市長選で台北は中国国民党、高雄は民進党が制す

昨日行われた台北市と高雄市の選挙で、台北市は中国国民党のカク(赤におおざとへん)
龍斌候補、高雄市は民主進歩党の陳菊候補が当選した。中央委員会が発表した得票数や得
票率などは以下の通り。また、当選者の略歴並びにその報道の一部を紹介する。
 なお、親民党主席ながら無所属で出馬して惨敗した宋楚瑜氏は政界引退を表明した。
                                    (編集部)

■台北市長選の得票数と得票率
 有権者数:200万8434人、投票率:64.52%(2002年投票率:70.61%)

 カク龍斌 男 692,085票(53.81%)中国国民党
 謝 長廷 男 525,869票(40.89%)民主進歩党
 宋 楚瑜 男  53,281票( 4.14%)−
 李  敖 男  7,795票( 0.61%)−
 柯 賜海 女  3,687票( 0.29%)−
 周 玉● 女  3,372票( 0.26%)台湾団結聯盟
 ●=草冠に冠

■高雄市長選の得票数と得票率
 有権者数:114万110人、投票率:67.93%(2002年投票率:71.44%)

 陳  菊 女 379,417票(49.41%)民主進歩党
 黄 俊英 男 378,297票(49.27%)中国国民党
 羅 志明 男  6,599票( 0.86%)台湾団結聯盟
 林 景元 男  1,803票( 0.23%)−
 林 志昇 男  1,746票( 0.23%)保護台湾大聯

■カク龍斌(かく りゅうひん)
 1952年(昭和27年)8月22日生まれ。父親は、国民党の長老として知られるカク柏村・
 元行政院長。台湾大学農業化学学科卒、米マサチューセッツ州立大学食品栄養学博士。
 1984年に帰国、国立台湾大学食品研究所に就職。副教授、教授を歴任。1990年、赤十字
 顧問を務める。1995年8月、国民党に不満を抱いて脱党。中国統一を目指す新党に入党
 。同年10月、新党の公認候補として立法委員(国会議員に相当)選挙に出馬して当選。
 1998年、立法委員に再選。2001年3月、陳水扁総統によって行政院環境保護署長に任命
 される。2003年、行政院環境保護署長を辞任。2004年からは赤十字秘書長に。2006年、
 国民党に復帰して5月の党内選挙で台北市長選挙の公認候補に当選。国民党の公認候補
 として台北市長選挙に出馬。

■陳 菊(ちん きく)
 1950年(昭和25年)6月10日、台湾省宜蘭県生まれ。1968年、世界新聞専科学校(現・
 世新大学)図書情報学科を卒業。1998年に中山大学公共事務所修士課程に入学、2000年
 に修士号取得。郭雨新省議員の秘書から政界へ入る。民進党の結党に参加。1990年、台
 湾人権促進会秘書長に就任。1992年、国民大会代表に当選。台湾人権促進会の会長に就
 任。台北市社会局長、高雄市社会局長を歴任。2000年から昨年までは行政委員労工(労
 働者)委員会主任委員を務めた。


台湾2市長選 高雄は与党辛勝 台北は国民党 与野党現状を維持
【12月10日 西日本新聞】

 【台北9日遠矢浩司】台湾の台北、高雄両市長選は9日、投開票され、与野党攻防の焦
点となった高雄市長選で与党・民主進歩党(民進党)新人の陳菊・前労工委員会主任委員
(労相)(56)が最大野党・中国国民党の新人、黄俊英・元同市副市長(64)を約1100票
差の大接戦の末に下し当選。台北市長選では国民党新人で元環境保護署長(環境相)のカ
ク龍斌氏(54)が民進党の前行政院長(首相)・謝長廷氏(60)らを破って勝利し、与野
党がそれぞれの市長ポストを守った。

 今後、両党とも2008年春の次期総統選へ向けた動きが本格化するが、国民党は陳水扁総
統夫人起訴などで優勢に立っていた高雄市の市長奪還に失敗したことで、党内最有力候補
と言われた馬英九主席の立場が危うくなる可能性がある。地盤の南部で辛うじて勝利した
民進党も退潮傾向に歯止めをかけたとまでは言えず、「ポスト陳水扁」の候補選びは混迷
が予想される。

 両市は中央の直轄市で市長は閣議にも出席できる重要ポスト。今回の選挙は、総統夫人
が総統府機密費の横領で起訴された政権・民進党側と、台北市長である馬主席の市長公費
流用疑惑が浮上した国民党側が「清廉な政治」をめぐり中傷合戦を展開。しかし、昨年以
来、総統府高官や総統家族の金銭疑惑が続き「腐敗」イメージが広がった民進党の支持率
低迷は顕著で、特に無党派層の離反を招いた。

 高雄市長選では、民進党の陳菊氏は総統夫人起訴以降、国民党の黄氏にリードされる苦
しい展開。終盤に陳総統ら幹部を大動員、独立志向の強い「台湾人意識」に訴え小差で逆
転した。陳氏の得票は37万9417票で得票率49.41%。黄氏との差はわずか0.14ポイントだ
った。

 2期8年務めた馬氏の後任を決める台北市では、カク氏が外省人(戦後に中国から移住
した人やその子孫)の比率が比較的高い同市の支持層をまとめ、謝氏や宋楚瑜・親民党主
席(64)ら大物政治家に大差をつけた。宋氏は敗戦後の記者会見で政界引退を表明した。

 カク龍斌(かく・りゅうひん)氏 1952年8月22日生まれ。本籍は中国江蘇省。父親は行
政院長を務めた国民党の長老・カク柏村氏。75年に台湾大学卒業後、米マサチューセッツ
州立大学に留学。96年に立法委員(国会議員)。中国との統一派が国民党から分裂して結
成した「新党」党首だった2001年3月に陳水扁政権の環境保護署長(環境相)に就任、約2
年半務めた。

 陳菊(ちん・きく)氏 1950年6月10日生まれ。台湾東部の宜蘭県出身。国民党独裁政権
下の民主化運動に参加。79年に高雄市で人権デモ隊と警官隊が衝突した「美麗島事件」で
政治犯として投獄される。民主化後に台北市、高雄市の社会局長を歴任、2000年に行政院
労工委員会主任委員(労相)。05年夏に高雄市地下鉄工事現場で起きたタイ人労働者暴動
で引責辞任した。