国家元首を大統領とするチェコ共和国において、1月28日に行われた大統領選の決選投票において、元北大西洋条約機構(NATO)で軍事委員長をつとめ、ウクライナへの積極支援を主張してきたペトル・パベル氏が当選した。任期は5年で3選は禁止されている。
チェコでは首相が政策を主導し、大統領の権限は限定的だと言われる。2013年以降、大統領はミロシュ・ゼマン氏が務めてきたが中国よりの姿勢を示してきた。そのため、台湾の民主主義支援を打ち出して中国に厳しい立場をとってきたフィアラ政権とは外交方針が異なり「パベル氏はフィアラ首相の与党連合の支持を受けており、外交で足並みがそろう見通しとなった」と産経新聞は報じている。
本誌で何度か伝えたように、ヨーロッパ各国が台湾との関係を強化し、中国と距離を置くようになったきっかけは、チェコの首都プラハ市と台北市が締結した友好都市協定だった。
前プラハ市長が北京市と結んだ友好都市協定に「台湾とチベットの独立に反対する」という文言が含まれており、自治体同士の協定に国家間のテーマはそぐわないとして異を唱えたプラハ市のズデニェク・フジブ市長は、北京市側と交渉するも折り合わなかったため協定は無効となった。そこで、締結先を留学経験もあった台湾の台北市とし、2020年1月13日に当時の柯文哲・台北市長と姉妹都市協定を締結したのだった。
その後、この年の8月30日にはチェコ共和国のミロシュ・ビストルチル上院議長やフジブ市長など代表団90人が訪台して交流を深めていた。
その後、翌年2月には、ヨーロッパでは初めてオランダ議会が中国によるウイグル族弾圧を「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定する動議を可決、5月にはリトアニア議会も同様の決議案を可決し、中国中東欧首脳会議(17+1)からの離脱宣言をするなど、ヨーロッパでは中国批判が高まり、中国と距離を置く国々が増えていった。
その一方、EUが台湾との貿易・投資面の関係強化を明記の「インド太平洋戦略」を発表するなど、台湾との関係を強化する動きが顕著に見られるようになっていく。
この動きがついにチェコの大統領選にも波及した。
さらに、この動きはイギリスにも見られる。昨年11月、リシ・スナク首相は外交方針を表明し、中国を「敵対勢力」と表現し、英中関係の黄金時代は終わったと述べた。
ヨーロッパの脱中国化にますます拍車がかかり、台湾との関係強化の動きは強まるばかりのようだ。
—————————————————————————————–チェコ大統領に元NATO軍事委員長 脱「親中国」鮮明に【産経新聞:2023年1月29日】https://www.sankei.com/article/20230129-IYQUWIQMINNWRD4YHMPTFER6GY/
【パリ=三井美奈】東欧チェコで28日、大統領選の決選投票が開票され、元北大西洋条約機構(NATO)の元軍事委員長、ペトル・パベル氏が当選を決めた。
ゼマン現大統領が10年間続けた中国への接近外交を転換するとみられている。
決選投票は、パベル氏とバビシュ前首相の争いとなり、パベル氏は約58%を得票した。パベル氏はNATOや欧州連合(EU)の結束を強調し、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの積極支援を主張。バビシュ氏は、紛争の拡大による経済悪化を警告してきた。
チェコでは2021年、バビシュ氏の後継者としてフィアラ首相が就任。台湾の民主主義支援を打ち出して中国に厳しい立場をとり、ゼマン大統領と外交方針が分裂していた。次期大統領となるパベル氏はフィアラ首相の与党連合の支持を受けており、外交で足並みがそろう見通しとなった。NATO軍事委員長は、米欧の加盟30カ国で構成する軍事機構のトップ。
ゼマン大統領は13年の就任以来、中国からの投資誘致を進め、習近平国家主席との関係作りにも熱心だった。中国が15年、抗日戦勝70年記念の軍事パレードを行った際には、EU首脳として唯一列席。20年にチェコ上院議長が台湾を訪問すると、「子供じみた挑発行為」と批判した。
チェコ大統領選の第1回投票は13、14日に実施。上位2人が27、28日の決戦投票に進んだ。
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