2月17日、日本経済新聞が5月施行を予定して法務省が進めている「戸籍法施行規則の一部を改正する省令」について報道し、台湾の「中央通信社」や「自由時報」が追いかけるように報道してから、台湾でも日本でも歓迎する喜びの声が広がっている。
日本では1964年6月に法務省「民事局長通達」が出されて以降、台湾出身者が日本人と結婚したり日本に帰化する場合、日本人の養子となる場合は、戸籍における国籍は「中国」とされ、出生地も「中国台湾省」と記されてきた。
しかし、台湾人としての尊厳を傷つけられ、日本と台湾の国籍表記が異なることによる実害も少なくないことから、在留カードや外国人住民票と同様に「国籍・地域」とし、「中国」から「台湾」に改めるよう求める声が強くなり、法務省は5月から省令により、在留カードや外国人住民票と同じく国籍欄を「国籍・地域」とし、台湾出身者は「中国」から「台湾」に改める。
すでに林佳龍・外交部長は「日本各界が長年来行ってきたさまざまな努力にとりわけ感謝する」と表明し、多くの台湾の人々から「悲願が達成された。
心がすっきりした」と歓迎されている。
2016年6月から台北駐日経済文化代表処の代表を8年の長きにわたってつとめた謝長廷氏も国籍欄の台湾改正を心から願っていた一人だ。
下記に紹介する毎日新聞は「代表在任中、多くの在日台湾人から戸籍に『台湾』と書けるようにほしい、なぜ改善されないのかとの要望を受けた」ことから、「中国を刺激しないよう表だった動きを避けながら、台湾に理解の深い国会議員らと情報交換をした」と伝え「安堵の表情を浮かべた」と報じている。
中国は日本のこの措置を批判しているが、鈴木馨祐(すずき・けいすけ)法務大臣は2月18日の記者会見で「日本の内政上の判断であり、お答えする必要はない」と突っぱねた。
戸籍の表記改正は日本の国益であり、台湾の国益であることを中国が証明した。
日本戸籍への「台湾」記載可能に 現地の歓迎ぶり 中国は批判
【毎日新聞:2025年2月21】
https://mainichi.jp/articles/20250221/k00/00m/030/002000c
5月から日本の戸籍の国籍欄に地域名の表記ができるようになることを巡り、「台湾」名で記載が可能になった台湾の関係者に喜びが広がっている。
台湾人としてのアイデンティティーを持つ人が多数を占める中、日本の戸籍では約60年前の規定に従い国籍を「中国」と表す状態が続いていて、改善を求める声が根強かった。
◆「日本の台湾に対する重大な『名分を正す措置』だ」
18日付の台湾主要紙「自由時報」は1面トップで一報を伝え、「遅れてきた正義」として歓迎した。
日本の戸籍制度では、外国人が日本国籍を取得した際の戸籍には出身国を記載。
日本人と外国人が結婚した場合、日本人の戸籍の情報欄に配偶者の名前や国籍が記載される。
台湾出身者については、1964年の通達で国籍は「中国」と表示するとされ、72年の日中国交正常化に伴う台湾との断交後も変わらなかった。
しかし今回、法務省が国籍欄を「国籍・地域」の表記欄と改めると発表。
これにより「台湾」との記載が可能になる。
◆「悲願が達成された。
心がすっきりした」
2016年から24年8月まで台北駐日経済文化代表処代表(駐日大使に相当)を務めた謝長廷氏(78)=総統府顧問=は安堵(あんど)の表情を浮かべた。
民進党主席(党首)や行政院長(首相に相当)を歴任した重鎮で流ちょうな日本語を使い、日本にも幅広い人脈を持つ。
代表在任中、多くの在日台湾人から戸籍に「台湾」と書けるようにほしい、なぜ改善されないのかとの要望を受けたという。
自身も72年に京都大に留学した際に外国人登録で「中国」と書かざるをえず、不愉快さを覚えたと語る。
台湾・政治大の調査によると、主要な世論調査で「私は台湾人」と考える人は09年以降一貫して半数を超え、「中国人」と考える人は5%未満だ。
謝氏は「(国籍の表記は)自身の尊厳に関わることだ」と強調する。
その一方で日本を含む多くの国が台湾を国として認めていない国際政治の現実もある。
謝氏は中国を刺激しないよう表だった動きを避けながら、台湾に理解の深い国会議員らと情報交換をしたという。
法務省の発表を受け、ネット交流サービス(SNS)でも台湾人とみられるユーザーから「(日本の役所で)『台湾』の表記が拒否され、どうしても納得できなかった。
ようやく実現した」と喜ぶ投稿が相次いだ。
一方、中国外務省の郭嘉昆副報道局長は17日の記者会見で、台湾問題は純粋な中国の内政との認識を示した上で、「言行を慎むべきだ」と日本を批判した。
これに対し鈴木馨祐法相は18日、すでに12年から日本に滞在する外国人向けの住民票や在留カードでは「国籍・地域欄」が導入されていたと指摘し、「日本の内政の判断だ」と語った。
【台北・林哲平】
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