現在、上院では3月27日に超党派議員により提案された「2019年版台湾保証法案(Taiwan AssuranceAct)」が審議され、下院でも同様の法案が審議されている。
この法案は「大統領に、米台関係に関する国務省のガイドラインの見直しを命ずる」「二国間および多国間の軍事演習に台湾を含める努力をするよう、国防長官に指示する」「将官が台北に駐在武官として赴任することを求める」など5つの骨子からなると伝えられている。
4月30日には、上院が「台湾に対する米国のコミットメントと台湾関係法の実施を再確認する決議案」を全会一致で可決したという。下院も同様の決議案を4月9日に可決しているという。
この決議案は、「台湾関係法」と米国の台湾に対する6つの保証を米台関係の基盤とすることを再確認することなどを内容としているそうだ。
ちなみに、米連邦議会の上院は、大統領選挙が行われていたさ中の2016年7月6日、「『台湾関係法』と台湾に対する『6つの保証』を米台関係の基礎とすることを再確認する第38号両院一致決議案」を可決している。
台湾に対する「6つの保証」とは、ロナルド・レーガン大統領時代の1982年7月14日、議会に説明した下記の6項目の台湾政策のことで、この決議案で成文化した。
(1) 台湾への武器供与の終了期日を定めない。 (2) 台湾への武器売却に関し、中国と事前協議を行わない。 (3) 中国と台湾の仲介を行わない。 (4) 台湾関係法の改正に同意しない。 (5) 台湾の主権に関する立場を変えない。 (6) 中国との対話を行うよう台湾に圧力をかけない。
このように連邦議会は2016年7月の段階では「台湾関係法」と台湾に対する「6つの保証」の2つを米台関係の基礎とすることを再確認しているが、このたびの「台湾に対する米国のコミットメントと台湾関係法の実施を再確認する決議案」では、昨年3月に制定された「台湾旅行法」を踏まえ、米国と台湾の双方のあらゆる階級の官僚が相互訪問するよう呼びかけることが加わっている。
また、大統領に対しては台湾への武器売却を常態的に行わなければならないと要請し、国務長官に対しては台湾の国際組織に対する意義ある参与を支持し、台湾との経済・貿易関係を拡大・深化させる機会を模索するよう求めているという。
この決議案の詳しい内容や台湾側の反応を「Taiwan Today」が伝えているので下記に紹介したい。
ちなみに、4月30日、長島昭久・衆議院議員らと面会した蔡英文総統は「日本の人々が、台湾が最も必要とする協力を提供してくれることを切に希望している」と、日本が台湾のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)参加を支持してくれるよう期待感を表明したと報じられているが、米連邦議会の決議案可決には「台湾を非常に重視する米国会の態度が示されたもの」と高く評価し「台湾と米国の関係は現在、最も良好な状態にある」と述べたと報じられている。
口惜しいかな、台湾との関係強化において、日米議会の対応格差はますます大きく広がっていることを蔡英文総統の発言が如実に示している。
—————————————————————————————–米上院が「台湾関係法」の実施を再確認する決議案【Taiwan Today:2019年5月2日】
米国上院は4月30日(現地時間)、「台湾に対する米国のコミットメントと台湾関係法の実施を再確認する決議案(Reaffirming the United States commitment to Taiwan and to the implementation of the Taiwan Relations Act.)」を、全会一致合意(Unanimous consent)により可決した。米下院も同様の決議案を4月9日に可決している。
この決議案は、「台湾関係法」と米国の台湾に対する6つの保証を米台関係の基盤とすることを再確認するほか、米国と台湾の双方のあらゆる階級の官僚が「台湾旅行法」に基づき相互訪問するよう呼びかけるもの。また、米大統領は法律に基づき台湾への武器売却を常態的に行わなければならないとし、米国務長官に対しては台湾の国際組織に対する意義ある参与を支持し、台湾との経済・貿易関係を拡大・深化させる機会を模索するよう求めている。
蔡英文総統は5月1日午後、三軍総医院(台湾北部・台北市内湖区)を訪れた際、米上院でこの決議案が可決されたことについてメディアから感想を聞かれ、「台湾関係法制定40周年の節目において、台湾を非常に重視する米国会の態度が示されたもの」と高く評価した。また、「台湾と米国の関係は現在、最も良好な状態にある」と述べた。
蔡総統はさらに、「台湾の政府は近年、米国とその他の国際社会が台湾と一緒に努力し、国際社会が共有する価値を守り、地域の平和と安定を維持するという目標において良きパートナーとなれるよう取り組んできた。その結果、世界の多くの地域において、台湾を不可欠なパートナーと考え、台湾の決意に信頼を寄せる国が増えている」と説明し、政府の取り組みの効果が奏功していることを強調した。