欧州議会が台湾との貿易対話を「局長・閣僚級」に格上げ

 欧州連合(EU)は自由、民主主義、人権の尊重、法の支配といった理念を尊重する経済と政治の連合体で、ヨーロッパの27ヵ国が参加している。

 本誌では、EU加盟国が次々と中国によるウイグル族への人権弾圧について「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定する動議や台湾の国際機関への参加を支持する決議を採択したことや、チェコ、フランス、欧州議会公式代表団、スロバキア、リトアニア、エストニア、ラトビアなどから続々と台湾訪問が続いたことに着目し、逐一、そのニュースなどを伝えてきた。

 その象徴は、昨年11月18日、リトアニアの首都に「台北」ではなく「台湾」を冠した代表事務所「駐リトアニア台湾代表処(駐立陶宛台湾代表処)」を開設したことだろう。中国はリトアニアを経済と外交で報復的な制裁を加えたことから、EU加盟国の反発を招き、EUと中国の関係は悪化した。中国との投資協定は棚ざらしになったままだ。

 それとは対照的にEUの台湾との関係強化策は続けられ、去る5月17日、欧州議会は「台湾との関係を新たなものにする。局長・閣僚級対話に格上げする」と表明したという。

 産経新聞は「6月2日に貿易、投資をめぐる初の局長・閣僚級対話をオンラインで開催することを決め」「EUからウェイアンド貿易総局長が参加する。これまでは局次長級にとどめていた。台湾からは王美花・経済部長(経済産業相に相当)の参加が見込まれる」と伝えている。

 EU加盟国で台湾と国交を持つ国はない。EUは台湾に「欧州経済貿易弁事処」を設けている。日本も台湾とは外交関係がなく、日本台湾交流協会台北事務所を設けている。しかし、日本は局次長級の対話さえ台湾とは実現できていない。ましてや局長・閣僚級対話などは夢のまた夢の話で、5県産品輸入問題でも明らかなように、農水省の局長など実務者が台湾側と話すことはなく、ほぼすべてを日本台湾交流協会台北事務所に丸投げしている状態だ。

 「我が国との間で緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナー」(2016年5月20日:安倍晋三総理の「答弁書」)と位置づけ、日本にとって「台湾海峡の平和と安定」は死活的に重要にもかかわらず、その台湾と政府間対話ができないというのはなんとも歯がゆい。同じ条件下にあるEUにできて日本にできないというのは、やはり日本に問題があるとしか思えない。早急に台湾との対話正常化を図るべきだ。

—————————————————————————————–EU、台湾との貿易対話「局長級」に格上げ【産経新聞:2022年5月20日】https://www.sankei.com/article/20220520-ZOWC6224P5OKJCUMZRDLARA52M/?589672

 【パリ=三井美奈】欧州連合(EU)は、台湾と6月2日に貿易、投資をめぐる初の局長・閣僚級対話を開催することを決めた。EUが中国との関係見直しに動く中、台湾を経済パートナーとして格上げし、半導体貿易などで関係を深める狙いがある。

 欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)が17日、欧州議会で「台湾との関係を新たなものにする。局長・閣僚級対話に格上げする」と述べ、明らかにした。ドムブロフスキス氏は「台湾は半導体分野で非常に重要な役割を担っている」として、世界的に供給が不足する半導体を巡り、台湾との貿易関係構築に期待感を示した。

 欧州委によると、6月2日の対話はオンラインで行い、EUからウェイアンド貿易総局長が参加する。これまでは局次長級にとどめていた。台湾からは王美花経済部長(経済産業相に相当)の参加が見込まれる。

 EUは昨年9月発表した初のインド太平洋戦略で、中国重視の経済外交を転換し、台湾との貿易、投資関係強化を明記した。続いて欧州議会が台湾との関係強化を求める文書を可決し、議員団が訪台している。

 EUは2020年末、中国との投資協定に大枠合意した。その後、新疆(しんきょう)ウイグル自治区の人権問題を巡って対中制裁を発動し、中国がEUに報復。双方の関係は悪化し、協定の批准が棚上げになっている。

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