李登輝前総統が来春訪日し「奥の細道」散策の希望を表明!

首都ワシントン訪問の実現で東京訪問への期待感も改めて開示

 本日の読売新聞と産経新聞が李登輝前総統の来春訪日について報道している。他紙に
は載っていないので、両紙による独占インタビューだったようだ。この報道によれば、
李登輝前総統は来年4月の桜の時期に合わせ、ご家族とともに念願の「奥の細道」散策を
表明されたと伝えている。
 昨年は暮も押し詰まった12月27日にご家族と共に名古屋空港に降り立ち、名古屋、金
沢、京都と巡り、1月2日に関空から帰国されたことは、未だ記憶に新しい。
 この来日が報道された12月16日に本会の小田村四郎会長は早速「李登輝前台湾総統来
日についての歓迎声明と政府への要望」を発表し、(1)ビザ発給方針の貫徹、(2)「政治
的な言動をしない」などの条件を付けない、(3)テロ行為の未然防止、(4)数次査証(マ
ルチ・ビザ)の発給、という要望を小泉首相や町村外相に呈した。
 しかし、問題は残った。そこで帰国後、本会は機関誌の『日台共栄』2月号で次のよ
うな声明を発表している。
「確かに私どもの要望どおりビザは滞りなく発給され、身辺警護も準公人並に行われた。
だが日本政府は、記者会見しない、講演しない、政治家と会わない、という三つの条件
を付けたそうで、これは真に遺憾なことといわなければならない。また、数次査証(マ
ルチ・ビザ)はおろか15日間の短期ビザ発給だったことも、今後に大きな問題を残した
といわざるを得ない」
 今回の李登輝前総統の発言からすれば、「東京に入らない」ことも日本政府が付けて
いる条件のようだ。
 だが、李登輝前総統ご自身が「リタイアした総統は普通のピープルじゃないか」と述
べられているように、2000年に元首を退いてからすでに5年も経ているのである。確かに
政治的影響力は否定できないものの、それは民主化・本土化の実現過程にある台湾の現
状から導き出される必然であり、李登輝前総統に対する台湾の人々の期待を現すもので
あって、訪日はけっして日本の国益にマイナスをもたらすものではない。
 安全保障面から考えた場合、日本にとって台湾は要衝の地であることは他言を要しな
いところなのであるから、政府はむしろ李登輝前総統の訪日を、台湾の重要性を知らし
める格好の機会として積極的に活用すべきではないかと提案したい。台湾と中国の違い
をこれほど鮮やかに体現している人物はそうそういない。アメリカが実現したように、
国会で演説し、講演でも記者会見でもどしどし開いて、日本人の迷妄を打ち破ってもら
えばいいのである。この役目を果たせるのは李登輝前総統以外にいないといってよい。
 そこで、本会としては、そのような条件を撤廃するよう改めて政府に要望し、日本と
台湾の関係性の大事を知らしめる好機となすことを提案していきたいと考えている。皆
さまのご賛同をいただければ幸いである。
 下記に、本日の読売新聞と産経新聞の記事を読んでいない読者のために掲載します。
               (日本李登輝友の会常務理事・事務局長 柚原正敬)


【11月2日付「読売新聞」朝刊】

李・前台湾総統が来春訪日の意向「奥の細道訪ねたい」

【台北=石井利尚】台湾の李登輝・前総統(82)は1日、台北市内で読売新聞などと
会見し、来年4月に東北地方など松尾芭蕉の「奥の細道」ゆかりの地を家族で訪問する
意向であることを明らかにした。
 李氏は「4月ごろは桜が咲いているし、暖かくなる。必ず行きたい」と述べた。
中国政府の強い反対は必至だが、李氏は「(台湾人の日本観光は)ノービザの時代にな
った。リタイアした総統は普通のピープルじゃないか」と日本語で語り、日本政府に入
国を認めるよう期待を表明した。李氏は、10月にワシントン訪問が実現したことを挙
げ、東京訪問への期待感も改めて示した。


【11月2日付「産経新聞」】

李登輝氏、4月訪日に意欲 桜の季節「奥の細道」に/東京へも

【台北=河崎真澄】台湾の前総統である李登輝氏(82)は一日、台北市内で産経新聞
などとの会見に応じ、第三次小泉改造内閣の発足について、「党内の派閥政治が終焉(
しゅうえん)し国益中心の組閣となった」と評価した。麻生太郎氏の外相起用にも触れ、
「強い外相になるだろう」と述べ、日本の独自外交の展開に期待感を表明した。自身の
再訪日については、「来年四月に『奥の細道』を必ず歩きたい」と話した。
 李氏は先の衆院選での自民党圧勝に関し、「国益を優先するよう人民が求め(中国な
どへの)土下座外交への反感があった」と分析。その上で組閣について「指導者が国全
体の立場を考えた。日本は民主政治が伸びて国が強くなる」とみていることを明らかに
した。
 また、「憲法改正を推進して自衛隊など遠慮がましい言葉をやめて国の軍隊とすべき
だ」と、第三次小泉改造内閣への期待を強調、日米と台湾による東アジアの安全保障の
枠組みにも言及した。
 李氏は、麻生、中川昭一、小池百合子、安倍晋三、額賀福志郎、与謝野馨という入閣
組の六氏に祝電を送ったことも明らかにした。いずれも李氏とは旧知の仲という。
 五年前の総統退任後、初の家族旅行として昨年暮れから今年初めまで訪日している李
氏は、「家内に来年の四月には(念願の)『奥の細道』を必ず歩こうと話した」と明か
し、サクラの開花時期に合わせて東北地方を訪れる希望を表明した。
 訪日目的として、「夕焼け小焼けの童謡にあるような人間と自然が溶け合う日本人の
持つ情緒的ないい面は他国にないことであり、(李氏が『奥の細道』で芭蕉について語
ることなどで)日本人に改めて良さを知ってもらいたい」と話した。
 また、先月の訪米で首都ワシントンで連邦上下両院議員や記者を前に演説した実績を
踏まえ、「(首都ワシントンに行けたのに)東京に行けないことはない」とし、一九八
八年の総統就任後、初めてとなる東京訪問に改めて意欲を示した。
 日本政府は九月、台湾旅券保持の旅行者への九十日間の査証免除措置を恒久化したも
のの、李氏の入国については、日台間の事前協議の対象としている。李氏訪日には中国
が強硬に反発しており、李氏は、小泉政権に強い外交姿勢で独自判断するよう求めた形
だ。