孤軍奮闘する台湾を今こそ支援せよ  トム・コットン(米共和党上院議員)

 米国連邦議会の上院議員のトム・コットン氏は共和党の有力若手議員の一人。1977年5月生まれ。アーカンソー出身。ハーバード大学を卒業、2014年11月の選挙で上院議員に当選。タカ派の論客、対中強硬派として注目され、2024年大統領選挙の有望候補者と目されている。

 2019年3月27日に提出された「台湾保証法案」(Taiwan Assurance Act)は、「二国間および多国間の軍事演習に台湾を含める努力をするよう、国防長官に指示する」「米国は、台湾の国際機関への意味ある参加を主張し続ける」「台湾の非対称国防戦略、米国の武器の台湾への定期的な売却、米台二国間通商交渉の再開に対する、議会の支持を表明する」などを内容とするが、マルコ・ルビオ議員やテッド・クルーズ議員などと共同提案者の一人だ。

 本年1月31日、上院外交委員会東アジア・太平洋・国際サイバーセキュリティー政策小委員会のコリー・ガードナー委員長をはじめとする7人の共和党議員が連名で「台湾をオブザーバーとして受け入れ、感染症関連の情報と支援を提供せよ」と書簡をWHOのテドロス事務局長に送っている。このときもその一員として名を連ねている。

 このほど「ニューズウィーク」誌に「孤軍奮闘する台湾を今こそ支援せよ」を寄稿した。下記にご紹介したい。

—————————————————————————————–孤軍奮闘する台湾を今こそ支援せよトム・コットン(米共和党上院議員)【ニューズウィーク日本版:2020年7月14日】 https://news.yahoo.co.jp/articles/11e8e31c30f70b2d4de71e759caf7fc5c48bf8cd

<中国の圧力により、コロナ対策で有益な教訓を持つ台湾がWHOに参加できずにいる事実は、世界に損失をもたらした。アメリカは台湾の国際社会への参加を後押しし、軍事や通商関係も一層強化すべきだ。本誌「台湾の力量」特集より>

 WHO(世界保健機関)とテドロス・アダノム事務局長は、新型コロナウイルス危機が始まって以来、このウイルスに関する中国政府のプロパガンダを受け入れ、拡散させてきた。そして、5月にテレビ会議形式で開催されたWHO総会でも、ある贈り物を中国共産党政権に送った。この総会に台湾がオブザーバーとして出席することを認めなかったのである。中国は長年の間、台湾が国際機関に加わったり、外国政府と国交を樹立したりすることに激しく反発し続けてきた。【トム・コットン(米共和党上院議員)】

 WHOには台湾のオブザーバー参加を認める権限がないと、WHO側は主張している。しかし、テドロスの前任の事務局長は、台湾の総会への出席を許可していた。要するに、テドロスは中国政府の怒りを買いたくなかったのだろう。

 テドロスの臆病な態度は、世界に損失をもたらした。台湾は新型コロナウイルスへの対応に成功し、ほかの国々にとって有益な教訓をいくつも持っているからだ。

 台湾当局は早くも昨年12月31日の時点で、中国・武漢からの直行便でやって来る乗客を対象に機内検疫を開始した。この段階では、中国政府はほぼ何の対策も講じていなかった。ヒトからヒトには感染しないと、まだ主張していたのだ。

 中国で感染拡大に歯止めが利かなくなるのを尻目に、徹底した国境管理、テクノロジーを駆使した感染者追跡、積極的な検査を行った台湾は、平穏を維持できた。人口2300万の台湾で、症例数はわずか451人。死亡者数は7人にとどまっている。しかも、発表しているデータの信頼性も中国よりはるかに高い。

◆中国の圧力を跳ね返すとき

 台湾は、アメリカを含む友好国への支援にも力を入れてきた。現在生産しているサージカルマスクは、1日当たり1700万枚を突破。中国と異なり、品質の信頼性も高い。4月には、アメリカに200万枚ものマスクを寄贈した。

 それでも、WHOの官僚たちは台湾を正当に評価しないだろう。そこで、台湾の貢献が正しく評価され、台湾の人々の民主主義への思いが尊重されるようにするために、アメリカが積極的に行動する必要がある。

 米政府は、国連などの国際機関への台湾の有意義な参加を後押しし続けるべきだ。国務省は、米政府関係者と台湾側の交流に制約を課しているルールの多くを廃止する必要もある。そのようなルールは、犠牲をいとわずに対中関与路線を推進すべきだと考えた政治家と官僚たちによって設けられたものだ。しかし、そのような時代はもう終わった。

◆貿易協定を結び、関係を強化すべき

 軍事的な支援も不可欠だ。開放的で繁栄したアジア太平洋地域を維持するためには、台湾の自由を守らなくてはならない。環太平洋合同演習(リムパック)などの軍事演習に台湾を参加させたり、台湾が自国を守るのに役立つ武器を販売し続けたりすればいい。

 ビジネス上の関係も深める必要がある(台湾は既に、アメリカにとって第9位の貿易相手国だ)。

 新型コロナウイルス危機を機に思い知らされたのは、医療関連など、さまざまな重要物資の供給でアメリカが中国に依存しているという現実だった。それらの物資を国内で生産する体制を強化することと、国外の信頼性ある供給元を確保することが、今後数年間の大きな課題になる。

 その点で、台湾は医療物資の供給を通じて、アメリカの重要なパートナーになり得ることを実証してきた。米政府は2国間の貿易協定を結び、この関係を一層強化すべきだ。

 中国政府の圧力と脅しを跳ね返すには、本稿で提案したことを行うだけではまだ十分でない。アメリカはさらに大きな役割を果たし、台湾の勇気ある人々を支援するために揺るぎない決意を示す必要がある。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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