恩情を噛み締めて姉妹都市交流[北林孝市]

秋田県上小阿仁村と台湾・屏東県萬巒郷の姉妹交流

 昨日、石川県の県議会有志が進めている台湾・台南県との姉妹県
交流について、『日台共栄』第8号(8月号)に掲載した、宮元陸
・石川県議の文章をご紹介しました。
 その前の号(6月号)では、本会理事で秋田県上小阿仁村(かみ
こあにむら)の村長をつとめられる北林孝市氏に、今から14年前の
平成3年(1991年)からはじめられた台湾南部、屏東県萬巒郷(ば
んらんごう)との姉妹都市交流について、いつ、どのようなきっか
けで始め、どのような交流が続いてきたのかを書いていただいてい
ますのでここにご紹介します。
*原文の年号は西暦で統一されていますが、わかりやすくするため
に元号を補いました。
 日本と台湾の姉妹都市交流の現状については、ホームページの「
活動」欄に新たに「姉妹都市交流」というコーナーを設けましたの
でご覧ください。
 現在、岡山市と新竹市をはじめ10市町村が台湾の各都市(市・鎮
・郷)と姉妹交流しています。
 ただ、岐阜県大野郡久々野町は平成8年(1996年)1月17日以来
、宜蘭県頭城鎮と友好姉妹都市として交流してきたのですが、今年
2月、高山市と合併して高山市久々野町となったため、独立した自
治体としての交流はなくなってしまいました。今後も何らかの形で
続けていって欲しいのですが、新しい動きについては、分り次第、
本誌でお伝えします。               (編集部)

■『日台共栄』は日本李登輝友の会の機関誌です。近々、定期購読
者制度を設ける予定ですが、現在は普通会員以上の会員にのみ配布
しています。


台湾と私−恩情を噛み締めて姉妹都市交流

          秋田県上小阿仁村長・本会理事 北林 孝市

 1943年(昭和18年)、台湾の屏東(へいとう)師範学校を卒業し
、高雄州潮州街の四林国民小学校へ赴任、教員住宅で同年齢で萬巒
庄(ばんらんしょう 現・屏東県萬巒郷)出身の☆英祥先生[☆=
さんずいに余]と生活を共にし、物心両面で兄弟以上に温かく支え
ていただく。現地では先生方や教え子、地域の皆さんと多くの思い
出と深い絆を培うも、翌1944年(同19年)2月、台湾第五部隊(山砲
隊)に現役入隊。その時、☆先生が親族に代わって付き添い人とし
て同伴されたご温情は、生涯私の脳裏から失せることはない。
 6月中旬、迫撃砲隊に転属となり花蓮港に移動し、敵の上陸に備
え、東海岸の陣地構築に従事。B29の空爆、低空飛行による機銃掃
射、艦砲射撃などを受ける。1945年(同20年)3月、桃園街に移動
し、資材係班長として移送業務に従事する。やがて終戦となり、現
地除隊。四林国民小学校に戻るも、教員住宅が使用できず、困惑し
ていたところ、☆先生が萬巒郷五溝水の私宅に迎えて下さった。特
に御母堂は実子のように面倒を見て下さり、家族挙げての温かな人
間愛とご恩情の有難さを噛み締めた。
 一時は台湾永住を決意したものの、12月に入り、日本軍に籍のあ
った者は帰国のため台北に集結せよとの布告があり、別離を惜しん
で台北市に向った。そして1946年(同21年)2月、基隆港より駆船艇
で鹿児島港へ。鉄路で北上して3月7日、郷里の秋田県上小阿仁村へ
帰還した。
 その後は村での36年間の教員生活を経て1983年(同58年)5月、
村長に就任。その間、残念ながら先生は病気により、2子を残して
他界された。しかし、弟で小学校教師として活躍していた☆必達氏
が流暢な日本語を話せたため、文通を通じて交流が可能となり、19
90年(平成2年)、村議会が初の海外研修視察先として台湾を選択
し、萬巒郷を訪問した。そこで姉妹都市提携を要請したところ賛同
を得て、1991年(同3年)に同郷より曽士忠郷長他22名が来村し、
姉妹都市調印式を挙行した。
 その後、1992年(同4年)に本村が提携答礼訪問。
1993年(同5年)、薛重雄代表主席(議長)他20名が来村。
1994年(同6年)、日台地域交流事業として台湾政府が派遣した秋
 田県農業部門への視察団を本村が受託し、案内を行う。
1995年(同7年)、林昌徳郷長他24名が来村。
1997年(同9年)、本村より18名が訪問。
1998年(同10年)、屏東師範学院の何福田学長、教授5名が本村の
 小中学校を視察。
1999年(同11年)、屏東師範学院五育樓落成の記念式典出席のため
 私たち3名が訪問。
1999年、林昌徳郷長他31名が来村。
2001年(同13年)、私以下19名が訪問。
2004年(同16年)、徐統盛郷長他28名が親善交流のため来村。
 そして2005年(同17年)9月、私以下14名が訪問する予定だ。
 本村の訪問団は毎回、屏東県長、屏東師範学院、萬巒郷、萬巒中
学校、萬巒小学校、五溝小学校、四林小学校などを表敬訪問し、親
善交流に努めている。
 2003年(同15年)、尊敬と信頼を寄せる李登輝前総統が提唱する
台湾正名運動に賛同し、台北市で行われた総決起街頭行進に参加さ
せていただいた。その日夜、李登輝先生を囲む懇談親睦の会へのご
招待に預かり、日台の提携交流を主唱される先生の燃えるようなバ
イタリティーの凄まじさに圧倒された。先生の遠大で高邁なる人間
性とご人徳に、日本人は大いに学ぶべきだとの思いを深くした。
 目下、陳水扁総統閣下は中国の介入問題で苦慮されているが、こ
こはぜひとも李登輝先生と一体となり、台湾の未来確立と発展のた
めに隠忍自重され、慎重に対処されることを衷心より期待、祈念申
し上げる。