李登輝前総統と浅田次郎氏の文藝春秋対談

台湾独自の道徳体系の樹立に向けて

 10月8日付の本会ホームページで、「10月10日発売の文藝春秋11月号誌上で李登
輝前総統と人気作家の浅田次郎氏が『武士道と愛国心について』をテーマに対談
を行っています。是非ご一読下さい」と紹介した。やはり「もう一度、ご一読下
さい」とおすすめしたい。
 この対談はタイトルのように、実践的道徳体系としての「武士道」と国家意識
に光をあてている。冒頭、新渡戸稲造の『武士道』を小さいときから繰り返し読
んできたという直木賞作家の浅田氏が新渡戸の話題から入って、日本では忘れ去
られた八田與一、児玉源太郎、明石元二郎、後藤新平、原敬などの台湾に関係し
た明治人のパワフルさに及び、李前総統が「こういった明治人の一生を映画にし
たらどうだろうか」と提案している。
 また、李前総統が日本の小学生から贈られた作文について触れ、「お金を稼い
でお母さんに楽をさせてあげたいとか、それ自体は非常に可愛いし、無理のない
考え方だけど、みんな自分のことばかりで、社会や国家との間で何かしたいとい
うのがゼロというのは、少しさびしい気がするな」という感想を引き継いで、浅
田氏が「愛国心という言葉が日本では完全に死語になっています。私にしても、
愛国とか愛国心という言葉を使うとき、それがかつての軍国主義を連想させるだ
けのような気がして、何となく、パトリオティズムとかナショナリズムと言い換
えたりしている。でも、それはおかしいことだという自覚もあるのです」と、自
分のことも正直に答えている。
 特に、李前総統が「日本には『武士道』があるが、我々台湾には、それに相当
するものがない。台湾独自の道徳体系をいかにして作るかというのが、我々の大
きな課題だ」と、台湾の現実を吐露し、独自の道徳体系樹立へ向けて抱負を語る
ところは圧巻である。このようなことを話の自然な流れの中で吐露させる浅田氏
の聞き手巧者ぶりもまた見事だ。ぜひご一読をすすめる所以である。
                               (編集部)



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