昨夜、台湾版新幹線の開業は数ヶ月延期と台湾高速鉄路会社が発表

早期開業にこだわらず、「安全性」を最優先して今後とも取り組んでもらいたい

 昨日の本誌で本会の片木裕一理事に台湾高速鉄路(台湾版新幹線)の「芳しくない」現
況とその原因についての論考を掲載しましたが、昨夜、運営母体の台湾高速鉄路会社が開
業を数ヶ月延期する旨を発表し、今朝のNHKニュースがそのことをライス米国務長官の
訪ロニュースの次に伝えています。下記にご紹介します。

 この開業スケジュールについては、台湾の日刊紙「中国時報」が19日、台湾高速鉄道会
社の欧晋徳・執行長の話に基づいて「来月中旬の開業」すると報じたばかりであり、また
、中央銀行も19日、その開業を祝うための記念銀貨のデザインを発表しています。

 なんともちぐはぐな感が拭えない台湾高速鉄路会社の対応ぶりですが、フランス・ドイ
ツの顧問団にも「いい顔」をし、日本にも「いい顔」をして、「ベストミックス」だと強
弁していたら、この結末です。「虻蜂取らず」とか「二兎を追うものは一兎も得ず」とい
うことわざが自然と思い起こされる、台湾高速鉄路会社のちぐはぐドタバタぶりです。

 しかし、片木理事が書いていたように、日本の新幹線思想の根幹は「安全性」にありま
す。事故を起こさないことを第一に考えたのが新幹線です。それゆえ開業以来、41年間も
無事故できています。台湾高速鉄路は、資金繰りがたいへんなことは十分にわかりますが
、国家的事業なのですから、早期開業にこだわらず、「安全性」を最優先して今後とも取
り組んでもらいたいものです。

 なお、昨日の片木理事の論考中、「台湾新幹線には日本の新幹線で使用されているAT
S」とありましたが、読者の方からATSはATCの間違いとの指摘がありました。
 確かにATS(自動列車停止装置 automatic train stop)ではなくATC(自動列車
制御装置 automatic train control)の誤りでしたのでお詫びして訂正します。ちなみに
、片木理事の名誉のために、機関誌『日台共栄』9月号ではATCと書いていることを申
し添えます。

 この読者の方からATSとATCの違いを指摘した投稿もご参考になるのではないかと
思い、NHKニュースの次に掲載します。

                     メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬


台湾高速鉄道、再び開業延期
【10月22日 NHKニュース】

 海外で初めて、日本の新幹線の技術を採用した台湾の高速鉄道は、当初の計画から1年
先延ばしして今月末としていた開業の予定を、運転士の育成の遅れなどから、再び数か月
間延期することになりました。

 台湾の高速鉄道は、台北と高雄の間、およそ345キロを在来線の半分に満たない1時
間半で結ぶもので、海外で初めて日本の新幹線の技術が採用されました。運営主体の台湾
高速鉄道会社は、今月末の開業に向けて準備を進めてきましたが、運転士やスタッフの育
成が大幅に遅れていることなどから、開業の条件となっている国際的な第三者機関の認証
が得られない状態となっています。これについて台湾高速鉄道会社は、21日夜、認証に
必要なデータを集めるための走行試験に、少なくともさらに1週間かかることを明らかに
し、認証を得たあとに必要な手続きも含めると、開業は再び数か月間延期されることが確
実となりました。

 台湾高速鉄道は、去年も工事の遅れなどを理由に、開業予定を1年延ばしており、開業
の準備が順調に進まない背景には、フランスやドイツの技術を部分的に取り入れることに
台湾側がこだわった結果、日本側から十分な支援が得られなくなったことがあると指摘さ
れています。


【読者投稿】ATSはATCの間違い [荒木純夫]

 「鉄ちゃん」の片木裕一氏がこのような間違いをするとは信じられないので,単純な書
き間違いでしょうが,ATSとあるのはATCの間違いです。

 簡単に言えば、ATSは地上信号を使い、ATCは信号が車載されていて、地上に視認
用の信号機がありません。ちなみに、ATCは日本の新幹線のために開発されたものであ
り,信号を車載にしてしまうという発想は、日本で考案され実用化されたものです。

 私がいつも利用している東急東横線にもATCが搭載されていますが、例えば、祐天寺
から中目黒に向かう下り急勾配で、祐天寺を通過する特急や急行は場合によっては100キロ
で突っ込みますが、スピードが出すぎている場合ATCが作動して適切なスピードまで滑
らかに落とします。運転士はそれを承知していて目一杯突っ込み、ATCと協調しながら
ブレーキを調整して中目黒駅構内のカーブを60キロで通過するまでスピードを落とします。
乗客はATCが働いている事などわからないでしょう。それくらい、現在はATCによる
制御は進化していて,「基本的な運行はシステムに任せ、運転士にはさらなる安全確認な
どを求める」ということを、乗客が気がつかないレベルで高度に実現しています。初期の
ATCのように、ATCが働くとぎくしゃくするという事はありません。
 要するに、JRJR西日本のような事故は起きないという事です。

■ご指摘とともに詳しい解説をありがとうございました。



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