国防授権法は国防権限法とも呼ばれ、2019年度法案には台湾との関係強化をはかるため、台湾の軍事演習に米軍が参加することを推進するよう要請し、米軍訓練への台湾の参加を促進すべきことや米軍病院船の台湾寄航も検討するべきと提言しているという。下記に中央通信社の記事を紹介したい。
5月24日に下院が賛成多数で可決し、同日、上院軍事委員会が可決。6月18日に上院で可決という経緯となっているが、「下院と上院の法案内容が異なるため、法案は今後上下院ですり合わせ作業が行われ、一本化法案が両院それぞれで可決された後、トランプ大統領の署名を待って成立する」(中央通信社)という。
なお、宮崎正弘氏の「国際ニュース・早読み」によれば、2019年度法案には中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)に関する付帯決議案もあるそうで、「トランプ大統領が一度はZTE処分で、7年間の米国市場への出入り禁止を、14億ドルの罰金でディールしようとする、中国の強い要請によるZTE救済を巡り、議会は超党派で反対したのだ」「『ZTE(中興通訊)に死を』、『ZTEの棺おけのふたを早く閉めろ』という附帯決議をくっつけた国防予算であるため、めずらしく議会のほうが対中国強硬路線、いやトランプより議会が過激であることが露呈した」という。
宮崎氏はこの背景について「ZTEは米国が制裁するイランへ過去7年間にわたって、通信機器を秘密裏に売却してきた。そのうえ米国内での通信機器の販売にウィルスをしかけた疑惑もあり、連邦政府、州政府機関ならびに政府職員、兵隊、警官、公務員などに対して華為(ファウェイ)とZTEのパソコン、スマホなどの購入を禁止した」と解説している。
ロイターは「米政府とZTEはすでに6月7日、ZTEによる米製品購入を禁じた制裁措置を解除することで同意。ZTEは10億ドルの罰金を支払うほか、4億ドルの預託金を米銀行に供託する必要がある」(6月20日)と報じている。
————————————————————————————-米上院、国防権限法案を可決 台湾軍事演習への米軍の参加求める【中央通信社:2018年6月19日】
(ワシントン 19日 中央社)米上院は18日、2019会計年度の国防権限法案を85対10の賛成多数で可決した。上院軍事委員会が先日公表した草案では、台湾の軍事演習への米軍の参加を米国防長官に要請する内容などが盛り込まれた。法案は今後上下院ですり合わせ作業が行われ、一本化法案が両院それぞれで可決された後、トランプ大統領の署名を待って成立する。
上院で可決された草案の全文公開は来週になる見通し。だが、台湾に関する部分に修正はなかった。
上院軍事委員会が今月5日付で公表した草案によれば、1243条に台湾に関連する内容が記された。米台の実務関係のあり方を定める「台湾関係法」と台湾への武器供与に終了期間を設けないことなどを公約した「6つの保証」が米台関係の拠り所だと明記され、米国は防衛と安全保障において台湾との連携を強化し、台湾が十分な自衛能力を維持できるよう必要とされる防衛力の発展を支持するべきだとの立場が示された。海外からの防御用兵器調達の強力な支援や台湾への武器供与の予測可能性向上なども提言された。
また、国防長官は台湾との安全保障面での交流に関する政策を促進すべきだとし、具体的な内容として、台湾が中国大陸軍の侵攻を想定して年に1度行う定例訓練「漢光演習」などへの米軍の参加や米軍訓練への台湾の参加、米軍病院船の台湾寄航支援の検討などが提案された。
(江今葉/編集:名切千絵)