6月30日、台湾の最高法院検察署(最高検)が李登輝元総統と台湾総合研究院創設者の劉
泰英氏を国家機密費約780万ドル(約6億3千万円)を横領したとして、公有財物横領の罪で
起訴した件で、本誌は黄昭堂・台湾独立建国聯盟主席からの「李登輝先生が今度の総統選
挙について『棄馬保台』と明言されたので、国民党が司法を利用して仕掛けて来たのだろ
う。心配する必要はない」というコメントを紹介した(6月30日発行、第1349号)。
翌日、李登輝元総統が台湾団結聯盟(黄昆輝主席)の募金パーティーに蔡英文・民進党
主席とともに出席するとの情報を得、台北事務所の早川友久所長が出席。
このパーティーで李元総統は予想どおり起訴について触れ、パーティー後半、報道陣に
は挨拶文とは別にその発言がプレスリリース(中文)として配布された。
発言の要旨は、写真とともにすでにホームページに紹介しているが、ここにプレスリリ
ース全文の日本語訳とともにご紹介したい(翻訳・本誌編集部)。
◆ 日本李登輝友の会ホームページ
http://www.ritouki.jp/
李登輝元総統健在!!
「私はもう90歳。死さえ怖くない。どんな圧力も李登輝を恐れさせることは出来ない!」
李登輝元総統は7月1日夜、台北市内で開かれた台湾団結聯盟の募金パーティーに予定通
り出席した。パーティーには支持者およそ1,000人が出席、台湾や日本のメディアも集結し
た。
李登輝総統は挨拶で、用意された原稿を読み上げた後、前日の起訴について言及。
「総統在任時から『公私の区別』は厳格にしてきた。また、私は司法の独立を守るために
努力してきた。なぜなら、公平正義の司法を確立することが、民主体制の長期発展を維持
することになるからだ。
昨日、検察が発表した内容は全くの事実無根。本音を言えば、いちいち反論することさ
えしたくない。というのも、起訴の内容は検察官が自分の考えで作文したに過ぎないから
だ。
私はもはや90歳。死ぬことさえ怖くない。それゆえ、どんな圧力も李登輝を恐れさせる
ことはできない。台湾にはまだまだ他にたくさんの李登輝の分身がいる。私は引き続き、
彼らとともに、台湾民主の深化を目指していく」などと述べ、会場から喝采を浴びた。
また、パーティーには民進党の蔡英文主席も出席。李登輝元総統の後を受けて挨拶した
蔡主席も、最後に李氏の起訴に触れ、「民進党としても李氏の起訴には政治的な目的があ
るものと疑いざるを得ない」と発言。選挙戦に向け、民進党と台聯という本土派政党が協
力して戦っていくことを呼びかけた。
メインテーブルには、李登輝元総統の左に蔡英文主席、右に黄昭堂・台湾独立建国聯盟
主席が座り、黄昆輝・台湾団結聯盟主席、黄天麟・元国策顧問、羅福全・元駐日代表ら錚々
たる顔ぶれが揃った。
李登輝元総統の起訴に関する発言(2011年7月1日、台湾団結聯盟の募金パーティー)
最後に少し付け加えさせていただきます。
昨日「機密費」の事件により特別偵察組が私を起訴しました。まず、皆さんが私を支持
し、関心を持っていただいたことに感謝します。私はずっと司法を尊重しています。総統
在任中、司法の独立を維持するよう努力してきました。また、公私の区別も厳格に区別し
てきました。というのも、公平かつ正義の司法を確立すれば、すなわち民主体制の長期発
展の維持につながるからです。これこそ、私が厳密に堅持してきた立場と態度です。
案件の部分につき、多くの人々が私の考えを尋ねてきました。ただ、むしろ私は皆さん
に特別偵察組が発表したプレスリリースをお読みになることをお勧めします。そうすれば、
私の部分に関しいかなる証拠もないことが分かるでしょう。
昨日の記者会見には我が事務所の王(燕軍)主任が厳粛な表情で臨みましたが、それは
私の指示によるものです。王主任は私のことをよく分かっており、彼の発言はすなわち私
の発言です。発言の内容は、私と王主任と顧弁護士で決めたことです。
案件の部分につき、実は私は多くのことを語りたくありません。なぜなら、大部分が検
察官の作文に過ぎないからです。
ただ、強調したいのは一点だけです。総統として、国家と人民のことを思うのは当然の
ことです。そして、国家人民にとって有利な政策を遂行するのが私の役割です。ただし、
どのように執行するか、詳細部分について私はたずねたことがありません。今後、司法へ
の対応については弁護士に任せてあります。白い布を黒く染めることはできません。人の
世に正義がなくなったとしても、私は神の存在を信じます。
私は公職に就いて以来、公私の区別をつけてきました。現在のようにありもしない疑惑
に直面した場合、自分の潔白を証明するために私は力を尽くします。李登輝は誰にも打ち
負かされることはありません。台湾の主体性や民主主義の発展を維持するため、私は言う
べきことを言い続けていきます。それが私のなすべきことなのです。
最後に、私はすでに90歳です。もはや死も恐れていません。ですから、どんなものも私
を追い込む手段にはなりえません。台湾にはまだまだ多くの李登輝がいます。台湾の民主
を強化するために、私はもう少し頑張ります。皆さんと、子孫の幸福な未来のため、自分
たちの国家のため、努力を続けてまいります。
皆さまありがとうございます。皆さまのご健勝を心からお祈りします。
(翻訳:本誌編集部)