欧州議会が「台湾と中国は互いに隷属せず」を決議、台湾外交部は歓迎の意を表明

本誌では、ヨーロッパが2021年から中国に反目し、台湾に目を向けるようになったことに注目し、これまでその経緯について何度もレポートしてきた。

その嚆矢は、2020年1月13日、チェコ共和国の前プラハ市長が北京市と結んだ友好都市協定に「台湾とチベットの独立に反対する」という文言が含まれていたことに異を唱えたプラハ市のズデニェク・フジブ市長は、異を認めない北京との交渉で協定は無効となり、柯文哲台北市長と姉妹都市協定を締結したことだった。

その年の8月30日には、チェコ共和国のミロシュ・ビストルチル上院議長やフジブ市長など代表団90人が訪台し、ドイツ、フランス、スロヴァキアが訪台を支持した。

2021年2月には、オランダ議会がヨーロッパでは初めて、中国・新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族の状況について「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定する動議を可決。

4月に入ると、イギリス下院が中国の新疆ウイグル自治区で少数民族が人道に対する犯罪とジェノサイド(民族虐殺)に苦しんでいると認定、政府に行動を求める決議を超党派の賛成で採択。

翌月には、リトアニア議会が中国による新疆ウイグル自治区のウイグル族への圧力をジェノサイドと認定する決議案を可決し、中国中東欧首脳会議からの離脱を宣言した。

そのシンボル的な出来事は、11月18日にリトアニアの首都ヴィリニュスに事実上の大使館となる代表事務所に台湾の名を冠した「駐リトアニア台湾代表処(駐立陶宛台湾代表処)」を正式に開設したことだった。

要は、ウイグル族への人権弾圧、香港の一国二制度の形骸化、中国軍の急速な軍備拡張、「戦狼外交」の強気な外交姿勢、投資やインフラ事業が期待したほど実現されていない「一帯一路」経済圏構想への幻滅など、中国自身が反中感情を招いた結果と言ってよい。

それに加え、台湾はヨーロッパと同じく自由、民主、法の支配、人権などの基本的な価値観を共有し、半導体の受託生産では世界に冠たる位置を占めている台湾の魅力がヨーロッパを惹きつけた。

ヨーロッパのこの傾向はいまも衰えていない。

欧州議会は2月28日、欧州連合(EU)の共通外交・安全保障政策と共通安全保障・防衛政策の執行報告書を賛成多数で可決し、中国が台湾海峡の緊張状態をエスカレートさせていることを改めて懸念すると共に、EUが台湾との全面的なパートナーシップを深化させることへの支持を表明した。

これに対し、台湾の外交部は2月29日にプレスリリースを発表して歓迎と感謝の意を表明した。


欧州議会「台湾と中国は互いに隷属せず」を決議、外交部は感謝【台湾国際放送:2024年2月29日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/98870

 欧州議会は、欧州連合(EU)の2023年度の「共通外交・安全保障政策(The Common Foreign and Security Policy, CFSP)」、と「共通安全保障・防衛政策(Common Security and Defence Policy, CSDP)」の年度執行評価報告を採択しました。

この中では、台湾と中国は互いに隷属せず、台湾で直接選挙によって選ばれた政府だけが、国際社会で台湾の人々を代表することができると指摘したほか、台湾はEUのインド太平洋地域における重要なパートナーであると重ねて表明、台湾の国際社会の場への参加を支持すると共に、中国の台湾に対する軍事的威嚇及びグレーゾーンでの活動に対する懸念を示しました。

そして、中国に向け、地域の安定を脅かす行為を停止するよう呼びかけたほか、EU加盟国に向け、台湾海峡で航行の自由を示す任務を増やすよう激励しました。

外交部は、「欧州議会は過去2年間、20あまりの台湾に友好的な決議を採択し、台湾の国際社会への参与への支持に加え、台湾海峡情勢に対する関心を示し、EUに向け台湾との協力関係を深めるよう呼びかけてくれた。

我が国はこれに対し、歓迎と感謝を示したい」と述べました。

外交部の劉永健・報道官はさらに、「欧州議会はこのほか、三年連続で訪問団を結成し、台湾を訪れるなど、具体的な行動によって台湾を支持してくれている」と感謝しました。

このほか、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ(Aleksandar Vucic)大統領が、中国当局のいわゆる官製メディアのインタビューで「台湾は中国に属する」と発言したことについて、外交部は、中華民国(台湾)は、主権独立国家であり、中華人民共和国とは互いに隷属せず、中華人民共和国はかつて一日たりとも台湾を統治したことはなく、台湾の主権、地位を歪曲するいかなる発言も、台湾海峡の現状と、国際社会に公に認められた客観的事実を変えることはできない、と重ねて強調しました。

外交部はまた、メディアが注目する香港基本法第23条の立法化を例にとり、中国当局が、香港の主権が1997年に移管される前に行ったプロパガンダや報道を調べてみるべきだと述べ、香港の現在の状況と比較し、未来を想像すれば、中国の官製メディアが、是非が転倒していることを言いくるめていることは明らかだと強調しました。

(編集:駒田英/本村大資)。

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