により1971年にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの海軍が参加して始められ、ハワイの周辺海域で実施される世界最大の多国間海軍軍事演習で、西暦の偶数年に実施している。中国は2014年と2016年にも招待されていた。
米国はその中国を今年のリムパックに招待しないと発表したのだ。米朝会談の流れをみても、世界一の軍事力を背景にした米国の果断な決断力は頭抜けている。不気味なほど力強い。「中国を刺激するな」症候群に陥っている感のある日本の外務官僚などの媚中的発想とは別次元にあると見てよい。
米国は米国在台協会(AIT)台北事務所新庁舎の落成式にジョン・ボルトン氏を派遣するだろう。期待を込めて、そう予測する。
————————————————————————————-米朝首脳会談 米「ボルトン外し」か同行か 当日台湾派遣説も【毎日新聞:2018年6月8日】
【ワシントン高本耕太】12日に迫った米朝首脳会談に向け、トランプ米大統領が北朝鮮との友好ムードを前面に押し出すなか、対北朝鮮強硬派、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の動向が注目されている。首脳会談に同席するためシンガポールに同行するとの報道がある一方、北朝鮮代表団を刺激しないよう会談に参加せず、代わりに同じ日に台湾で開かれる米国代表機関事務所の完工式に出席するとの見方まで浮上している。
米ブルームバーグ通信は5日、米朝首脳会談が開かれるシンガポールへの米側代表団にポンペオ国務長官やケリー大統領首席補佐官らと共にボルトン氏が参加すると報じた。
就任前に北朝鮮の政権転覆を主張していたボルトン氏を北朝鮮は強く警戒している。4月末にはボルトン氏がテレビ番組で、非核化の方式として「リビア方式」の適用を提唱したことに態度を硬化。名指しで批判したうえで首脳会談中止を警告した経緯がある。
そのため、トランプ政権が、首脳会談での融和ムード醸成にボルトン氏が障害となると判断してボルトン氏を遠ざけるのではとの観測がくすぶり続けている。今月1日に金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の最側近、金英哲(キムヨンチョル)副委員長がホワイトハウスでトランプ氏と会談した際、安全保障政策の責任者であるのにボルトン氏は同席しなかった。
外交関係者によると、直前まで大統領執務室にいたものの席を外すよう要請されたという。トランプ氏や米朝協議を主導してきたポンペオ氏の意向とみられる。
米朝協議に関連してボルトン氏の存在感が低下するなか、浮上しているのがボルトン氏の台湾派遣説だ。米紙ニューヨーク・タイムズなどは、12日に開かれる米国代表機関、米国在台協会(AIT)台北事務所新庁舎の落成式に、親台湾派で知られるボルトン氏が出席する構想があると報じている。中国に対し、ムニューシン財務長官が「閣僚級を派遣することはない」と確約しているが、ボルトン補佐官は閣僚ではないため台北入りの臆測が消えていない。