神戸市会が「台湾のWHO及びICAOへのオブザーバー参加を支持すること等を求める意見書」を可決

 本誌前号において、3月25日に兵庫県議会(長岡壯壽議長)は2月定例会最終日の本会議において「台湾のWHO年次総会オブザーバー参加を求める意見書」を全会一致で可決したことをお伝えしました。

 なんとその翌日の3月26日、神戸市会が「台湾の世界保健機関及び国際民間航空機関へのオブザーバー参加を支持すること等を求める意見書」を69対0の全会一致で可決していたことが判明しました。

 兵庫県議会と同じく、2月定例会開催中の3月10日、中華民国留日神戸華僑総会の陸超会長が、外海開三(そとみ・かいぞう 維新)、川内清尚(かわうち・きよなお こうべ市民連合)、藤本浩二(ふじもと・こうじ 公明)、上畠寛弘(うえはた・のりひろ 自民)の4市議を紹介議員として請願したことに基づいています。

 付託委員会の総務財政委員会でも、本会議でも、全会一致で可決したそうですので、すごいことです。

 神戸市も中国・天津市と友好都市を提携するなど中国との交流がさかんなところですが、さすがに台湾がWHOから排除される事態は人命にかかわることですので、意見書では「WHOや国際民間航空機関(ICAO)を始めとする国際機関に台湾が参加できないことは, 日本だけでなく全世界の人々の健康を脅かしかねません」と危機感を募らせ、今回の意見書可決に至ったそうです。

 国際民間航空機関の総会は3年に1度開かれ、台湾は馬英九政権の2013年に特別ゲストとして招かれて参加して以降、蔡英文政権では参加できていません。そこで2016年の総会の折には、菅義偉・官房長官が「(台湾が)何らかの形で参加するのが、現実問題として望ましい」と述べたことがあります。

 また、2016年9月に和歌山市で開催された第2回「日台交流サミット」において、国際民間航空機関等の国際組織への台湾の有意義な参加を支持する内容の「和歌山宣言」が発表されたことも思い出しますが、地方議会で意見書が可決されたのは恐らく初めてのことかもしれません。下記に意見書の全文をご紹介します。

—————————————————————————————–

議員提出第9号議案

        台湾の世界保健機関及び国際民間航空機関へのオブザーバー参加        を支持すること等を求める意見書提出の件

 台湾の世界保健機関及び国際民間航空機関へのオブザーバー参加を支持すること等を求める意見書を別紙のとおり提出する。

 令和2年3 月26日提出

                                     提出者 神戸市会議員全員

                   理 由

 台湾の世界保健機関及び国際民間航空機関へのオブザーバー参加を支持すること等を国に要望する必要があるため。

  令和2年3月26日

 衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 外務大臣 厚生労働大臣 国土交通大臣 内閣官房長官

                                  神戸市会議長 安 達 和 彦

台湾の世界保健機関及び国際民間航空機関へのオブザーバー参加を支持すること等を求める意見書( 案)

 新型コロナウイルスの感染による「COVID-19 」の発症は日々拡大しています。世界保健機関(以下「WHO」といいます。) は, 公衆衛生上の緊急事態を宣言しました。WHO事務局長は「世界全体に非常に重大な脅威」だとし,ワクチンの用意は1年半以内に整うと発表しましたが, ワクチンが整うまでの間も人々は国境を越えて往来し, ボーダーレス化した現代においては各国の連携は必須です。その連携においては決して地理的空白を発生させてはなりません。しかし,2,300万人の人口を抱える台湾は,WHO等に参加できておらず,まさに地理的空白となっています。かつて台湾では,平成15年にSARSが流行した際,非加盟国であることを理由にWHOから防疫情報を随時得ることができず, 医療従事者を含む多くの人々がSARS感染によって死亡しました。

 WHOの世界保健機関憲章は,「この憲章の当事国は、国際連合憲章に従い、次の諸原則がすべての人民の幸福と円満な関係と安全の基礎であることを宣言する。」「到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一である。すべての人民の健康は、平和と安全を達成する基礎であり、個人と国家の完全な協力に依存する。」と掲げています。

 現在,台湾における在留日本人は2万人を超え,日本と台湾の間を往来する旅客は昨年年間延べ710万人を超えています。また神戸市においても,多くの台湾人観光客やビジネスマンが訪問し,多くの台湾人が在住しています。このように台湾は,航路,金融, 観光,商業,貿易などのハブであり,台湾を離着陸又は経由する旅客は6,900万人近く存在することを踏まえれば,WHOや国際民間航空機関(ICAO)を始めとする国際機関に台湾が参加できないことは, 日本だけでなく全世界の人々の健康を脅かしかねません。

 よって,国におかれては,国際社会の平和的な発展と安定の実現のため, 台湾がWHO及び国際民間航空機関(ICAO) へオブザーバー参加することを支持し,参加に向けて協力するよう強く要望します。

 以上, 地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

────────────────────────────────────────────※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。