日本政府が台湾単独によるライチやマンゴーなどの検疫作業に同意

 台湾から日本へ輸出しているライチ、マンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツ、文旦(ぶんたん)などの生鮮果物は、ミカンコミバエなどの幼虫が中身を食い荒らし、果樹園などに広がりますと果樹園全体に甚大な被害を与えます。

 日本ではすでに1986年(昭和61年)に絶滅したそうですが、東南アジアや台湾にはまだ生息しています。そこで、日本の農水省は、このような害虫が輸入果物に卵を産みつけている恐れがあるため、必ず害虫の卵などを窒息死させる「燻蒸処理」を施し、日本の農薬基準を満たした果物のみ輸入するよう定めています。

 これまでは、台湾の農会などが日本から検疫官を招き、燻蒸処理と農薬基準についての検疫作業を行い、この検疫に合格しなければ日本への輸出できませんでした。

 しかし、コロナ禍により日本から検疫官を招くことが難しい状況になったため、台湾側が単独で検疫作業を行うことを日本政府に求めていたところ、昨年の夏季から台湾側の単独検疫作業ができるようになっています。今年も日本政府に確認したところ、このほど同意を得たそうです。

 実は、これまでマンゴーの日本向け輸出で、マンゴーがまだ輸出できる7月下旬にもかかわらず、本会が案内しているマンゴーの台湾側出荷元で使用していた燻蒸処理施設の検疫官が帰国し、検疫できなくなったために輸出がストップしてしまったことがありました。帰国した事情は分かりませんが、最後の追い込み時期でしたので台湾側も日本の輸入業者側も大変困ったことがありました。このときは、他の輸入業者に当たってなんとか事なきを得ましたが、輸入業者からいただいた困惑と怒りの交錯した電話の声は未だに忘れることができません。

 今後、台湾側が単独で検疫作業を行うことが定例化すれば、このような事態は避けられることになります。定例化するかどうかは詳らかではないものの、安定供給という面からは朗報です。台湾側の単独検疫に問題がなければ、ぜひ制度化して欲しいものです。

 日本側の同意を得た燻蒸処理施設は、台中市の豊原蒸熱処理場、台南市の玉井蒸熱処理場と楠西蒸熱処理場、高雄市の小港蒸熱処理場の4ヵ所だと「Taiwan Today」誌が伝えています。その記事を下記にご紹介します。

 なお、日本で輸入しているパイナップルは燻蒸処理を施す必要はないそうです。ただし、日本の農薬基準を満たしているかどうかの植物検疫は実施されています。

—————————————————————————————–台湾4か所の蒸熱処理場、単独検疫で対日輸出可能に【Taiwan Today:2021年5月21日】https://jp.taiwantoday.tw/list_photo.php

 行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)は、台湾中部・台中市の豊原蒸熱処理場、台湾南部・台南市の玉井蒸熱処理場、楠西蒸熱処理場、台湾南部・高雄市の小港蒸熱処理場の4か所が日本政府の同意を得て、日本に輸出するためのライチ、マンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツ(赤肉)、文旦(ザボン)など生鮮果実の検疫作業を行い、これらを日本に輸出することが可能になったと発表した。

 これまでは毎年、日本から派遣された検疫官が一定期間台湾に滞在し、日本に輸出するための果実の検疫作業を行っていた。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、各国が厳格な入国規制を実施する中、検疫官の派遣が困難になった。このため日本政府と韓国政府は昨年初めて、夏季に台湾から輸出される生鮮果実について、台湾側が単独で検疫作業を行うことに同意した。台湾は今年も同様に、日本政府に対して単独で検疫作業ができるよう求めていた。

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