2019年版「国防授権法案」は、まず下院が5月24日に賛成多数で可決し、上院は6月18日にやはり賛成多数で可決している。
しかし、今年は上院法案で、台湾の軍事演習に米軍が参加することを推進するよう米国防長官に要請することが盛られていたが、下院案にはなかったことなどで内容が食い違っていたため統一案が審議されていた。その審議が7月23日に完了し、24日に統一草案が公表されたそうだ。
中央通信社が報ずるところでは、台湾に関する内容が記されたのは1257条と1258条で、台湾関係法と台湾に対する「6つの保証」が米台関係の基礎とすることが明記されているという。
すでに大統領選さ中の2016年7月6日、上院は「『台湾関係法』と台湾に対する『6つの保証』を米台関係の基礎とすることを再確認する第38号両院一致決議案」を可決していたが、改めて国防権限法で明記したようだ。
ちなみに、台湾に対する「6つの保証」とは、ロナルド・レーガン大統領時代の1982年7月14日、議会に説明した6項目の台湾政策のことだ。
(1) 台湾への武器供与の終了期日を定めない。 (2) 台湾への武器売却に関し、中国と事前協議を行わない。 (3) 中国と台湾の仲介を行わない。 (4) 台湾関係法の改正に同意しない。 (5) 台湾の主権に関する立場を変えない。 (6) 中国との対話を行うよう台湾に圧力をかけない。
下院と上院の統一議案が決定したことで、両院で可決することはほぼ決定とみていいだろう。また、台湾との関係強化を求めている点では、トランプ大統領と連邦議会の足並はそろっていることから、トランプ大統領が署名することもまず間違いないだろうと思われる。
翻って、国内法を整備して台湾との関係強化策を進める米国の積極的な姿勢を見ていて、気になるのは日米同盟を組む日本の姿勢だ。日本は日台関係の基礎をいったいどこに置いているのだろう。
日本は台湾を重要なパートナーと位置づけている。しかし、台湾に関する法律は一本もない。基礎となる法律をもっていないのだ。日本の国益を守り、米国の台湾政策と整合性を保つためにも、「日台関係基本法」の制定は焦眉の急であることを改めて強調したい。
————————————————————————————-米上下院、国防権限法案を一本化 台湾との軍事訓練実施促す【中央通信社:2018年7月25日】
(ワシントン 25日 中央社)米上下両院は23日、2019会計年度の国防権限法案の一本化作業を完了させた。24日公開された草案の全文では、米国防総省に台湾との軍事訓練を実施するよう促す内容などが加えられた。だが、上院の案で言及されていた、中国軍による侵攻を想定した台湾の定例訓練「漢光演習」への米軍の参加促進については盛り込まれなかった。法案は今後、両院それぞれで可決された後、トランプ大統領の署名を待って成立する。
台湾に関する内容が記されたのは1257条と1258条。1257条では、台湾の軍事力増強に関する提言がなされ、台湾の自己防衛能力向上のため、台湾の軍隊や予備役兵力に対して適切な評価や提言を行うことを米国防長官に求める内容が記された。また、国務長官と協議を行い、法案公布から1年以内に評価や提言、米国の計画に関する報告を議会の関連委員会に提出することも要請した。計画には、米台の軍事交流や合同軍事訓練、台湾への武器供与に関する支援などが含まれるとされた。
1258条では、米台の実務関係のあり方を定める「台湾関係法」と台湾への武器供与に終了期間を設けないことなどを公約した「6つの保証」が米台関係の拠り所だと明記され、米国は台湾との国防や安全保障における連携を強化するべきなどとする立場が示された。海外からの防御用兵器調達に対する強力な支援や台湾への武器供与の予測可能性向上なども提言された。
また、国防長官は台湾の安全保障向上につながる交流に関する政策を促進すべきだとし、具体的には、台湾との実地訓練や軍事訓練を行う機会の促進や、台湾旅行法に基づいた米台双方の国防関連の高官などによる交流の促進について記された。
これを受け総統府は25日、声明を発表。米議会は長きにわたって、安全保障を含めた各方面で台湾を支持してきたとし、謝意を示した。
(江今葉、葉素萍/編集:楊千慧)