台湾に感じたやすらぎ」を寄稿されているという。『台湾紀行』が台湾や中国に与えた影響
などについて6ページにわたってつづられているそうだ。
周知のように、李元総統は司馬遼太郎のこの名著『台湾紀行』(『街道をゆく』40)で、司
馬と「場所の悲哀」と題した対談をしている。「司馬さんと話をするときどんなテーマがいい
かなと家内に話したら、「台湾人に生まれた悲哀」といいました。それから二人で『旧約聖
書』の「出エジプト記」の話をしたんです」という発言は、あまりにも有名だ。
確かに『台湾紀行』が与えた影響ははかり知れない。編集子もその恩恵にあずかった一人
だ。1990年台半ばころは台湾に関するいい文献がなく、伊藤潔著『台湾』(中公新書、1993
年)くらいだったように思う。
「週刊朝日」連載時(1993年7月2日号〜1994年3月25日号、対談は1994年5月6・ 13日号)に
は読んでいなかったが、平成6(1994)年秋に単行本が出た時には遅ればせながら読んで「初め
て台湾に触れた」という思いを抱いた。それから何度この本を読んだことだろう。台湾を知る
「バイブル」としていた日本人は少なくない。
折しも今年は李元総統が司馬遼太郎と対談をしてから満20年。現在、『台湾紀行』をどのよ
うに見ているのか、ぜひ手記を読んでみたい。
ちなみに、司馬遼太郎を台湾で案内されたのは、ご存じのように「老台北」こと蔡焜燦(さ
い・こんさん)氏だ。「老台北」も司馬氏の命名だった。蔡先生は今もご健在だ。「台湾歌
壇」の代表をつとめ、本会の台湾側カウンターパートである「李登輝民主協会」理事長として
も日本との交流に尽力されている。
本会が2月27日〜3月2日に予定している「2013台湾・お花見ツアー」では、全行程をご一緒い
ただけるという。まさか蔡焜燦先生とこのような関係になろうとは夢にも思わなかった。
20年の歳月を振り返りながら、台湾では「春節」(旧暦の元旦)の日に発売される李登輝元
総統の手記を読んでみよう。