歴史捏造の一環か 早川 友久

◆台北事務所ブログ「歴史捏造の一環か」(8月29日)
  http://twoffice.exblog.jp/

 本日付の産経新聞国際面「トレンド現象学」欄では「台湾・年号の表記不統一」につい
て、台北支局の吉村剛史支局長が論じています。


【トレンド現象学】 台湾の日本時代は和暦の使用を
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110828/chn11082818000000-n1.htm

 日清戦争の結果、約半世紀の日本統治時代を経た台湾。その近現代史は複雑だが、台湾
の学校教科書や歴史教育などで日本統治時代の台湾の歴史に触れる際、西暦とともに「明
治」「大正」「昭和」といった日本の元号(和暦)を併記すべきだ、という意見書が現場
の教育責任者から教育部(文科省に相当)に提出され、注目されている。

 意見書を提出したのは、7月まで台湾北東部の宜蘭県政府の教育処長だった陳登欽さん
(48)。台湾の歴史教科書では一部を除き、清国から日本への割譲が決まった下関条約(18
95年)から、第二次大戦の終結(1945年)までの「日治時期」の台湾の出来事は西暦のみ
で表記。日本統治以前は西暦と清の元号を、以後は西暦と民国暦を併記している。

 また学校史や史跡などの案内板は、日本時代でも、辛亥革命が起きた1911年までは西暦
と清の元号、12年からは西暦と民国暦を併記しているケースなどもあり、統一されていな
いのが実情だ。

 陳さんが疑問を持ったのは、6月、宜蘭市で同県最古の小学校の案内板設置式に出席した
際、記載されていた学校史を見たのがきっかけ。日本時代の校歌制定や、日本人校長の着
任などが西暦と民国暦の併記となっていることに困惑した。自らも日本時代の鉄道敷設に
関する修士論文を当時の文献を参考にまとめた経験から、「和暦を知らなければ教育現場
が混乱する」と実感したという。

 提案では「台湾に過去半世紀の日本統治時代が存在したのは歴史的事実だ」「子供たち
には事実を知る権利がある」「1945年以前の日本領台湾と中華民国は無関係である」など
を柱とした。

 同様の混乱は宜蘭県に限らない。台北市内でも、総統府の隣の台湾銀行は市の史跡指定
を受けているものの、案内碑には「光緒三十四年」と清の元号を用いて表記されているだ
け。和暦(明治41年)や西暦(1908年)の表記がなく、歴史研究者らは「見る側を混乱さ
せている」と指摘していた。

 「歴史事実を覆い隠したり、歴史事実から逃避したりすることはできない」という陳さ
んの提案に、教育部では「敏感な問題であり、十分に諮(はか)ったうえで回答を示した
い」として、教育研究院の教科書発展センターなどで審議中。その成り行きが注目されて
いるが、果たして…。(台北 吉村剛史、写真も)


 台湾にはご承知の通り、総統府に代表されるように、日本時代の建築物が現役として使
われたり、古跡に指定されるなど、日本時代の歴史に触れる機会は少なくありません。

 私自身の感覚としては、説明文の表記に使われる年号は大きく分けて「西暦」「日本の
元号」「中華民国暦」の3つです。もちろん、これら全てが表記されている場合もあれば、
どれか一つだけの場合ももちろん存在します。

 記事中でも指摘されているように、大まかな流れはあるようですが、日本時代の出来事
が西暦と中華民国暦だけで表記されている場合、見る人を困惑させるのが事実です。

 また、例を挙げてみると、こういった事象は古跡や歴史に関する展示に限らないようです。

 例えば、下の画像は先日購入した緑島のガイドブックに掲載されている緑島灯台の説明
です。説明には「民国26年、緑島沖で座礁した米国フーバー号の救助に緑島島民が協力し
たことに感謝し、米国が建設したもの」と書かれています。

 しかし、この説明を一読してすぐに違和感を覚えました。「民国26年」といえば1937年
=昭和12年の出来事です。この表記では台湾のいつの時代に起きた出来事なのか非常に分
かりにくくなってしまっています。

 確かに歴史には光と陰があり、殊更に光の部分だけを取り上げたり、陰の部分を隠す必
要もありません。日本時代とひとくちに言っても、評価されるべき点もあれば、非難され
るべき部分もあるのが事実です。

 しかも、記事の中で言及されているように「台湾に日本が統治した時代があることは歴
史的事実」です。特に、台湾はオランダやスペイン、日本、中華民国といった外来政権の
支配を経験し、いまや台湾本土化が進みつつある状況のもと、これまで台湾が歩んだ来し
方を正しく教育する必要があります。この「和暦表記」の提案をきっかけとして、客観的
な台湾の歴史教育が深化することを祈ります。



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