米国の国防総省は6月29日、台湾から要求された戦術演習などに必要な装備として、焼夷曳光榴弾や多目的弾、訓練用弾の各種30ミリ弾とその関連装備、車両や武器、その他関連部材用の予備・修理用部品など総額4億4020万ドル(日本円約637億円)相当の供与を承認して議会に通知した。1ヶ月後に発効する見込みだという。
中国による台湾侵攻では、伝統的な戦略では台湾を防衛できないことや、中国が力点を移したグレーゾーンへの対応が薄いとして、李喜明・参謀総長から「小規模、分散、精密、高威力」の兵力で非対称戦を挑む「総体防衛構想」提示され、台湾の国防部はこの構想を採用。それに基づいて、台湾は米国へ武器を要求し、米国も受け入れて供与するようになってきている。
ちなみに、台湾への武器供与は、トランプ前政権では、政権発足後5ヵ月目の2017年6月から2020年12月までの11回だった。バイデン政権の政権発足後7か月目の2021年8月に始まり、今回で10回目となる。バイデン政権もトランプ政権を踏襲し「台湾の自己防衛力強化が台湾海峡両岸と地域の安定に役立つ」(ロイド・オースティン国防長官)という考え方に変わりはない。
◆バイデン政権の台湾への武器供与
・1回目:2021年8月4日 155ミリ自走榴弾砲40輌や弾薬補給車20輌、先進野戦砲兵戦術情報システム1組などなどの供与を国防省が承認 して議会に通知。・2回目:2022年2月7日 5年間にわたるミサイル防衛システムの維持、保全、改良を目的とした計画のための軍事関連装置とサービスを 供与することを国防省が承認して議会に通知。・3回目:2022年4月5日 地対空ミサイル「パトリオット」に関する訓練や保守などの技術支援や関連装備の供与を国防省が承認して議会 に通知。・4回目:2022年6月8日 中国軍の航空機や船舶による台湾周辺の海域や空域での活動が活発化していることから、軍艦を適切な状態に維 持するのに役立つ艦艇用の部品や関連装備など1億2000万米ドル(約160億6600万円)の供与を国防省が承認して 議会に通知。・5回目:2022年7月15日 戦車や戦闘車両を補修するための整備に関する技術支援と関連装備として、総額1億800万米ドル(約150億円) 規模の供与を国防省が承認して議会に通知。・6回目:2022年9月2日 ミサイル早期警戒レーダーシステム、地上配備型対艦ミサイル「ハープーン」、空対空ミサイル「サイドワイン ダー」など総額11億ドル(約1530億円)規模の供与を国防省が承認して議会に通知。・7回目:2022年12月6日 F16戦闘機を含む米国の技術を使用した軍用機やシステム向けの部品4億2800万ドル(約585億円)相当の供与を 国防省が承認して議会に通知。・8回目:2022年12月28日 対戦車地雷散布装置「ボルケーノ」や重高機動戦術トラック「M977A4 HEMTT」など1億8000万ドル(約240億円) 相当の供与を国防省が承認して議会に通知。・9回目:2023年3月1日 F16戦闘機用の対レーダーミサイル「ハーム(HARM)」100発や空対空ミサイル「アムラーム(AMRAAM)」200発、 発射装置や訓練用の模擬ミサイルなど6億1900万ドル(約840億円)相当の供与を国防省が承認して議会に通知。・10回目:2023年6月29日 焼夷曳光榴弾や多目的弾、訓練用弾の各種30ミリ弾とその関連装備、車両や武器、その他関連部材用の予備・修 理用部品など総額4億4020万ドル(日本円約637億円)相当の供与を国防省が承認して議会に通知。
—————————————————————————————–米国、台湾に武器売却 弾薬や予備部品など637億円相当【中央通信社:2023年6月30日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202306300001
(ワシントン中央社)米国防安全保障協力局(DSCA)は29日、国務省が台湾に対する4億4000万米ドル(約637億円)相当の武器売却を承認したと発表した。台湾への武器売却は2021年1月のバイデン政権発足以来10度目。今年に入ってからは2度目となる。
承認されたのは各種30ミリ弾とその関連装備を売却する3億3220万ドル(約481億円)相当の案と、車両や武器、その他関連部材用の予備・修理用部品を売却する1億800万ドル(約156億円)相当の案の計2件。30ミリ弾には焼夷(しょうい)えい光榴弾や多目的弾、訓練用弾が含まれる。
同局は、売却案は台湾との関係のあり方を定めた米国内法「台湾関係法」に合致するものであり、台湾の軍隊の現代化や確かな防衛能力の維持に向けた継続した努力を支持するものだと説明。台湾の安全保障の向上に寄与し、地域における政治的安定や軍事力のバランス、経済発展を支援するものだとした。
(徐薇[女亭]/編集:名切千絵)
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