第15回李登輝学校研修団レポート(5) 黄昭堂先生「台湾の現状と将来」 佐藤 和代

第16回研修団は11月3日〜7日を予定

 第15回目となる日本李登輝友の会の「台湾李登輝学校研修団」は、5月7日から11日の4泊
5日の日程で行われ、5月16日から本誌で本部事務局員の佐藤和代さんによるレポートを断
続的に掲載してまいりました。

 事情により中断しておりましたが、再開いたします。これまでのレポートは下記をご参
照ください。

・第1回 5月16日  http://melma.com/backnumber_100557_5184997/
・第2回 5月18日  http://melma.com/backnumber_100557_5187069/
・第3回 6月3日   http://melma.com/backnumber_100557_5200121/
・第4回 6月6日   http://melma.com/backnumber_100557_5202526/

 なお、次回の第16回台湾李登輝学校研修団は、11月3日(木・祝)〜7日(月)に実施す
る予定です。近々、ご案内いたします。ふるってご応募ください。


◆第4日目(5月10日) 黄昭堂先生「台湾の現状と将来」

 澎湖島から台湾本島に戻ってきて、最初の授業が黄昭堂先生の講義となりました。

 黄先生は台湾独立建国聯盟主席。台湾大学経済系のご卒業、東京大学国際学修士を修め
られ、昭和大学等で教鞭もとられました。総統府国策顧問も務められていました。

 日本でも台湾独立運動を継続されていたため、国民党のブラックリストに載り、30年以
上も帰国できませんでしたが、李登輝元総統による民主化で帰国されました。ときどき日
本に来られ、講演もされています。

 黄先生からは、このたびの大震災へのお見舞い、そして日本人の姿勢を賞賛されるお言
葉をいただきました。そのことを、本会の柚原正敬事務局長は月刊「正論」7月号で次のよ
うに紹介していました。

≪風邪気味だった黄昭堂氏は講義の冒頭、いつもの冗談口調で李氏に風邪をうつしたのは
自分かもしれないと笑いを誘う。しかし、東日本大震災のことに話が及び「日本の皆さん
が世界に示した姿は非常に尊い。日本人の強さを現している」と話したところで絶句して
しまった。黄氏の講演は何度も聞いている。だが、涙ぐんで絶句する姿は初めてだった。≫

 続けて台湾の現状と、来年の総統選への期待、台湾と日本は防衛上、経済上も強い結び
つきがあり、今後も良好関係を継承することが大事だと述べられました。

 この日は風邪をひかれていた先生ですが、感情豊かにユーモアを交えながらのお話の中
に、台湾を愛し、よき将来を願う思いがひしひしと伝わってきました。以下がその内容で
す。

≪東日本大震災による日本国土への甚大な被害には大変心を痛めています。しかし日本の
皆さんはその悲しみに必死に耐えて、秩序正しく日々を送る尊い姿を世界に示されました。
また、この震災によって自衛隊、アメリカ軍への再評価がされたのではないでしょうか。

 台湾では最初、馬総統が1億元の義捐金(2008年の中国四川大地震には台湾政府から20億
元を拠出した)を提案すると外交部長は“とんでもない!”と反対しました。しかし一般
台湾人からは50億元(約150億円)─現在では既に180億円を超えている─もの義捐金が寄
せられました。台湾と日本は底辺(民間レベル)のつながりが強いことがここに明らかに
なったのです。≫

台湾の現状については、次のように講義されました。

≪2300万人の台湾人の多くは、楽で豊かな生活を望み、残念ながら国のために何かしよう
とする人は少ない。これは日本も同様といえそうですが。

 ただ「私は台湾人だ」という意識は6割に上がっており、これが来年の総統と立法委員の
ダブル選挙にどう影響するかに注目されます。

 その選挙ですが、もともとは今年の11月が立法委員選挙であり、来年の3月が総統選でし
た。それを来年1月にダブル選挙にしたのは、国民党にとって有利に事を進めようとの目
論見があってのこと。つまり国民党は、立法委員選には強いが総統選には弱いので、立法
委員選の勢いを借りて総統選も良い結果をだそうとしているのです。 

 さて、来年の総統選には民進党からは蔡英文女史が出馬します。この蔡英文さん、イン
テリジェンスであるのは勿論のこと、女性の良さ(強さを前面には出さず、物腰が柔らか
い)を兼ね備えており、人気上昇。恐らくこのままいけば総統に当選されるのではないか
と期待されています。

 外国人記者クラブ会見でもクイーンズイングリッシュを披露し、知性と女性的な良い印
象を国内外に与えました。 

 馬英九総統は3年前の選挙時には、ハンサムボーイぶりで人気が上がり勝利しました。一
方、民進党候補はハンサムとは言えず、日本留学中にラーメン屋で働いて実家に送金した
と親孝行振りを発揮しましたが、到底かないませんでした。

 また民進党内部での足の引っ張り合いもテレビなどで露呈し、蘇貞昌氏に至っては台北
市長選に出てしまって「もし私が落選したら……」と候補者としてあるまじき言動さえし
てしまいました。

 ここはもう蔡英文さんに期待するしかありません。

 馬総統は就任以来、馬脚を顕し続けています。就任してまもなく北京政府訪問時に「私
のことを馬総統と呼ぶ必要はありません。馬さん(馬先生)で結構です」と言う始末です。
また国旗は尊厳を表すものであるのに国旗(中華民国旗ではあるが)も引っ込めてしまい
ます。 

 ECFA締結の際には「中国とまずECFAを結び、その後でアメリカ、日本等とFT
Aを結べばよい」と発言しましたが、結局それは国民を騙しました。あれから1年、一向に
他国とFTAを結ぶ気配すらありませんから。 

 それに対し、蔡英文は「私が総統になれたとしても国として前政権の政策の引き継ぐべ
きところは引き継ぎます。中国とのECFAは継承します。しかし、条約改正の交渉はし
ます」と発言しました。実にスマートな発言です。

 さらに蔡英文は「FTA(ここでは中国とのECFAを指している)の内容をWTOに
報告します」とも発言しました。WTOは上部機関であり、中国とのFTA(ここではE
CFA)はWTOの規制を受けるようにする。中国の秘密外交に属するものを陽の下に晒
す、という政策をとろうとしているのです。≫

 黄昭堂先生も、次に講義された許世楷先生も、次期総統には蔡英文女史が就任すること
を強く望んでおいでであり、また聴講した私たち日本人も自然と期待したいと思うように
なりました。                              

                                   (つづく)



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