李登輝前総統が「Voice」10月号にリーダー論を特別寄稿

「指導者の力量−リーダーとしての決断力と現場主義」

 李登輝前総統が9月10日発売の「Voice」10月号(PHP研究所)に、「指導者の力量
−リーダーとしての決断力と現場主義」と題して特別寄稿されている。

 冒頭、先般5月30日からの訪日について「一生の思い出になるだろう」と感懐を述べつ
つ、後藤新平賞受賞の意義や「奥の細道」探訪で得られた日本文化観について記し、な
ぜ安倍首相が総理を辞任したのかについても、元首経験者としての体験と、これまでも
説いてきたリーダー論的見地から「人事選考」の要諦について述べられている。

 もちろん、日本人にとっても関心の深い来年の総統選挙について「台湾の命運を左右
する」と断言し、馬英九と謝長廷両候補の問題点を指摘しつつ、「台湾がどのようなシ
ナリオをもってすれば、対立的な政治状況を脱し、一つの安定的な政治状況をつくり出
せるか」について、独自の見解を披露されている。

 そのなかで、陳水扁政権が推進する国連加盟については「時期尚早」だと非難し、そ
の前に為すべきことがあるとし、国連加盟への道筋を示されているのは説得力がある。

 そして最後に、後藤新平の事績を引き、また自らの治世を顧みつつ、リーダーの心持
ちとは何を述べ、「後藤新平のような指導者が二、三人、日本と台湾に出現することを
求めたい」と締めくくられている。

 驚いたのは「だから、いつ死んでもかまわない」というくだりである。この一言は重
い。できそうでできないのが、このような対処だ。周到な李登輝前総統ならではの喩え
と解した。ご一読を奨めたい。             (本誌編集長 柚原正敬)

■Voice10月号 定価:620円
 http://www.php.co.jp/magazine/detail.php?code=12358



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