来年1月14日に実施される台湾の総統選挙では何が争点となるのか

台湾では4月19日に次の総統選挙と立法委員(国会議員に相当)選挙の同日実施が決ま
り、来年1月14日に行われることになった。

 27日には野党である民進党内で行われた総統選挙候補者の世論調査が発表され、蔡英文
主席がトップとなり初の女性候補となることが確定した。

 この世論調査は、世論調査専門会社5社が25日から2日間にわたって電話で行い、3000人
から有効回答を得た。その集計結果によると、現主席の蔡英文氏が42.5%で、同じく総統
選候補者として名乗りを上げていた蘇貞昌・元行政院長(41.15%)と許信良・元民進党主
席(12.21%)の2人を下し、民進党を代表して立候補することが確定した。

 一方、与党である中国国民党の中央常務委員会も27日に主席を兼務する馬英九総統を公
認候補とする案を承認し、これにより蔡英文氏と馬英九氏の一騎打ちとなることが決まっ
た。両候補の名前にいずれも「英」の文字があることから、台湾メディアが「双英対決」
と名付けた総統選挙が実質的にスタートした。

 その直後に行われたマスメディアの世論調査によると、「明日投票ならどちらを選ぶ」
との質問では、蔡英文氏と馬英九氏の支持率は37%:36%(聯合報)、33.4%:33%(中
国時報)と、蔡英文氏がわずかに上回っている。支持率低迷にあえぐ馬英九氏の苦戦を予
想する報道もある。

 台湾の総統選は、実は日本にもアメリカにも影響が大きい。今の国民党政権のように経
済で中国に深く傾斜すると政治も追随せざるを得ず、台湾が実質的に中国と一体化してそ
の影響下に入ってしまうと、米国をも凌駕しようと目論んでいる中国にとって有利なプレ
ゼンスとなり、これが東アジアのみならず世界的な規模での政治や経済、特に軍事のバラ
ンスを崩しかねないからだ。

 李登輝元総統は「台湾が直面する問題の解決は、2012年の総統選挙にかかっている」と
指摘しているが、では、総統選挙ではなにが争点になるのか。やはりそれは、中国との関
係に尽きるだろう。台湾はこのまま中国傾斜が続くのか、あるいは台湾の主体性を取り戻
すのか──。ましてや今回の総統選挙は立法委員選挙と同時実施で、まさに台湾の存亡を
決するといっても過言ではない、文字通り天下分け目の選挙となるだろう。

 東京新聞・中日新聞の元論説委員で台北支局長もつとめた台北在住の迫田勝敏(さこだ・
かつとし)氏がいち早く総統選の争点について指摘している。下記にご紹介したい。


台湾総統選 中国との関係争点
【東京新聞:2011年4月28日】

【台北=迫田勝敏】台湾総統選では、常に中国との関係が一つの争点だ。ただ「統一か、
独立か」を明示して争ったかつてと違い、今は中国との距離をどうするかとの議論が主流。
摩擦回避の思惑も絡み、表向きはソフトにみえる主張、施策に力点が置かれている。

 馬総統は2008年、「経済をよくする」と訴え総統に当選、中国との関係緊密化を進め経
済を活性化してきた。中国へ直行便を飛ばして中国人観光客を受け入れ、昨年夏には、台
湾・中国の共同市場づくりを目指す経済協力枠組み協定(ECFA)を締結。中国を国名
で呼ばず「大陸と言おう」と主張し、中国との一体化を図っているようにもみえる。

 この中国傾斜に対し、蔡主席は「台湾の主権を守れ」と懸念を表明、一定の距離を置く
立場だ。蔡主席は、李登輝元総統が1999年に提起した、台湾と中国を「特殊な国と国の関
係」とする「二国論」の起草者ともいわれる。台湾意識をしっかり持った上での中国との
交流が持論だ。

 昨年の東京国際映画祭では、中国が台湾代表団に対し国名に「中国」を入れるよう要求、
騒ぎになった。台湾の「主権」をめぐるトラブルが相次いで台湾市民の反発も大きい。中
国とどう付き合うかは、台湾の存亡に関わる大問題になっている。



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