したが、昨日(12月20日)は旭日中綬章を受章した台湾大学歴史学部兼任教授の曹永和
(そう・えいわ)氏への勲記と勲章の伝達式が交流協会台北事務所で行われた。
この伝達式のことも鄭埌耀と同様、日本ではニュースとして伝わっていないような
ので、また中央通信社の記事をご紹介したい。
ちなみに、曹永和氏は日本における台湾研究の先駆者だった鈴木満男(すずき・みつ
お)山口大学教授と昵魂だった。鈴木氏は平成16(2004)年12月24日、惜しくも肺炎のた
め亡くなられているが、台湾・成功大学客員研究員などを歴任された政治人類学者だっ
た。本会設立の発起人でもあった。
台湾との関係は昭和40年代半ばからで、柳田國男門下生だった鈴木氏は、東大の学生時
代に葦津珍彦(あしづ・うづひこ)氏と巡り合ったことが台湾へ入ってゆくきっかけだっ
たという。
「日本を象徴する『教育勅語』と『芝山巌』」、「二・二八事件論」、「台湾史から戦
後日本を見なほす」などが収録された『「帝国の知」の喪失−戦後日本再考−東アジアの
現地から』(展転社、1999年)や『日本人は台湾で何をしたのか−知られざる台湾の近現
代史』(国書刊行会刊、2001)などは、曹永和氏との交流の中から生み出された本だ。曹
氏の叙勲を、天国の鈴木満男氏は心から喜んでいるに違いない。
台日学術交流の先駆け 曹永和台大教授に勲章伝達
【中央通信社:2012年12月20日】
http://japan.cna.com.tw/Detail.aspx?Type=Classify&NewsID=201212200006
(台北 20日 中央社)日本政府による今年秋の叙勲で旭日中綬章を受章した台湾大学歴
史学部の曹永和兼任教授(92、右)への伝達式が20日、交流協会台北事務所(=大使館)
であり、樽井澄夫代表(=大使、左)から勲記と勲章が伝達された。曹さんは半世紀以上
にわたり台日の学術交流に尽力してきた。
戦後の1947年に台湾大学の図書館で働き始めた曹さんは、複数の外国語や東アジア海洋
史、台湾史など幅広い分野の学問を独学で究めながら、日本統治時代から残る館内の膨大
な文献の分類・保存などで日本の研究者の活動を助け、また1999年に設立した基金会を通
し日本の若手研究者育成にも力を注いできた。
1965年には東京の東洋文庫ユネスコ東アジア文化研究センター(2003年に閉鎖)で研究
活動を行い、1984年には大卒の学歴を持たない立場で初めて、台湾中央研究院の研究員
に、1998年にはアカデミー会員となった。
曹さんはこの日、家族の支えを借りながら壇上に立ち、はっきりとした声で謝辞を読み
上げた。旧台北帝国大学(現台湾大学)の故・岩生成一元教授と、東洋文庫の故・榎一雄
元理事長から指導を受けることができたのは、人生において最も幸せなことだったと振り
返り、受勲の光栄は2人の日本の恩師のおかげだと感謝の言葉を述べた。
2002年にはオランダ王室からも勲章を授与された曹さんだが、基金会を運営する長男ら
によると、今回の叙勲の知らせにはことのほか興奮していたそうで、「元は日本人で日本
の先生に導いてもらった父にとって特別な喜びだったのだろう」と話している。