李登輝元総統が「文藝春秋」5月号に「台湾は日本の恩義を忘れない」を寄稿

川島裕侍従長の「天皇皇后両陛下の祈り」が掲載されている「文藝春秋」5月号に、李登
輝元総統が「台湾は日本の恩義を忘れない」と題して寄稿されている。

 東日本大震災に関して李元総統は週刊「ポスト」や月刊「WiLL」など、日本のいろい
ろな媒体に寄稿され、日本を激励されているが、この「文藝春秋」では、3月13日に中国の
救援隊より一足早く成田空港に到着しながら2日間も「緊急通行証」が出されずに足止めを
食った台湾のNGO救援隊(35人)についての詳細がつづられている。

 李元総統は「残念な出来事」としているが、その筆致には日本政府の対応の鈍さにいら
だつ怒りを何とか静めようとする精一杯の自制心がはたらいていることは、読むものをし
て手に取るように伝わってくる。よほど腹に据えかねる対応だったのだ。

 すでに李元総統は、このような台湾への非道ともいえる日本政府がとった措置の背景に
中国の存在を挙げ、また馬英九政権による妨害もあったことを明らかにし、「こうした事
態を生みだした原因は、馬英九総統が台湾を地区だと見なしたことの後遺症である」(4月
4日付「自由時報」)と指摘しているが、ここではそこまで踏み込んで書いていない。

 それでも李元総統は「私が台湾大地震で救済を陣頭指揮した経験から、日本政府の危機
管理やリーダーシップ、今後の予想される問題点などについて具体的なアドバイスや感想
を述べたい」として、縷々、具体策を展開されている。

 そして最後に「今回の大震災で日本の復興を危ぶむ声もあるが、日本は再生するに決ま
っているではないか」と喝破されている。だが、次のように付け加えてだ。「ただし、そ
れには条件がある。それは、国や国民を第一に思う、いい指導者に恵まれるかどうかにか
かっている」。

 菅直人首相や政府首脳は、この李登輝元総統の論考を読むだろうか。読んで欲しいと思
うものの、すでに手遅れの感は色濃く漂っている。読もうと思ったときにはもう下野して
いるかもしれない。

 ちなみに、李元総統は4月3日夜、台北市内の華泰プリンスホテルに日本で救助活動を行
った台湾救助隊のメンバーを食事会に招き、感謝の意を表されている。

■ 「文藝春秋」5月特別号
  http://www.bunshun.co.jp/mag/bungeishunju/index.htm



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