本誌では、台湾語研究の第一人者で台湾の独立建国運動を日本ではじめた王育徳氏(1924年1月30日〜1985年9月9日)について何度か紹介してきました。
現在、産経新聞「話の肖像画」で連載している金美齢さんや、台湾独立建国聯盟主席や陳水扁政権で国策顧問をつとめた黄昭堂氏、この7月21日に亡くなった黄文雄氏など、日本人の多くがその名前を知る台湾人は、王育徳氏がはじめた日本の台湾独立建国聯盟のメンバーです。
その生涯については、次女で、台湾独立建国聯盟日本本部委員長をつとめた王明理さんの編纂による王育徳著『昭和を生きた「台湾青年」』(草思社、2011年)に詳しく、2018年9月9日のご命日には、頼清徳市長の肝入りで出身地である台南市に王育徳記念館が開館しています。
9月9日にはまたご命日がめぐってきますが、台南の国立台湾文学館では「心繋臺灣:王育徳文物捐贈展」が8月27日から始まりました。
来年(2025年)4月6日まで開かれているそうです。
「心繋臺灣」は「台湾に思いを寄せる」「台湾を思いやる」というような意味合いかと思いますが、展示期間中には王明理さんも訪台し、王育徳氏を巡るシンポジウムなどに登壇するそうです。
それにしても、日本にせめて王育徳氏や黄昭堂氏の記念碑があって欲しいと常々思っています。
台湾の独立と建国を求めて立ち上がった勇敢な台湾人がいたことを日本人にも伝える記念碑があれば、日本人の台湾への認識も深まると同時に、その慰霊と顕彰もできるのにと思っています。
◆臺文館「心繋臺灣:王育徳文物捐贈展」開幕 從各種「第一」認識台語博士王育徳 https://www.nmtl.gov.tw/News_Content.aspx?n=3891&s=223089【8月27日】
◆国立台湾文学館 〒700-005 台湾・台南市中西区中正路(湯徳章大道)1号 Tel:(+886) 6-221-7201 Fax: (+886) 6-222-6115 https://www.nmtl.gov.tw/
◆王育徳記念館 〒700-007 台南市中西区民権路2段30号 Tel:(+886) 6-221-9682 https://oitmm.tnc.gov.tw/
台湾語研究の第一人者 王育徳氏に関する展示 台湾・台南で始まる【中央通信社:2024年8月28日】https://japan.focustaiwan.tw/culture/202408280006
(台北中央社)台湾語学者で劇作家や台湾独立運動家としても活躍した王育徳氏に関する文物を集めた特別展が27日、南部・台南市の台湾文学館で始まった。
戦後に執筆した自伝的小説の日本語原稿や晩年に尽力した台湾人日本兵の補償問題に関する原稿、普段から使用していた眼鏡や万年筆などが展示されている。
王氏は日本統治時代の1924(大正13)年に台南で生まれた。
旧東京帝国大学に進学後、初めて台湾語研究で博士号を取得し、日本の大学で初となる台湾語講座を開いた。
国民党政権が市民を弾圧した47年の「2・28事件」で兄を亡くし、49年に日本に脱出すると、名前が国民党のブラックリストに記載された。
85年に死去するまで台湾への帰国はかなわなかったが、台湾の文学や言語、歴史の研究に尽力し、民主化や人権運動の推進に関心を持ち続けた。
台湾文学館は、特別展では王氏が学んだ台北高校(現・台湾師範大学)や海外に逃亡して国民党のブラックリストに記載された作家の紹介もしているとし、自由な校風で多くの優秀な人材を輩出した高校と、迫害を受けて海外に追いやられながらもふるさとを思い続けた作家への理解を深めてもらいたいとアピールしている。
特別展は来年4月6日まで。
(邱祖胤/編集:齊藤啓介)。
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。