台湾がプーチン・ロシア大統領の「『一つの中国』原則」支持発言に反駁

 ロシアのプーチン大統領は10月18日、中国の習近平・国家主席と北京で会談した際、「世界に中国は一つしか存在しない。台湾は中国の領土における不可分の一部である。ロシアは揺らぐことなく『一つの中国政策』を実行し、中国が国家主権と領土の一体性を守ることを固く支持する」と述べたと伝えられている。

 ロシアが中国の「『一つの中国』原則」を支持した発言だが、ロシア政府のそもそもの考え方とは異なる。

 というのも、ロシアが侵略から約2週間を経た2022年3月7日、対ロ制裁に踏み切った国・地域の「非友好国」リストを公表した際、非友好国に米国や英国、日本、EU加盟国などとともに台湾が入っていたことはまだ記憶に新しい。そして、台湾には「中国の領土と見なされているが、1949年から独自の政府による統治が行われている」という注釈を付けていたからだ。

 ロシアが台湾について「独自の政府による統治が行われている」と表示し、国として台湾を認めたように受け取られた。当時、台湾では、思わぬ形で中国の友好国のロシアから台湾の存在が認められ、しかも中国政府がロシアに抗議しなかったと話題になったことを思い出す。

 しかし、独裁者プーチンとしては何としても中国の後ろ楯を得ようと、ロシア政府の考え方を一方的に変えたのだろう。習近平もまた、西側に対抗する独自のブロックを構築しようとプーチンを引き入れたという構図のようだ。中国とロシアの政治的な思惑が一致したことによる、プーチンの追従的発言だったようだ。

 本誌では、台湾が中国の不可分の一部という主張は、中国による一方的な主張であり、その根拠は国際的な理解を得ていないと繰り返し述べている。プーチンのスケベ心丸出しの発言に台湾が反発するのはもっともだ。下記に、台湾の外交部が表明したプーチンへの反論を紹介したい。

—————————————————————————————–中露首脳会談でプーチン氏が「台湾は中国領土の不可分の一部」と発言、外交部が反論【Taiwan Today:2023年10月20日】https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=149&post=243550&unitname=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9-%E6%94%BF%E6%B2%BB&postname=%E4%B8%AD%E9%9C%B2%E9%A6%96%E8%84%B3%E4%BC%9A%E8%AB%87%E3%81%A7%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%B3%E6%B0%8F%E3%81%8C%E3%80%8C%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E3%81%AF%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E9%A0%98%E5%9C%9F%E3%81%AE%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E5%88%86%E3%81%AE%E4%B8%80%E9%83%A8%E3%80%8D%E3%81%A8%E7%99%BA%E8%A8%80%E3%80%81%E5%A4%96%E4%BA%A4%E9%83%A8%E3%81%8C%E5%8F%8D%E8%AB%96

 ロシアのプーチン大統領が中国の指導者、習近平氏との会談の中で、「台湾は中国の領土の不可分の一部」と述べたことに対し、外交部(日本の外務省に相当)が19日、反論のコメントを発表した。以下、その内容要約。                ★  ★  ★  ★  ★  ロシアのプーチン大統領は18日、中国共産党による権威主義政権の指導者、習近平氏と北京で会談した際、「世界に中国は一つしか存在しない。台湾は中国の領土における不可分の一部である。ロシアは揺らぐことなく『一つの中国政策』を実行し、中国が国家主権と領土の一体性を守ることを固く支持する」と述べた。外交部はこれらでたらめな言論に対して厳正に反論すると共に、中国共産党による権威主義政権が我が国の主権を繰り返し貶めていること、ならびに中国共産党による権威主義政権におもねるロシアの立場を厳しく非難する。

 外交部は、中華民国台湾と中華人民共和国は互いに隷属せず、中共政権は一日たりとも台湾を統治する権利を持ったことが無いと改めて言明する。台湾は民主主義体制を積極的に守り、人権と法の支配を尊重する現代の民主主義国である。一方、中国共産党による専制政権は長年にわたって人権を迫害し、ほしいままに拡張して隣国をいじめている。中国共産党政権による、台湾の主権と地位を捻じ曲げるいかなる言論も世界が公に認める両岸の現状を変えることはできない。

 外交部は、台湾人民が民主的な選挙で選んだ政権のみが台湾を代表出来ること、そして中華民国台湾と中華人民共和国が互いに隷属していないことは国際社会が長期にわたって公認している現状であることを重ねて主張する。中国共産党による権威主義政権はこの現状と事実を認め、尊重すべきである。中国とロシアの権威拡張主義が合流し、民主・自由・法の支配・人権などの基本的価値を脅かしている。また、それは世界の安全保障と平和、安定、及びルールに基づく国際秩序に対する深刻な脅威となっている。

 台湾は民主主義を守る陣営の最前線であり、台湾の人々と政府は一致団結し、共産中国の台湾に対する「文攻武嚇」(言論による攻撃と武力による威圧を並行して行うこと)を共同で防いでいく。同時に民主主義陣営の国々との協力を強化し、権威主義の拡張を抑止することで台湾海峡の平和と安全を守っていく。そして、インド太平洋地域の自由と開放性、ならびに全世界の安定と繁栄を維持していく。

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