選の公認候補者の洪秀柱氏を候補者から降ろそうという内紛が続いている。馬英九総統も洪氏に候
補を辞退するよう求めたそうだ。
しかし、洪氏は中国国民党が正式な手続きを踏んで公認した総統選挙の候補者だ。正統性は洪氏
にある。いくら人気がないと言っても、ここまで強引に候補者を引きずり降ろそうとするやり方に
は、裁判沙汰になった馬氏の王金平降しがそうだったように、国民党らしさがよく出ている。これ
が中国国民党の体質なのだろう。
だからこそ、国民党主席も総統もつとめた李登輝元総統は心配する。総統選挙からその就任式ま
での「4ヵ月の空白」のことだ。台湾は、この「魔の空白」期間を初めて迎える。
2012年のときも総統選と立法委員選のダブル選挙で、総統就任式まで4ヵ月の空白があったもの
の、同じ政権与党だった。しかし、来年は政権交代の可能性が高い。
だから、李元総統は、この「魔の空白」期に権力の中枢にいる総統の馬氏が国家の利益を損なう
ような行動に出かねないと心配する。
李元総統はこれまでも、このW選挙で国民党が大敗すると予測し、馬氏が台湾と中国の「和平協
商」(平和条約)の締結にとどまらず「大陸の人民解放軍に台湾を攻撃させることすらあり得る」
と指摘し、また中国国民党は「台湾国民党」への転換が必要で、選挙後は「王金平・立法院長に党
を率いてほしい」とまで表明している。
一昨日、また「魔の空白」に対応する新たな処方箋を提示した。立法委員選挙が大事な所以だ。
下記にそれを伝える「中央通信社」の記事をご紹介したい。
李登輝氏、選挙後の馬総統の動きを懸念 「台湾の主体性傷つける恐れ」
【中央通信社:2015年10月8日】
(台北 8日 中央社)李登輝元総統は7日、台湾の主権意識と国際情勢をテーマにしたイベントに
出席し、来年1月の総統選挙から新総統が就任する同5月までの4カ月間に、馬英九総統が国家の利
益を損なうような行動に出かねないと不安を漏らした。
李氏は、野党・民進党の総統候補、蔡英文主席に対し、中国大陸が「92年コンセンサス(九二共
識)」を認めさせようと、選挙前に米国などを通じて圧力をかけてくる可能性も指摘した。
馬総統と蔡氏をめぐる動きについて「台湾の主体性を傷つけることもあり得る」と強調した李
氏。4カ月に及ぶ選挙後の“空白期間”を無事に乗り切るには、総統選と同日に行われる立法委員
(国会議員)選挙で、台湾の主体性を重視する「本土派」政党に投票、来年2月に始まる次の国会
で過半数を獲得させ、馬政権を監視させるしかないと述べた。
また、李氏は人々のアイデンティティーについて、各種調査の結果は、台湾人だと自認する人や
台湾人であることを否定しない人が増えていることを示しており、これは台湾社会が民主主義の中
で融合しつつある証だと語った。
国立政治大学の6月の調査によれば、自分を台湾人と思う人は59%で、1992年(17.6%)の3倍以
上に増加している。
【 92年コンセンサス 】 1992年に台湾と中国大陸が窓口機関を通じ確認した両岸対話の原則。“1
つの中国”を前提としているがその解釈には触れておらず、国民党は「1つの中国=中華民国」と
の立場を示している。民進党は同コンセンサスを認めていない。
(葉素萍/編集:杉野浩司)