今朝の産経新聞を見てビックリした。1面トップに「日台投資協定 来月調印へ」の見出
し。食い入るように読んだ。
日本と台湾間で投資取り決めを締結し、自由貿易の無差別原則で最も重要とされる「最
恵国待遇」や「内国民待遇(ないこくみんたいぐう)」が盛り込まれ、さらに「特定措置
の履行要求禁止(パフォーマンス要求の禁止)」も盛り込まれる内容だという。
懸念される中国の動きについては、第4面で阿比留瑠比(あびる・るい)記者が「今回の
取り決めに対し中国は反発するだろうが覚悟している」という外交筋のコメントも紹介し
ている。
かつて「台湾共和国が成立して何の不思議もない」と喝破した交流協会台北事務所代表
(駐台湾大使に相当)をつとめた故内田勝久(うちだ・かつひさ)氏は、日台間で「台湾
経済関係法」ができることを強く望んでいた。この「日台投資協定」とはまさに「台湾経
済関係法」と言ってよいだろう。
この投資協定の締結で、日台の距離はまた一歩縮まった。絆は深まった。日台間でFT
A(自由貿易協定)を締結する日もグッと近づいてきた。
日台投資協定 来月調印へ 国内と同待遇で促進
【産経新聞:平成23年(2011年)8月13日】
日本と台湾が実質的な2国間投資協定である「日台民間投資取り決め」交渉に大筋合意し、
9月に正式調印することが12日、分かった。相手国に対し、参入段階から国内投資家と同様
の待遇を約束する「内国民待遇」や、投資活動に際して技術移転などを条件とすることを
禁じた「特定措置の履行要求禁止(パフォーマンス要求の禁止)」が盛り込まれるなど、
投資促進効果が期待できる内容だ。相互投資の活発化を通じ日台交流の拡大や、より密接
な関係構築が期待される。
(4面に関連記事)
「投資取り決め」は、日台間に正式な国交がないためで、日本側は台湾との実務関係維
持を目的とする民間団体「財団法人交流協会」が、台湾側は非政府組織「亜東関係協会」
がそれぞれ窓口となって進めた。
投資財産没収時の補償など旧来型の「投資保護」のほか、投資促進の自由化も含んだ。
投資協定の必須条件とも言える「最恵国待遇」に加えて、「内国民待遇」や「特定措置の
履行要求禁止」を盛り込んでいる。
1989年発効の日中投資保護協定には、この「内国民待遇」や「パフォーマンス要求の禁
止」は含まれておらず、日台間の投資取り決めは、日中の協定よりも経済交流の自由化度
が高い。
現在、中国と台湾間でも投資協定交渉が行われている。これは、投資条件で第三国より
も台湾を優遇する内容だとみられるが、「内国民待遇」はとられない見込みで、日台投資
取り決めの方が一歩進んだ内容だ。
また、将来的に中台投資協定が結ばれ、台湾に一定の優遇措置がとられた場合、日台合
弁で中国に投資を行えば同様の優遇措置を受けることが可能となる利点もある。
投資協定は海外に工場や会社を設立したり、海外企業の株式を取得したりする際の規制
をできるだけなくし、互いに自由に投資できる環境を整えるとともに投資家と投資財産を
保護するために結ぶ。
貿易に関しては世界貿易機関(WTO)で多国間の包括的ルールが定められているが、
投資については共通ルールは存在しないため、政府はこれまで積極的に2国間投資協定を締
結する方針をとってきた。これまで日本はエジプト、中国、カンボジアなど15カ国・地域
と投資協定を結んでいる。
日台投資協定 日本の存在感強化─中国反発は想定済み
【産経新聞:平成23年(2011年)8月13日 4面】
日本と台湾の「日台民間投資取り決め」は、中国と台湾間の貿易投資が急速に拡大する
なかで、台湾の中で日本の存在感を強めるねらいがある。日台間には正式な国交はないも
のの、平成21年の貿易総額は約700億ドルに達し、日本にとって台湾は第4、台湾にとって
日本は第2の貿易相手だ。さらに、台湾人の52%が最も好きな国として日本を挙げたという
調査もある。投資取り決めでヒトやモノの行き来を増やし、日台間の絆を深化する意義は
大きい。
「今回の取り決めに対し中国は反発するだろうが覚悟している。中国に事前通告する考
えはない」
日本の外交筋はこう語り、中国が「いやな顔」をするのは織り込み済みだと明かす。
外交当局は台湾で中国重視の馬英九政権が発足した後の中台接近の動きをにらみ、自民
党の麻生政権時代の21年3月ごろから、日台投資取り決めに関する具体的な検討に入った。
昨年前半からは日台間で交渉を積み重ねた。「特に前原誠司前外相は取り決めに熱心だっ
た」という。
この間、民主党の鳩山前政権は中国の習近平国家副主席来日の際に、ルールを破って天
皇陛下との「特例会見」をセットした。続く菅政権は沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突
事件で超法規的に中国人船長を釈放させる。「政治主導」で中国に一方的な譲歩を繰り返
していたのだった。
そうしたなかでも、外交当局はこつこつと台湾との関係強化に向けた努力を続けていた。
今回の投資取り決めは、形式上は民間同士の約束となっているが「実質的な2国間投資協定」
(政府筋)といえる。
外交当局は今後も、北京政府が中国の唯一の合法政府であることを認め、台湾は領土の
一部であるとする中国の表明を理解・尊重するとした昭和47年の日中共同声明の枠内で、
できる限り日台関係の土台をしっかりと固めていく考えだ。 (阿比留瑠比)